チーム・レオン その玖
ギルドに到着して、職員に色々と報告する。先ずはダンジョンを踏破したと伝えると、
「ダンジョンを踏破したですってーーーっ⁉」
受付の年若い女性職員は、俺の報告を聞くと魂が震える様な大絶叫を発した。
「「「な、なんだってーーーっ?」」」
今我々が居るのはギルド支部の建物の中だ。当然、そこには他の冒険者も存在している訳で……。
受付嬢の叫びを聞いた他の冒険者も、連鎖する様に叫び声を上げた。音圧で建物が軋むレベルの大音量だったと記しておく。
そこからはもうお祭り騒ぎだったよ。ギルドの記録に無い魔物の報告。その魔物達からドロップした魔石。
特にその魔石の「質」と「量」には、驚きすぎて絶句されてしまったよ。
それで魔石を売ろうとしたのだが、「そんなに多くは買い取れません」と言われてしまったのだ。
まあ、それはそうだよな。俺達が持ち込んだ魔石は、殆どが「二」級以上だ。中には「一級」もちらほらと。
これらを全部買い取ろうとすると、莫大な現金が必要になる。残念な事に、ギルド支部にはそれだけの現金が無いのだとか。
ここでの魔石の買取りは程々にして、本格的な回鳥は王都の本部でお願いします、と涙ながらに言われれば断れんよ。
だが、一番の問題と言えば、ダンジョンの最下層ボスを倒して手に入れた魔石。それを見せた時だ。
ボスの魔石をみた受付嬢が、その場で目を回して気絶する始末。慌てて別の職員が業務を引き継ぐ事態に……ご苦労様です。
それと、未登録の魔物に関しても、ギルド本部で登録してくれと通達された。
どうやら俺達は、王都に足を運ばねばならんみたいだな。だが、その前に手に入れたアイテムの鑑定だけは済ませておこう。
「ひっひっひ、おやぁ? 見た事のある顔だねぇ。ひひ、今日は何を見せてくれるのかい?」
アイテムの鑑定をする為、ギルドの隣に併設されている「鑑定屋」に向かう。そこで出迎えてくれたのは、相も変わらず怪しい風貌をした老婆であった。
ふむ、俺達の事を覚えているのか? まあ、自分で言うのもなんだが、目立つからな、俺達は。色々な意味でね……。
「ご無沙汰しています。早速で申し訳ありませんが、これらの鑑定をおねがいします。先ずはこの鎧からで」
俺はアイテムボックスから鎧を取り出して、老婆の前にあるテーブルの上に置いた。
「ほうほう……何やら不思議な感じのする鎧じゃのう。どれ、視てみるとしようかのう……ぬぅ~ん」
謎の掛け声と共に鎧を凝視する老婆。その瞳が妖しく輝いているのに気がついた。老婆の瞳に魔力が集中しているな。俺が魔力の流れを視る為に行うのと同じ論理だろうと予測する。
「……どうやら、こいつは「黒暗の鎧」と言うらしいね。魔力を込めると自分の「影」を創り出せるんだとか」
「影……ですか?」
「婆にはそれ以上の事は分からなかったよ。詳しい事は自分で使って試しな。さあ、次はどいつだい?」
むう、そう言われてしまえば引き下がるしかないか。それに、「メインディッシュ」が控えている事だしな。
「次はこの「ポールアックス」をお願いします」
という訳で、本日のメインディッシュ……堪能させてもらおうか。
「これは……いや、まずは己が眼で見てみぬことにはな……ぬぅ~ん」
再び自身の瞳に魔力を込め、ポールアックスを凝視する老婆。うん? 何やら含みのある言い方だったが……。
「やはりか……こやつは名を「ガイアブレイカー」と言うそうじゃ。魔力を込めると、こやつ自身の「重さ」が変わるようじゃ。つまりこやつは、立派な「魔斧」という訳じゃな」
成程。さっき老婆が言い淀んだのは、これが「魔斧」だと気付いたからか。
「重さが変わる……ですか? 試してみても宜しいですか?」
「無論じゃ。鑑定はもう終わった。後はお主の好きにするがよい」
「では、失礼して」
俺はテーブルに置かれた「魔斧」を手に取り、魔力を流し始める。
「⁉ こ、これは……!」
魔力を流した直後、魔斧が急に「重く」なった。あまりの重さに床に落としそうになってしまった。慌てて両手持ちにして難を逃れる。
「思っていた以上に「重く」なったな。ふむ、これならば……」
この能力。コイツを持つに相応しい人物に心当たりがあるよ。
「セフィラ。君が使うのが良いだろう」
「アタイかい? アタイは今使ってるヤツで十分満足してるんだけどさ……まあ、試してみるかい」
そう言ってセフィラは俺から魔斧を受け取り、おもむろに魔力を流し始めた。
「っ⁉ 成程……ね。面白いじゃあないかっ!」
セフィラは、魔斧の重さでバランスを崩し床に倒れ込みそうになるが、何とか踏ん張って体勢を立て直す事に成功する。
それが何かの琴線に触れたのだろう、セフィラが追加で魔力を流し始めた。
更に重さを増す魔斧。その重さで、セフィラの足元の床がミシミシと軋む音を立てだした。おいおい、これ以上はマズいぞ?
止めるべきだろうな……そう思い、セフィラに声を掛けようとしたのだが、それよりも速くセフィラ自身が魔力を流すのを停止した。
「いいねぇ……気に入ったよ。『ガイアブレイカー』だったっけか? お前は今日からアタイの相棒だよ」
そう言ってセフィラは、ポールアックス――ガイアブレイカーを肩に担ぎ、満面の笑みを浮かべた。
「やれやれ……床が抜けるかと思って焦ったよ。お陰で寿命が縮んだわい」
そんな事を言いながら冷や汗を流す老婆。申し訳ない。
「まあよい。ほれ、さっさと次の物を見せな」
という感じで、老婆が急かしてくるので、俺はダンジョンで手に入れた細々としたアイテムを提示した。
まあ正直な事を言うと、鎧とポールアックス以外に惹かれる物が無かったので、大して期待はしていない。
俺の予想通りというか、鑑定してもらったアイテム達は、効果が微妙だったり使い道が限定されている物が殆どだった。
なので、これらのアイテムは買い取ってもらう事にした。金額に関しては、それなりの収入になったとだけ言っておく。
さて、ここでの用事は全て終了したが……この後はどうするかな?
「日が落ちるまでには、まだ時間がある。なので、今日のうちに王都に向かってしまうのはどうだろうか?」
という提案をメンバーにしてみる。どうせ明日は王都ギルド本部で情報提供しなければならんのだ。手間は出来るだけ省きたい。
「良いのではありませんか? それに、ここよりも王都の宿屋の方が「安全」でしょうから」
というプリムラの発言に、他の妻達が頷きで了承の意を示す。ふむ、特に反対意見は無いみたいだな。
「では、王都に向けて出発するとしようか。それではこれにて失礼させて頂きます。また何かあれば宜しくお願いしますね」
「ひっひっひ。次も良い品を見せておくれよ」
鑑定屋の老婆に別れを告げて、俺達は王都への道をひた走る。今回は急ぎでは無いので、適度な速度での移動だ。
それでもすれ違う旅人は、俺達を見て驚き戸惑いの表情をするのだった。まあ、もう慣れたよ。
そんな感じで街道を走り続けた俺達は、道中何事も無く王都へ到着する。日暮れまでには未だ時間があるな。
そう言えば、ボスモンスターである「巨象」の名前だが、俺の独断と偏見により「ガーディアンエレファント」に決めた。
どうせギルドに説明をする時に決めろと言われるのだ、先に決めてしまっても問題無かろう。




