ボスギミックを見破れ!
それから複数回の戦闘を経て、地下二十階まで到達した。
「皆さん、とてもお強いんですね……」
「すごいにゃぁ……」
ランカとミレットの二人は、特に苦戦する事も無く進んで行く俺達の姿を見てそんな感想を呟いた。
「私達は人数が多いですし、お互いがお互いをしっかりフォローしていますので、安心して戦えるのですよ」
マリーの言う通りだな。人数を揃え、事前にしっかりと準備をするというのが何より重要なんだ。
「君達は人数を増やしたり、他のパーティに入れてもらったりとかしなかったのか?」
「……私達も、それは何度も考えましたが……」
「ウチらに近寄って来る男は、どいつもこいつも私達のおっぱいしか見てない連中なのにゃ! そんな奴等はお断りなのにゃ!」
「それに、女性の冒険者は既に固定でパーティを組んでいる人が殆んどですから……条件に合う人が中々見つからないんですよ」
「あと、私達と実力が離れすぎていると困るにゃ。初心者はたまに見かけるけど、中級ダンジョンに連れて来るわけにはいかないのにゃ……」
彼女達も色々と苦労しているようだな。
「まあ、これまでも二人で何とかなったのにゃ! これからも二人で頑張るのにゃ!」
「でも、流石に今回は危なかったよ? レオンさん達に助けてもらわなかったら、今頃……」
あくまでも楽観的なミレットと、現実的なランカ。正反対な二人だ、見ていて面白いと感じてしまったよ。
「それは無事に戻ったら、改めて二人で話し合えばいいさ。では、ボス部屋に入るぞ」
皆を見渡すと、全員真剣な表情で頷く。それを確認して、俺達は部屋の中へと足を踏み入れた。
「……誰もいない?」
部屋の扉が閉じられ、一番初めに部屋に侵入したローリエがそう呟いた。確かに、何の気配も無く辺りは静寂に包まれている……不気味だな。
「ここのボスは『ウッドゴーレム』だ。全員! 天井や床に注意しろ! ランカとミレットは後ろで回避に専念してくれ」
「「「はいっ!」」」「わかったにゃ!」「うう……役に立たなくてごめんなさい」
とその時、地面が鳴動し大きな地鳴りが響き始めた。
「下だっ‼」
俺の声と同時に全員その場から飛び退いた!
その直後、俺達の居た場所に地面から鋭い木の枝が突き出してきた! 危なかったな……奇襲とはやってくれるっ!
部屋の奥の地面が陥没し、中から「大木の巨人」が姿を現した。あれが『ウッドゴーレム』か。上部には人の顔を模したと思われる空洞が存在した。目と口のつもりか? 中々洒落ているじゃないか。
「あの枝に注意して攻め込むぞっ!」
「初手は頂きますっ!」
先陣を切るのはローリエ。素早く敵に近付き、一閃! ウッドゴーレムの体を切り裂く!
直後、反撃のつもりか腕から枝を伸ばして、ローリエに向かって突き刺した。
「させませんっ!」
ローリエに襲い掛かる枝を、マリーが素早く切り落とす!
「一刀両断ですわっ!」
次の瞬間、プリムラが気合と共に大剣を振り下ろし、ウッドゴーレムの右腕を切り落とした。
ふむ、おかしいな。あまりにも単純で、脆すぎる。
「……元に……戻ってる?」
リラの言葉を聞いて切断された腕をみたら、切断面から徐々に枝が生えてきて、元の状態に戻っていった。
「再生能力か……よし、魔法で一気に片を付ける!」
前衛が退避したのを確認して、後衛組が一斉に魔法を放つ! こういった「木」の敵には「火」を用いるが上策。
合計四つの『火球』が着弾し、容赦なくウッドゴーレムを燃やし尽くした。一つ言っておくと、リラは氷系統の魔法が得意なだけであって、火系統の魔法が使えないわけじゃない。念の為ね。
「あらぁ……もう終わりなのかしらぁ?」
ソニアが呆れる様な声色でそう言った。そうだな、あっけなさすぎる。これならストーンゴーレムの方が防御に優れていた分強いと言える。
「魔石は……見当たりませんね」
魔石を探していたマリーがそう言った事で、俺の背筋に悪寒が走った! くそっ! そういう事かっ!
「まだだっ! 奴は死んでないっ!」
その一言で弛緩しそうだった空気が再び引き締まった。全員油断なく武器を構え、襲撃に備える。
直後地鳴りが始まり、再びウッドゴーレムが姿を現した。ふむ、本には「倒すのが非常に面倒」としか書いてなかった。恐らくこの情報を提供した者も、詳しい再生の仕組みはわからなかったのだろう。
「相手はゴーレムと名が付いているが、その本質は植物。ならば狙うは……『根』だっ!」
俺が狙いを定めたのは奴の足元……その地中だ。
「食らえっ! 『爆裂弾』!」
地中の中を爆発させると、土砂が巻き上げられウッドゴーレムの根っこが露わになった。
「あれかっ!」
露わになった根っこに絡みつく様に、小さな木の人形を模した物体を発見した。これが本体だな。
「はぁーっ!」
本体が露出すると同時に、ローリエが本体に肉薄して剣を突き刺した!
ローリエの一撃で本体が粉々に砕け散った。すると上部の大木部分が朽ちた様にボロボロになり、やがて崩れ落ち跡形も無く消え去った。
「あっ……今度は魔石が落ちていますね」
そう言ってマリーが持って来た魔石は大きく、鈍い輝きを放っていた。
「これは……三級か? 多量の魔力が内包されているな」
「うん……これ一つで数万ゴールドはする……」
「「……す、すうまんごーるど?」」
それを聞いたランカとミレットは言葉を失い、固まってしまった。リラ曰く、三級以上の魔石は高度な魔道具に使用される為、高値で取引されるそうだ。
そんな事を思っていたら、転送の魔法陣が出現し、俺が開けた地面の穴がゆっくりと元に戻ろうとしていた。まるで傷を修復している様にな。例の本に書いてあった『ダンジョンは魔物の一種である』という説が有力になってきたな。
「さて、これで入り口まで戻れる。二人はここまでだな」
「はい、ありがとうございました。おかげで無事に戻れます」
「あれ? レオン達は戻らないのかにゃ?」
「ええ、俺達はもう少し進むつもりです。それとその外套はそのまま使ってくれて構いませんので」
損害無し、損耗無しだからな。ここで引き返す道理は無い。それに地下三十階のボスに興味がある。
「では、私達は地上に戻ります。改めてお礼がしたいので、後日声を掛けさせてもらいますね」
「それじゃ、またにゃ~」
転移魔法陣が光輝くと、二人の姿は消えていた。
「なんとも賑やかな方達でしたわね」
「ああ、そうだな。機会があればまた一緒に冒険してみたいものだな」
それに、しばらくはここに滞在するつもりだ、会う機会は幾らでもあるさ。
「俺達は先へと進もう。目指すは地下三十階だ」
そうして俺達は地下へと続く階段を下って行った。
苦労していたボスを倒した瞬間こそ、最高にテンションが上がりますよね?
「レベルを上げて物理で殴る」も好きですが、何かしらのギミックを解かないと倒せない……そんなボスも好きです。
今回登場した「ウッドゴーレム」氏はそんなギミックボスです。となれば、次のボスは……。




