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見せてもらおうか、王宮の風呂の性能とやらを!

そんな話をしていると、扉がノックされ城のメイドが俺達を呼びに来た。どうやら夕食――ディナーの支度が出来たようだ。

 部屋を出てメイドの後に続き歩いていくと、なが~いテーブルが幾つもある部屋に連れてこられた。前の世界で見た事のある、晩餐会などが開かれる様な大きな宴会会場の様な場所だ。つまりここで飯を食うと? マジですか……。

 そんな馬鹿でかい部屋には、既に国王夫妻、ノーバス伯爵、そして賢者殿が着席していた。

「お待たせして申し訳ありません」

「お前達は客なんだから、そんな事気にすんな。いいから座ってくれ」

 国王に言われるがまま、俺達は着席した。すると次々と料理が運ばれてきて、あっという間にテーブルの上が料理で一杯になっていく。ふむ、コース料理の様に一皿一皿提供されると思ったが、こちらが冒険者という事を考慮してくれたのか? と思ったがガルド王の性格を考えるとただ単に、一皿ずつ食べるのが面倒だと言う理由かもしれないな。

「揃ったようだな、よし、皆の者好きなように飲み食いして構わん。足りなければ追加で出すぞ」

 そう言ってガルド王が食事を始めると、それに倣い皆が料理を食べ始めた。

「こ、これは……ダッシュバードの肉じゃねぇかっ⁉」

 そしてメインディッシュのチキンステーキを食べた時に騒ぎは起きた。食材を提供した際、料理長に国王には黙っていてもらうようにお願いした。所謂いわゆるサプライズプレゼントというやつだ。

「はい、私が肉を提供させてもらいました。皆様に喜んで頂けたら幸いです」

 俺がそう言うと、エルナ王妃がとんでもない事を言い出した。

「レオンさん。当家の婿に来ない? 我が娘ながらアリスはいい子ですよ。どうかしら?」

「お母様っ⁉ 何を仰っているのですか⁉」

 アリス姫が顔を真っ赤にさせて抗議する。だがその様子は嫌がっているというより、恥ずかしいといった感じなのが気になる。エルナ王妃の冗談である事を祈るぞ。

「いやいや、王家に婿入りとなると周りが騒ぎ立てましょう。ですので、ここは我が伯爵家に婿入りが妥当かと思います」

「父上⁉」

 ここで伯爵も参戦、混沌としてきたな。ローリエも抗議の声を上げつつ、顔を赤らめ俺の方をチラチラと見ていた。段々と外堀が埋められて行くのを感じるよ。

 そして食事が終わり、歓談かんだんの時間が設けられると、先のダッシュバードの話になり、リラがポロっと「何時でも好きなだけ食べられる」とこぼした為、その理由を説明する羽目になり、ある程度自由にダッシュバードの肉を手に入れられると説明すると、今度はガルド王も参戦し「アリス、絶対にレオンを逃すな! 何としても婿に来させろ!」とかふざけた事ぬかしやがった。あんたが言うと洒落にならないので是非止めてもらいたい。

「嬉しいだろ? 親公認だぞ、もっと喜べ」

 やかましい。しかし、これで益々外堀が埋められてしまったな。面倒な事にならなければいいが。

 そんな賑やかなディナーが終わり、客室に戻ってのんびりとした時間を過ごしている。何故かアリス姫とローリエも同席している。嫁さん達が楽しそうに歓談しているので、まあいいか。

 それから少し時間が経った頃、再びメイドがやって来た。今度は何の用だろうと思っていたら、風呂の用意が出来たので是非ご利用下さいとの事だった。

 風呂! その一言で俺はその場で飛び跳ねそうになる位歓喜した。やはり一日一回は風呂に入りたい身としては、その誘惑には勝てんな。

 その様なわけで、メイドの案内で俺達夫婦は王宮の風呂場へと向かう。当然だがアリス姫とローリエは別行動だ。夫婦でもないのに一緒に風呂に入る訳ないだろう。そう思っていたから、二人の覚悟に満ちた瞳を見逃す事になってしまったのだが……。




 風呂の内部は正に『贅沢の極み』と言える程圧巻の光景だった。

 同時に百人は入れそうな巨大な浴槽、床や壁天井に至るまで、大理石のような物で造られてキラキラと輝いている。そして何か良く分からない獣の口からお湯がかけ流しになっている。リゾートスパの様な感じだな。

「ここは本当にお風呂なんですか? この間入ったお風呂よりずっと広いですよ?」

 マリーが辺りを見回しながら、そんな疑問を口にした。例の高級宿と比べているのだろうが、それはこくというものだろう。

「実家のお風呂より大きいですわね……何故か負けた気分になりますわね」

 プリムラは元の世界の風呂と比べて、悔しがっていた。いや、勝ち負けの問題ではないと思うぞ?

「……大きいお風呂……泳げる?」

 リラは泳ぎたそうにウズウズしていた。風呂で泳いじゃ駄目だぞ。

「お風呂っていうのは、水浴びとどう違うのかしらぁ?」

 ソニアは風呂に入った事が無いらしい。いかんぞっ! 風呂は「命の洗濯」と言われる程重要なのだ。これはしっかりと風呂の良さを教えなければならんな。

「よし、それでは湯に浸かる前に、体を洗うぞ」

 ソニア以外の嫁達は各々タオルで体を洗い始めた。前に一度やっているのでスムーズに洗っていく。ソニアは初めてなので、俺が懇切丁寧こんせつていねいに指導していく。

 風呂に椅子が設置されていなかったので、立ったままソニアの体を洗っていく。ソニアの褐色の肌が泡で白くコーティングされていく様は、何とも言えない色香を醸し出していた。

 しかし、今は我慢だ……ここは神聖な風呂場だ。ゆっくりと疲れを癒す場なのだ……。心の中でそう唱えながらソニアの体中を泡だらけにしていった。

 その後、木桶にお湯を掬いソニアの体に付いた泡を洗い流していく。

「うん、なんとなくサッパリとした感じねぇ……でもこれって魔法でも同じ事出来るわよねぇ? それなのにわざわざこんな場所まで造って何でお風呂に入るのかしらねぇ?」

「この世界の事情で説明すると、国の権威や裕福さを喧伝する為だな。無駄な事に金をかけ贅沢を謳歌する……我が国はこれだけ無駄な事をしてもお金に余裕があるぞと知らしめるのが主な目的だろう」

 ソニアの疑問にそう答える。前にも言ったが、魔法で体を綺麗に出来るこの世界で風呂は正に『贅沢の無駄遣い』なのだ。故に「公衆浴場」などの風呂文化が根付かないのだろう……勿体無い……いずれ俺が風呂文化をこの世界に広めてやる。

 そう決意を新たにした時、入り口の扉が開く音が聞こえた。

 なんだ? 今は俺達客人が風呂に入っている事は周知されているはずだ。つまり部外者が入って来ることは不可能。まさか暗殺者か?

 などと警戒していたが、入って来た人を見て愕然としてしまった。

「何をしているのですか? アリス姫、それにローリエ殿まで……」

 そう、侵入者の正体はアリス姫とローリエだった。ここは風呂場だ。当然、二人共一糸纏わぬ生まれたままの姿での登場である。

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