賑やかになる日常風景 気が付けば大所帯になってきたな
俺の右腕の中にいるローリエが豊かな胸を大きく上下させ、荒い息を吐いている。
「はぁ……はぁ……はぁ……剣の訓練より……疲れますね……」
何ともローリエらしい感想だな。いやまあ「運動」には違いないが。
「どうでしたか? ローリエ」
事の成り行きを見守っていたアリスが俺の左腕の中に移動しそう尋ねた。
「姫様……そう、ですね……色々な感情が渦巻いて、上手く言えませんが……これだけはハッキリと理解できます。私は今、幸せなのだと」
「子供の時の夢が叶いましたね」
アリスがローリエの手を握りながらそう言った。
「ふふ、そうですね。もう無理だと諦めていましたけれど……」
ふむ、何やら気になる話だな。
「その「子供の頃の夢」とは一体どういうものだったんだ? 良ければ教えてくれないか?」
「それはですね、私達二人で同じ殿方を好きになって、一緒に嫁げたらいいねと、子供の頃にした話ですね」
「ふふふ、懐かしいですね。昔、二人で約束しました。同じ殿方に嫁いで、ずっと一緒にいようねって」
何とも可愛らしい夢ではないか。俺も思わず笑みが零れてしまうよ。
「ですが、年月を重ねそれが不可能であると知って以降、ローリエとこの話はしなくなりました」
「はい。私達はそれぞれ家の為、別々の殿方に嫁ぐ事になるだろうと……姫様には帝国の皇太子との縁談が持ち上がりましたしね」
例のクズ皇子か。まあそれが無くてもアリスは婿を取らなければならない立場だしな。どのみちその夢は叶わないか……。
「ですが、レオン様のお陰で諦めていた夢が叶いました。本当にありがとうございます」
「俺は別に何もしていないさ」
まあ、強いて言えば『運命』か? いや、これは二人の『絆』の力という事にしておこう。その方が俺好みだしな。
「ローリエ。これからは私の事を「アリス」と呼び捨てにしてね、昔の様に」
「そ、それは……」
「お願い。それに私達は『家族』になるのよ? 様付けはおかしいでしょう?」
「うう……わ、わかりました……アリス」
「ふふふ、ありがとう」
アリスの説得に折れたローリエだが、その顔は晴れやかな笑みを浮かべていた。うむ、いい話だな、心が洗われる様だ。
「これで二人は俺達の『家族』だ。皆で幸せになれるように頑張ろう」
「「はいっ!」」
いい返事だな。さて、この二人にも『俺達の事情』を説明しなければな。しかしそれは後回しだ、俺はむしろここからが本番なのだから。
「ええ、これから宜しくお願いしますね。アリスさん、ローリエさん」
声のした方を向くと、嫁達が全員集合していた……勿論、全員服を脱いでいますよ。
「成程! 皆さんと一緒に『幸せ』になれるのですね」
「えっ? 一緒に?……えっ?」
既に我が家のルールに順応しようとしているアリス。何が起こっているのか理解できず混乱しているローリエ。実に対照的な二人だが、安心しろローリエ。君のその反応が正常だよ。
「では、手始めにワタクシから行かせていただきますわ」
そう言って俺の下腹部に跨るプリムラ。もう好きにして下さい……。
「しっかりと見学させて頂いて、お手本にさせてもらいます!」
「あうぅ……どうしてアリスはそんなに積極的なの?」
俺もそう思うよ……。好奇心旺盛な娘だとは思っていたが、想像以上だったな。では、これから俺の『男』としての甲斐性を見せますか!
コンコンと、扉がノックされる音で目が覚めた。うぅむ……流石にこの人数を相手にするのは疲れたよ。こういう時に率先して応対するマリーも未だ夢の中だ。ここは俺が応対するしかないか。
そんなわけで部屋の扉を開けると、そこには一人のメイドが立っていた。外から部屋の様子を確認したメイドが、ベッドの上の惨状を目の当たりにして絶句した。むしろ叫び声を上げなかっただけでも称賛されるべきだよな……。六人の美女が裸体で寝転がり、色々な体液でドロドロになっているんだ。しかも自国のお姫様と伯爵令嬢込みというね……。これ、城内で噂にならないよな? 『絶倫王』とかあだ名を付けられたら泣くぞ……。
アリスを迎えに来た王女専属のメイドだと自己紹介した彼女が「お手伝いしましょうか?」と言ってきたが、丁重にお断りして外で待ってもらった。
「これ以上変な噂が立つ可能性は排除しなければな」
既に手遅れかもしれないが、やらないよりマシだろうさ。
魔法をフルに使い、体やベッドを綺麗にして証拠隠滅を図る。途中で目を覚ました嫁達も協力して後始末をした。
「よし、それじゃあ出かける前に、国王に挨拶しに行こうか」
メイドに連れられて自室に戻ったアリスとローリエが支度を済ませ合流した。
「改めて、これから宜しくお願いします。マリーさん、プリムラさん、リラさん、ソニアさん」
「宜しくお願いします。マリー殿、プリムラ殿、リラ殿、ソニア殿」
嫁達と改めて挨拶をする。これからは同じ「嫁」だからな、是非仲良くして欲しいものだな。
その後、俺達も身支度を整えガルド王に謁見しようと近くのメイドに尋ねたら「俺の部屋に来やがれ」という伝言を預かっていた。ああ、話は変わるが昨夜、気絶――もとい寝る前に『俺達の事情』についてアリスとローリエに説明した。二人はとても驚いていたがすんなりと受け入れてくれた。本当に良く出来た娘達だよ。ガーベラを紹介した時は、頭に?マークを浮かべていたがな。
というわけで、王の自室に向かうと既にエルナ王妃、ノーバス伯爵そして賢者殿が集合していた。
「おう、よく来たな。これからダンジョンに向かうのか?」
部屋でゆっくりと寛いでいるガルド王が右手を上げながら言った。
「ええ、ですがその前に用事を済ませようと思いまして……」
先ずは昨日話したノーバス伯爵の検査からだ。
「ではノーバス伯爵、検査をするのでじっとしていて下さいね」
「うむ。しかしその呼び方はいささか他人行儀ではあるまいか? 「義父」と呼んで構わんぞ?」
「……それでは始めます」
何か言っているが、取り敢えず無視だ、無視。昨晩アリスとローリエが俺達の部屋に居たのは把握済みだろう。遠回しに「責任取れよ」と言っているのだろうさ。伯爵に言われるまでもない。
それで詳しく「視て」みると、両腕の神経が少し損傷していたが、後は概ね良好だった。
昨日の経験もあり、治療はほんの数分で終了した。
「うむ、腕が軽くなったな!」
と言って伯爵は腕をグルグル回した。これは一言忠告しなければ。
「昨日も言いましたが、鍛錬は程々にして下さい。いいですね?」
「うむ、承知しておるよ。決して無茶はしないとも」
まあ、本人もこう言っているし、信用するしかないか。
「それと……賢者殿、これを」
「ふむ、これは……家の図面じゃな?」
「昨日俺が書いた物です。家を建てる大工の棟梁に渡して下さい、家を建てる際の参考にして頂けたらと思います」
素人が書いた落書き程度の物だが、何か参考になればと思い書き記した。これに書いた風呂場だけは何としても再現して欲しい所だな。
「うむ、しっかりと渡しておこう。それと例のサイクロプスじゃが、色々調べたいので王国で引き取りたいのじゃが……」
「ああ、それもありましたね。結構な大きさですが、何処に出せばいいですか?」
すっかり忘れていたな。これも『敵』に関する貴重な証拠だ。しっかりと調べてもらおうか。
「城の中庭でよかろう。ガルドよ、問題ないな?」
「ああいいぜ。俺も気になるから一緒に見に行くぜ」
子供か! とツッコミたくなったが、ここは我慢だ。
「では、中庭へ向かうとするかのぅ」




