物語の裏側で
シオン視点
「はい…です。皆様、御武運を…です」
家族の皆様が西門に向かって走って行きました。本当は此方もついて行きたい。けど、足手纏いにしかならないのは分かっています。我儘は言えません。
町の人達も次々と避難しています。此方も急ぎましょう。そう思い、早足でお城へ向かっていると、
「え~~ん! おかあさん、どこ~?」
子供の泣き声? 何処から? 声のする方に近付いていくと、小さな女の子が道の片隅で泣きじゃくっているのを見つけました。
「どうしたの…です?」
「おかあさんが……どこかにいっちゃった……」
此方が声を掛けると、女の子はそう言って涙を流していました。恐らく避難中に親とはぐれてしまったのでしょう。
「大丈夫…です。お姉ちゃんが一緒に探してあげる…です」
此方が優しく抱きしめると、女の子が泣き止み抱きしめ返してくれました。
女の子の手を取り一緒にお城へ向かう事にしました。この子のお母さんもお城に向かったかもしれません。
此方達以外の人も大勢お城に避難していました。お城の広間には避難してきた人たちでごった返しています。
「それじゃあ、お母さんを探そう…です」
「……うん」
女の子の手を引いて広間を歩きまわります。見つかるかは分かりませんが、女の子を不安を取り除くためにも必要な事です。
「あっ! おかあさんっ!」
しばらく歩いていると、女の子がお母さんを見つけて走り出して行きました。良かった……見つかって。
「どうもありがとうございました」
「ありがとう、おねえちゃん」
お母さんは何度も頭を下げお礼を言って、女の子は手を大きく振って広間の奥へと向かいました。子供は笑顔でいるのが一番です。
女の子と別れ一人になると、途端に不安が頭をよぎってしまいました。他にも取り残されている子供がいるのでは? と。
そう思った次の瞬間にはお城を飛び出し町中へと戻っていました。取り残された子供がいないかを探しに……。
レオン視点
「……これは……どういう状況だ?」
シオンを迎えに城に到着した俺達の目に飛び込んで来たのは、大勢の人に囲まれ両手を合わせ拝まれているシオンの姿だった。何がどうなっているんだ?
「あっ……主様」
俺の事を見つけたシオンがとてとてと小走りで駆け寄って来る。
「一体何があったんだい?」
詳しい話を聞くと、親とはぐれてしまった子供と一緒に親を探したのだが、その後町に戻り救助者を探して回ったそうだ。それで多数の子供と老人を城まで誘導し、保護したそうだ。それで町の人達から感謝されていた……という状況だったらしい。それにしては何と言うか、仰々しいというか……まあいいか。
周りにいる町の人には、シオンは俺の妻でカルディオスの教会でシスター(巫女)をしていると伝え、家に帰る事にした。
自宅に戻り、今回の襲撃について家族で話し合いを行った。
「あの御老人は随分と自信家でしたわね」
「そうねぇ。しかも失敗しても何とも思っていなかったわねぇ。冷静そのものだったわぁ」
「恐らくですが、失敗する事も想定済みだったのでしょう。冷静というよりも冷徹でしょうか」
プリムラとソニアとローリエがキャプラーの性格について、そう論評した。
「今回戦ったキマイラは、前回よりも随分と強化されていましたね」
「……大きくて……回復してた……ズルい……」
「恐ろしいタフさだったさね。アタイもまだまだ鍛錬が足りないね」
マリーとリラとセフィラは巨大キマイラについて議論していた。
「しかし、彼等の研究資金は一体どこから調達しているのでしょうか?」
「そうね~。彼等が元々持っていた資産。それか……誰かが支援してるんじゃない~?」
「支援って言ってもさ、個人でそんなお金は出せなくない?」
「あれだけ体が大きかったらさ、エサもいっぱい食べるだろうしね」
「では一体誰からの支援…です?」
アリス、エリカ。桔梗、カトレア、シオンは彼等の資金源について話し合っている。
「であれば、答えは一つ。どこかの『国』が後ろにいる……でしょう?」
ヴェロニカがそう結論付ける。うむ、俺も同意見だ。
「奴等の研究は、言ってしまえば『兵器』の開発だ。野心を持った国なら喉から手が出る程に欲しがる技術だろう。それに奴等からすれば一から国を興すより、既存の国を乗っ取った方が速いだろうしな」
恐らく、ハイデス帝国の件もその一環だろうさ。
「後日、王宮に行く事になっている。そこで議題に上げよう」
とは言ったものの、恐らく対策は難しいだろうな……。




