困っていた猫と兎を助けました
先手は後衛組の魔法だ。先ずは魔物の数を減らすのが狙いだ。それに合わせて俺も魔法を放つ。使用したのは『火球』だ。あの二人を巻き込まないように威力を抑えたが、効果は十分! この一撃で数匹のロックサラマンダーを倒す事に成功した。乱入者に気付いたロックサラマンダーの群れは、俺達の方に意識を向けた。これでよし! 残りは全部で六匹、問題はないな。
魔法を撃った後は既に戦闘を始めた前衛に合流するべく、槍を構えロックサラマンダーに向かって突撃する!
ロックサラマンダー数匹が、先程の魔法を喰らい背中の皮膚が一部剥がれていた。そこを目掛けて槍を突き込む!
槍は大した抵抗も無くロックサラマンダーの体を貫いた! よしっ! 先ず一匹!
周りでは嫁達が続々とロックサラマンダーを討ち取っていた。
「少々硬いですが……問題ありません!」
マリーは二刀のナイフを巧みに操り、同じ個所を何度も切りつける。やがて石の皮膚を切り裂き、体の奥深くまでナイフを突き込み絶命させた。
「お~ほっほっ! ワタクシの一撃、防げるものなら防いでみなさいっ!」
プリムラが大剣を大上段から一気に振り下ろす! その一振りで見事にロックサラマンダーの胴体を真っ二つにした。
「……遅い」
リラは素早い動きで所構わず切り刻んだ。リラの持っている氷の魔剣の力でロックサラマンダーの体が凍り付いていき、やがてその生命活動を停止させた。
「皆、強いわねぇ。おねぇさんも負けてられないわぁ」
ソニアが笑顔で魔法を唱える。するとロックサラマンダーの真下から、尖った細い石柱を出現させ串刺しにした。面白い魔法だな、後で教えて貰おう。
「はぁっ! よし、これでっ!」
ローリエは何とロックサラマンダーの腹を蹴り上げ、ひっくり返して腹を露出させる。そして腹を目掛けて剣を突き刺し倒したのは技ありだな。
「これで……全滅だな、周りに他の気配は無いか?」
「はい……周囲に魔物の気配はありませんね」
「おねぇさんも魔法で調べたけれどぉ、大丈夫だと思うわぁ」
索敵が得意な者が二人いると安心出来るな。一人よりも二人の方が情報の精度が上がるのは当然だな。
「大丈夫ですか? 今、傷を治しますね」
戦闘終了と同時に、アリスが助けた二人に近寄り治癒魔法を掛けた。
「た、助かったの? 私達……」
「もうだめかと思ったにゃ……」
緊張が解けたのか、二人はその場にへたり込んでしまった。怪我もそれ程ひどい物ではないようで、治癒魔法を掛け終わると勢いよく立ち上がり、大きく頭を下げた。
「助けていただきありがとうございました! 私はランカと言います。それでこっちが……」
「ミレットにゃ! 皆さんは命の恩人にゃ!」
改めて助けた二人に視線を向ける。
ランカと名乗った女性は、頭に生えた兎耳が特徴の兎の獣人だ。薄桃色の髪をショートボブにしている。そして何より目を引くのが両腕に装着した「ガントレット」だ。つまりこの娘は己の体を武器に戦う「格闘家」という事だ。珍しいな。
ミレットの方は、同じく頭に生えた耳が印象的だが、兎耳ではなく猫耳という違いがある。その猫耳がピクピクと動いてとても愛らしい。髪は赤茶色でそれをセミロングの長さに切り揃えている。その手には真ん中から真っ二つに折れた剣が握られていた。普通こんな折れ方するか?
そして二人共軽鎧を着込んでいたが、魔物にやられたのか所々破損していて肌がそれなりの面積で露出していた。嫁達程で無いにしろ、それなりの発育の良い体つきをしていて目のやり場に困る。まあ、取り敢えずはこちらも挨拶をしておこうか。
「助ける事が出来て良かった。俺はレオン、こちらは俺の妻達です」
「マリーです」「プリムラですわ」「……リラ」「ソニアよぉ」「アリスと申します」「ローリエです」
嫁達の挨拶が終わると、ランカとミレットは口をだらしなく開けて唖然とした顔をしていた。
「……全員? 全員奥さんなのですか?」
「凄いにゃ……とんでもないオスにゃ……」
うむ、自慢の嫁達だよ。俺達の事はともかく、ここから進むも戻るも大変だぞ?
「それで、二人はこの後どうするのですか?」
「うっ……そ、それは……戻るしか……」
「無理にゃ……武器も壊れて、回復薬も残り僅かにゃ……」
暗い未来を想像して、絶望に打ちひしがれる二人。頭上にある耳も力なく垂れ下がっていた。さて、どうしたものかな……。
「あなた様……」
するとプリムラが真剣な表情で俺を見つめて来た。ああ、わかっているさ。
「良ければ俺達が送っていきましょうか? ここで会ったのも何かの縁ですし」
「い、いいんですか? 私達そんなにお金持ってませんよ?」
「いや、別に金とかそういうものは、何もいらないですよ」
「お金はいらないって……はっ⁉ じゃあもしかして私達の体が目当てですか⁉」
「ランカ……あの奥さん達を見て、同じ事言えるかにゃ?」
ミレットにそう言われ、ランカは順番に嫁達を見回していく……主に胸を。
「う、うう……全員私達より……おっきいよ~……」
ランカは地面に両手をつき、頽れてしまった。いや……うん、君達も十分大きいよ。文句なしに「巨乳」と言っていいだろう。ただ、比べる相手が悪かった、それだけだ。
「でも、それなら何の目的があるにゃ? 私達を助けても得は無いのにゃ」
そう。これがこの世界の常識なんだ。他人の事など放っておく、これが正しい判断なのだろう。ましてや明日の命も知れない冒険者連中は特にな。性善説なんて、言葉どころか概念すらなさそうだ。そういう意味では俺達の方が異端で、異常なのだろう。
「俺達は善意で君達を助けたいと思っただけだよ。それが信じられないというなら、俺達は黙ってこの場を去ろう」
俺達の好意を受け取らないというなら仕方がない。さあ、どうする?
「ミレットちゃん……私達だけじゃもう無理だよ、この人達の力を借りないと……」
「そうだにゃ。それに、私達の体で命が助かるなら安いもんにゃ」
「うん、そうだね……レオンさん、色々と言っておいてなんですが……私達を助けて頂けますか?」
どうやら腹をくくったようだな。世の中には俺達の様な「変わり者」もいると知ってもらおうか。
「ああ、それじゃあ行こうか。ここは地下十八階だから、後二つ下ればまた転送装置がある。そこを目指そう」
嫁達は頷くとすぐさま隊列を整え、進む準備を完了させる。
「すみません! 急いで荷物を持って来ます!」
そう言うと彼女達は通路の奥にあったリュックを取りに走って行った。他の冒険者も使っている標準的な物だな。
「お待たせしました! 私達も準備完了です」
そう言う彼女達の格好は、依然としてボロボロのままだった。これはいかんな。
「二人共、これを使うと良い」
俺はアイテムボックスから外套を取り出した。雨具として買った物だが、彼女達の体を隠すには丁度良いはずだ。
「えっ? いいんですか?」
「それより、今どこから取り出したにゃ? まさか……アイテムボックスにゃ?」
二人は羨望の眼差しを向けていた。高級品らしいからな、これ。
「さあ行こう。二人は中衛に待機してくれ。その方が守りやすい」
「すみません……」
「剣が折れなければ戦えたのにゃぁ……」
しかしこれは好都合だ。帝国で何かあった際の予行練習になるな……アリスを守る為のね。
新たに登場した二人の冒険者。猫獣人のミレットと兎獣人のランカ。
この二人は筆者がどうしても書きたかった人物でした。語尾に「にゃ」と付ける猫獣人……これぞ異世界モノのテンプレ獣人ですよね(笑)。
そんな私ですが、ランカの語尾に「ぴょん」は付けれませんでした。流石にね?
本当は付けたかった……しかし、兎獣人本人の性格を冷静で頭のキレるタイプにしてしまったので、この語尾はないやろなぁ……と思い、泣く泣く取りやめとなりました。
いつか、必ず語尾が「ぴょん」の兎獣人を出してやる~!




