新たなる手掛かりを求めて
「嫁」が二人になり、いちゃラブ度合いが倍になりました。
今はまだ二人だから何とかなっていますが、これが三人、四人となっていくと……。
出来るだけヒロイン全員、均等に出番を作っているつもりですが、今後どうなるか、不安で仕方がないです。
「……んっ」
どうやら朝になったようだな、一体いつの間に? というか俺はいつ寝たんだ? 覚えていないだと?
記憶が曖昧になっているな。昨夜の事は夢だったのか? と、現実逃避しようとしたが、両腕にある暖かさと柔らかさが現実だと告げている。
噂では太陽が黄色く見えるそうだが……近いうちに俺も拝む事になりそうだ。
まあ、この幸せそうな寝顔を見ていたら、どうでも良くなるな。しばらくこの寝顔を堪能しておこう。
最初に起きたのはマリーだった。
「おはようございます、旦那様」
「ああ、おはようマリー」
挨拶をして目覚めのキスをする。するとその動きでプリムラも目を覚ました。
「おはようございます。あなた様、マリー」
「おはよう、プリムラ」
「おはようございます」
こちらも目覚めのキスをする。するとマリーが突然両手で顔を覆って、蹲ってしまった。どうやら昨夜の事を思い出して、恥ずかしくなってきたのだろう。
「今更何を恥ずかしがっているんですの?」
「うう……私は何て事を……」
プリムラ言葉は聞こえてはいなさそうだな。
このままだらだらとベッドの上で過ごしてもいいのだが、今はその様な時ではない。目の前の面倒事が片付いたら、改めてゆっくりと過ごすとしよう。
「さあ、支度をして、今日も一日頑張ろう!」
「「はいっ!」」
気持ちを切り替えてギルドに向かう準備をしようか。
朝食を頂き、ギルドへと出発した。今日は寄り道をせずに直接向かうつもりだ。何か新しい情報があるかもしれないからだ。
朝一で訪れたギルド内は、大勢の人で賑わっていた。まあ、あくまで昼間に訪れた時と比較してだが。
「レオンさん、今日は早いですね」
ハンナが元気に迎えてくれる。この人は本当に働きすぎだと思うが、労基も無いこの世界では関係ないか。
「ええ、何か新しい情報が無いかと思いまして」
「特に目新しい物はありませんね……そもそもここから遠くに行ける冒険者が不足していますし、王都からの応援が来れば或いは……」
その時、ギルドの扉が開き何者かが入って来た。
普段なら気にしないのだろうが、今は朝の早い時間という事もありギルド内の人は少ない。比較的静かな室内で扉を開ける音が大きく響いた為、何事かと入り口を注視した。そこに佇んでいたのは、年齢は俺達と同じくらいか? 涼しげな印象を与える少女だった。
「リラちゃん!」
ハンナが大声を上げて少女の名前を呼んだ。するとギルド内にいた人達もざわつき始めた。
「リラ! 帰って来たのか⁉」
「おおっ! リラが救援に駆けつけてくれたのかっ!」
リラと呼ばれた少女。その特徴は、蒼い髪を後ろで無造作に束ねポニーテールの様にしている。眠たげな表情をしている顔。そして何より目を引くのは軽装と言うのも憚られる服だ。上は胸元の開いたノースリーブの服を着ている様にしか見えないし、下はミニスカートに二―ソックスと……俺のいた世界の普段着と言われても納得してしまいそうな格好だ。だが、関節や急所にはそれを守るサポーターが装着され、長剣を腰に携えている様は、冒険者に間違いないのだろう。そんな装備で大丈夫か? と思わず余計な事を言いたくなりそうな格好だ。しかし、一番目を引くのは彼女の『豊満』という言葉では表しきれない程の大きな胸だ。思わず視線が釘付けになってしまう。彼女の身長がそれ程高くないのも相まって、殊更大きく見えるな。
そんな事を思っていたら、両腕を思いっきり抓られた。マリーとプリムラだ。うむ、初対面の女性を凝視するなど失礼だったな。反省しなければ。
リラは周囲の喧騒をよそに、ハンナのいるカウンターへ真っ直ぐ進んできた。
「リラちゃん、来てくれたんだ!」
「……うん、この町が……危険だって聞いたから……急いで来た」
「王都からどうやって来たの? 馬車で来たにしては早すぎると思うけど?」
「……走って来た」
「走って⁉ 無茶したらダメだよ⁉」
このリラと言う少女は、王都から走ってここまで来たのだという。王都への増援要請のタイミングを考えると、知らせを聞いた直後にこの町を目指した事になる。恐らく昼夜問わず走り続けたのだろう。うん、確かに無茶だな。
「……町の皆が心配で……早く来たかったから……馬車を待って……られなかった」
「他の救援の人達は?」
「……馬車でこの町に……向かってる……冒険者や兵隊だけじゃなく……色んな人が……来てくれる」
「そう、良かった。今回の事は王都では?」
「うん……大騒ぎになってる……十年前と同じに……なるって」
ふむ、下手に隠したりせず、広く周知するのは正しい判断だな。流石にそこは間違えなかったか。ギルド本部も、王国上層部も。
「大丈夫だよ、リラちゃん! 今回はここにいるレオンさん達も協力してくれるし、町を守れるよ!」
「……レオン?」
そこで初めて彼女は俺達の方を見た。これは「眼中に無かった」と言う訳ではなく「今初めて気付いた」というのが正解だな。
リラが俺の目の前までやって来た。近くで見ると、顔立ちが整っているのが良く分かる。美少女と言って差し支えないだろう。身長差がある為、自然と彼女を見下ろす形になるが、それにより胸の谷間が良く見える。彼女の瞳は、髪と同じく深い蒼色をしていた。じっとこちらを見つめている、吸い込まれてしまいそうだ……谷間にではないぞ?
「レオンさん、こちらはリラちゃんです。私の幼馴染なんですよ」
成程、ハンナの幼馴染か。つまりこの町の出身という事か。
「レオンと申します。新人ですが、この町の為に精一杯頑張らせて頂きます」
「……新人?」
「はい、先日登録したばかりです」
「レオンさん達は凄いんだよ! 登録して二日でCランクになっちゃったんだから」
我が事の様に自慢するハンナ。何だかこそばゆいな。
「……強いの?」
「勿論だよ! とっても強い魔物を何体も倒してるんだから」
ハンナの中での俺の評価が高すぎる気もするが……。
「……そう」
そう短く言うと、リラは黙ってしまった。もう聞きたい事は聞けたという事なのだろう。
「それで、今日は森とは別の場所に向かいたいのですが、どこか調査した方が良い場所などはありますか?」
会話が途切れた所で、ここに来た目的を果たそう。今日は別の場所を調査した方がいいかと思い、ハンナに意見を聞いておこうと思った次第だ。
「それでしたら、森へ向かう途中に分かれ道があるのですが、森と別方向に行くと丘陵地帯に出ます。そこにも魔物の縄張りがあるのですが、未だ調査出来ていません」
「分かりました。今日はそちらを調査したいと思います」
「お願いしますね」
では、出発するかと思ったその時、リラがじっとこちらを見つめていた。
「何か俺達に用ですか?」
余りにも真剣な表情で見つめてくるので、どうしたんだろうと思いこちらから声をかける。
「……私も一緒に行く」
ざわっ‼
彼女のこの一言で、ギルド内は再び喧騒に包まれた。
「リラが誰かと一緒に?」
「幾つものパーティから誘いがあったけど、全て断っていたのに?」
「ちくしょ~っ! 何でアイツばっかり‼」
「既に二人も美人を侍らせてるのに、リラまでだとっ⁉」
「もげろっ! 爆ぜろっ! 呪われろっ‼」
どうやら彼女は今迄ソロで仕事をしていたようだ。それが急に誰かとパーティを組むとなれば騒ぎにもなるか。そして最後の奴! 後で覚えてろよ?
「分かりました。では、宜しくお願いします」
この町の出身なら周囲の地理に詳しいはず。それに初めて向かう場所だ、人数が多い方が安全だろう。そう結論付けて了承の意を示す為に右手を差し出し、握手を求めた。
「うん……よろしく……」
リラはしっかりと俺の右手を握った。握ったその手は……人の手とは思えない程に、冷たかった。




