それぞれの想い・リラの場合
次の日。朝起きて直ぐに『賢者殿』が我が家にやって来た。このパターンは前にもあったな。
「起きておるか小僧? ガルドが呼んでおる。一緒に城まで来てもらうぞ」
それだけ言い放つと『賢者殿』は俺を連れて城へと転移した。やれやれ……。
城での話し合いは、そんなに時間は掛からなかった。話の内容を要約すると、
「いきなり知らない国に親書を渡しても、まともな返事が返って来ない。なのでお前達何とかしてくれ」
だそうだ。普通、それまで縁も所縁も無い国と国交を結ぶなんて何年も何年も費やすものだ。だが今はそんな時間を掛けている場合ではない。時間が掛かれば掛る程相手側が有利になるからな。その内、俺達が国外へ向かう事になるか。
その後、椿用の服と水着をユニスの店で受け取ろうとしたのだが、
「申し訳ありません。まだ仕上がっていませんので、また明日にご来店下さい」と言われたよ。
どうも水着のデザインの決定に難儀したそうな。それならば仕方が無い、また明日寄らせてもらおう。
王都での用事は全て済ませたので、『賢者殿』の魔法で家まで送ってもらい帰宅する事になった。。
マリー視点
突然、旦那様が連れて行かれてしまいました。誘拐犯は賢者様ですね。何でも旦那様の意見が欲しいとか……。さて、残された私達はどういたしましょうか?
「丁度良い機会ですし、前回の続きをするのは如何でしょう?」
そうプリムラが提案をしました。前回の続きと言うと、アレですかね?
「前回の続きというのは「自分の居た世界の事を語る」ですね? 良いと思います」
アリスがそう答え、大きく頷きました。私も良い機会だと思います。
「ならぁ、今回はこの世界の事を聞きたいわぁ」
すると横からその様な声が上がりました。声の主はソニアですね。成程、それも面白そうな話が聞けそうですね。
「……うん……分かった……なら……初めは……わたし……かな?」
そう言ったのはリラですね。『順番』通りならそうなりますか。
「……わたし……喋るの……得意じゃないけど……許して……」
「ゆっくりで構いませんよ。時間は沢山ありますから」
私がそう言ってリラの肩を優しく抱くと、彼女は頷きゆっくりと話しはじめました。
リラ視点
そうは言ったけど、何を話せばいいのかな? わからないから全部、話すね。
わたしはこのカルディオスの町で生まれた。お父さんもお母さんも冒険者だった。お母さんはわたしが生まれた時に引退したみたいだけど、お父さんはずっと冒険者を続けていた。
幼い時から冒険者の話を聞いて育ったので、大きくなったらわたしも冒険者になりたいと思っていた。
それと、幼馴染でわたしの一番の親友ハンナ。彼女の両親も冒険者だったと聞いた。ハンナが生まれたのを機に冒険者を引退して宿屋を始めたらしい。お互いの両親が冒険者仲間だったから、幼い頃から一緒に遊んだりしていた。
とても幸せだった……あの日が来るまで……。
あの日の事は、よく覚えていない。お母さんが慌てた様子でわたしを町の避難所に連れて行った。避難所には町のお年寄りと子供達が集合していた。話を聞いてみると、どうやら町に魔物の群れが近付いている、と言われた。
外から聞こえる魔物の叫びと人の叫びを聞いて、わたし達は体を震わせジッとしている事しか出来なかった。
どれくらい時間がたったのだろう、外が静かになると部屋の扉が開いた。現れたのは城の兵士だった。
城の兵士に連れられて外に出ると、変わり果てた町の姿が目に入った。
町『だった』物。そうとしか言えない程、ボロボロになっていた。そして何も言わなくなった両親の姿を見てしまった。
それから何日かの記憶が無い。気付いたら眼が腫れてたから、泣いてたんだと思う。その後はハンナの両親――ナッシュおじさんとポーラおばさんに引き取られた。 そこで二人に冒険者になる為の方法を教わった。それを聞いた二人は困った顔をしたが、わたしが本気だと分かると教えてくれた。
それから何年かたった。どうやらわたしには才能があったらしい。どんどん強くなっていった。それと同時に、胸も大きくなってた……身長は伸びなかったのに……。
もし、もう一度この町が襲われたら……今度はハンナやおじさん、おばさんが死んでしまう……それは嫌だ。だからわたしは強くなろうと思った。もう大好きな人が死ぬのは嫌だから。
「なら、私はギルドで働いてリラちゃんの手助けをするね!」。ハンナはそう言って応援してくれた……ありがとう……。
そしてわたしは王都へ向かった。もっともっと強くなる為に。それから数年後、依頼を終えてギルドに戻った時、他の冒険者の話し声が聞こえてきた。その内容は「カルディオスの町に『大氾濫』が迫っている」というもの。
次の瞬間には冒険者に詰め寄ってた。そうしたら「ギルド職員がそう言っているのを聞いた」と言った。だから次にギルド職員に話を聞いた。どうやら『大氾濫』の兆候が見られたとかで、近い内に『大氾濫』が発生する可能性が高いと……。
そこまで聞いたわたしは、急いでカルディオスへ向かって走ってた。久しぶりに見る町は、わたしの知ってる町の姿と同じで安心した。そのままの勢いでギルドの建物に入る。そこにはわたしの記憶よりも少し大人っぽくなっていたハンナがいた。
そのハンナが見知らぬ男と会話していた。その男――レオンがわたしの旦那様になるとは、この時は思わなかった。
その後、『大氾濫』から一緒に町を守ったり、隣の国に行って王様を助けたり、船に乗って魔大陸へ行ったりと、色んな所に旅をして、沢山の魔物と戦って強くなれた。それに、
「……いっぱい……家族が増えて……嬉しい……」
わたし……今、とても幸せだよ? お父さん、お母さん。




