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新しい嫁は「侍」でした

 人影の正体はプリムラ、ローリエ、セフィラ、ヴェロニカの四名。全員武器を携えて何時でも戦闘を行える状態だ。たまには何事も無く終わらせてはくれないか? 駄目? そうですか……。

「成程。それは重要でござるな。然らば一手ご指南頂こう。それで、お相手はどなたでござるか?」

 椿が椅子から立ち上がり、テーブルから少し離れた位置に移動し、刀を抜いて正眼に構える。

「私がお相手致します」

 彼女に相対したのは、魅惑的なハイレグアーマーを見事に着こなし、長い髪とフサフサの尻尾を靡かせたローリエだ。右手に魔剣を、左手に家宝の盾を携え椿の正面に立つ。

「ローリエと申します。どうぞお手柔らかに」

「先程も名乗りましたが、拙者は椿と申します。こちらこそお手柔らかに」

 挨拶を終えしばしの間睨み合う両者。緊張が高まっていくのを感じる……そう思った次の瞬間!

 キンッ!

 という甲高い音が辺りに響いたと思ったら、ローリエと椿の二人はお互いの武器をぶつけ合い鍔迫り合いになっていた。

「ッ⁉」

 拮抗していたのは一瞬。力では獣人のローリエの方が上だ。自分の不利を瞬時に悟った椿がその場から飛び退く。

「ふっ!」

 ローリエが逃すものかと椿に向かって突撃する。その後二十合程打ち合ったが進展は見られず、二人は一度大きく間合いを取り仕切り直しにする。

「何と重い太刀筋。あのまま打ち合っていたら拙者の腕が痺れてしまうでござるな」

「そちらこそ、見惚れる程に疾く鋭い剣筋。私も何とか防ぐので手一杯ですよ」

 互いを称え合う二人の口元には笑みが見て取れる。

「しかし、このまま睨み合うのは不毛でござるな。然らば我が流派の「奥義」を見せるでござる!」

 そう宣言すると同時に、持っていた刀を鞘に入れ腰を落とし、少し捻った状態に構える。あれはまさか⁉

「抜刀術か?」

「ほう? この技をご存じとは驚きでござるな。では、とくとご覧あれ! 『叢雲流奥義(むらくもりゅうおうぎ)飛燕(ひえん)』!」

 気合一閃! 椿が勢い良く刀を振り抜くと、魔力を帯びた斬撃がローリエに向かって飛んでいく!

 おおっ⁉ 飛ぶ斬撃か! 凄いな。格好いいな。俺も是非に習得したいぞ!

「はぁっ!」

 飛ぶ斬撃を見ても一切動じないローリエが、左手に持つ盾で難無く防ぐ。

「何とっ⁉ 初見でこの技を防ぐとは。見事でござる」

「防げた理由はっ、こういう事ですっ!」

 お返しとばかりにローリエも翠色の魔力を帯びた斬撃を飛ばす。

「おっと⁉ むぅ……ローリエ殿がこの技を収得していたとは……世界は広いでござるな……」

 椿が一瞬驚いた表情を見せたが、冷静に斬撃をかわす。いや、厳密い言えばローリエのアレは、魔剣の力にるところが大きいのだが……。

 その後も二人は何十合と打ち合っていたが、その剣筋が肉体に触れる事は無かった。

「ふぅ……この位で終わりにしましょうか」

「うむ。拙者の実力を測るには十分な時間でござろう」

 ローリエと椿は互いに緊張を解き、笑顔で会話を交わす。何とか無事に終わったか。

「じゃあ次は妾の番ね」

 安堵したのも束の間、ローリエと入れ替わりヴェロニカが前へと進み出て来た。ああ、まだ続くんですか。

 その後もプリムラ、セフィラ、エリカと武闘派の妻達が入れ代わり立ち代わり椿と手合わせを行った。

 連戦になる椿の体力を心配したが、本人は笑顔で楽しそうにしているし大丈夫そうだな。これで終わりでいいな? そろそろ戻るぞ。

「これから宜しく頼むぞ、椿」

「承知しているでござるよ。我が『殿』よ」

 新たに頼れる『妻』を迎え、意気揚々と元の世界に戻る俺達。益々賑やかになるな。


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