チーム・リラ その肆
朝食を食べ終えると、早速「天都」へと転移します。ダンジョンに挑む為に、色々と準備をしないといけませんからね。
「天都」のギルド内の様子なのですが、冒険者はいましたが朝一という事もあり、数はそれ程でもありませんでした。
その数少ない冒険者ですが、私達がギルド内に姿を見せると、一斉にこちらへと視線を向けてきます。
その視線は、私達を値踏みするかの様ですね。挑発的……と言いますか、そんな感じを受けます。
まあ、私達の場合は、その手の視線は慣れていますからね。誰一人と気にせずに受付へと向かいます。
「……ダンジョンに……入る……手続き……して?」
「はい。では、こちらの書類に記入をお願いします」
提出した紙を手にしたリラさんが、スラスラと記入していきます。
記入の内容は、パーティ名。リーダーの名前。パーティの人数。この三つですね。
これは、ダンジョンの中に入っている冒険者を把握する為と、中に入って何日も返って来ない冒険者を助ける為に必要な措置です。ダンジョンのあるギルドでは、必ず行っている事ですね。
「……皆様は当ダンジョンに初めて挑戦されますよね? では「白」の転移石をご購入されてはどうでしょう?」
ダンジョンに入る手続きを終えたところで、受付が転移石の購入を薦めてきました。
「……一つ……買う……」
リラが迷わずに買うと宣言しました。これはここに来る前に、皆さんで決めた事です。
確かに、「白」の転移石は高い買い物です。なにせ一つ『10000G』もするのですから。
ですが、これを「命の値段」と考えれば安いくらいだと思いますね。素人には手が出ないとは思いますけれど。
逆説的に、ここを拠点としている冒険者の方々は、この程度の出費は問題無い程度には稼いでいるのでしょう。
その証拠に、先程私達を見ていた冒険者達ですが、こちらを見るだけで何もしてきませんでしたからね。
普通、私達の様な女性だけのパーティを見かければ、下心丸出しで声を掛けてくるか、女だからと見下し難癖を付けて来るかのどちらかでしょう。それをしないだけで、あの冒険者達の力量が窺い知れます。
転移石は魔物からのドロップや宝箱の中から入手可能だそうですよ。それと、深層になればなるほど発見率が高まるみたいです。
「……それじゃあ……いく……よ……」
転移石を手にしたリラが、ギルドの奥にあるダンジョンの入口へ向かって歩き出しました。置いていかれてはけませんね、私は早足でリラの後を追いました。
ギルドの奥にあった会談を下りると、そこには大きな部屋があり、その部屋の中心に石碑がポツンと置いてありました。
この石碑でダンジョンへの行き来をするみたいですね。
「……集まって……」
仕掛けは単純で、石碑に魔力を込めるだけです。それで魔力込めた者の周囲にいる人も一緒に転送されます。
メンバー全員が周囲に集まったのを確認したリラが、石碑に魔力を込めました。
すると次の瞬間、私達は光に包まれダンジョンへと転移していったのでした。
転移の光が収まると、そこはゴツゴツとした岩肌が散見される山道でした。
「山フロア……という感じかしら~?」
周囲を見渡しながら、エリカがそう呟きました。多分、そうではないでしょうか。
それにしても……歩きにくそうな場所ですね。崖になっている所もあり、慎重に進まないと落下の危険もありそうですね。
「石碑を探す……とは言いますが、何処に向かえばよろしいのでしょうか?」
そう言って首を傾げたのはマリーです。
「このダンジョンは、進めば進む程にフロアが広くなっていくみたいですので、入ったばかりのこのフロアはそれ程の大きさではないと思います」
マリーの疑問に答えたのは私です。つまり、最初は適当に探索しても良い、という事ですね。
それに、よく見ると道のような物もありますし、それに従って進めば大丈夫でしょう。
「分かりました。では、進みましょう」
私達のパーティの斥候役はマリーです。彼女が先頭になってダンジョンを進んで行きます。
マリーが警戒しながら進んで行きますが、魔物には滅多に遭遇しませんでした。
稀に現れた魔物も、「ゴブリン」や「ウルフ」といった下級の魔物が殆どです。
「おいおい……これじゃあ10000G稼ぐのに、どんだけの魔物を倒さなくちゃいけないんだ?」
思わずそんな愚痴を漏らしたのはアルメリアです。
「そうねぇ……百匹は倒さないと駄目よねぇ」
「ですけど、このペースで倒していたら、どれだけ時間が掛かるか分かりまセンヨ?」
「そうでござるなぁ……一日中戦っても足りないのではござらんか?」
ソニア、ローズ、椿がそれぞれの考えを述べていきます。
それと重要なのは、転移石がどれくらい手に入るか……ですかね。特に「白」が。
う~ん……今のところ、魔物を十匹倒して「白」の転移石のドロップは無し。通常通り魔石はドロップしますね。宝箱からも出ません。「赤」は一つドロップしましたね。
これは……厳しいと言わざるを得ませんか。浅いフロアは駆け足で進んだ方が良さそうです。
途中で他の冒険者にすれ違いましたが、魔物は避けて移動している感じでしたね。やはり、浅い階層ではそのやり方が正解なのでしょう。




