一難去って、また一難
レオン視点
この状況を打破する方法は二つ。圧倒的な火力で全ての魔物を焼き払うか、絶対的な防御力で魔物の進攻を完璧に防ぐかだ。さて、どちらで来る?
「今回は守りの秘技を見せてやるわい。では行くぞ――『神の城壁』!」
臨界まで高まった魔力が解き放たれると、王都全体を光のドームが包み込んだ。おいおい……王都全体を覆う結界だと? 一体どれだけの魔力が必要なんだ? それとその莫大な魔力をコントロールする業……改めて『賢者殿』の凄さを目の当たりにしたよ。
空中にいる魔物の群れが王都の上空まで到達した。先頭のワイバーンが大きな口を開け王都に向かって火球を吐き出した! しかしその火球は結界に触れるとあっけなく消え去った。
続いて鳥型の魔物が王都に侵入しようと結界に向かって突撃を敢行する! だが結界に阻まれ魔物の侵入を防いでいる。
「うむ、これで良し……ん? どうしたのじゃ? ワシの顔をじっと見つめおって。ははぁん、さてはこのワシの美貌に思わず見惚れてしまったのか! はっはっは、愛い奴じゃのう」
「ええ、そうですね。凄まじい魔法でしたね」
この人とまともに受け答えする必要は無い。適当にあしらって戦闘に注力しよう。
今、俺の頭上では、何度も魔物が結界に突撃しその度に弾かれている光景が上演されている。これで当面の危機は去ったが、根本的な解決には至っていないか……さて、どうする?
このまま真下からチクチクと魔法で攻撃しても良いのだが、それでは日が暮れてしまうな。何か他に手立てはないものかとアイテムボックスの中を見てみると、
「これは……使えるかもしれん」
アイテムボックスの中から取り出したのは「飛翔のブーツ」だ。少し前にダンジョンで見つけた物だな。あの鑑定屋の話では、魔力を込めると空を飛べるという事だが……試してみる価値はあるか。
急ぎ今装備しているブーツと交換し、飛翔のブーツを装備する。感触を確かめる様に軽く動いてみるが、特に違和感は無いな。
「ぶっつけ本番だが、やってみるさ……いくぞっ!」
足に魔力を込め、空へ駆け出して行く。すると足の裏に見えない足場が出現する。その足場を利用してどんどん上へと駆け上がる! 空中を踏みしめるというのは初めての感覚だが、面白いものだな。
そのまま急速に魔物の群れに近付き、先頭にいたワイバーンを叩き落とした。
「グギャッ⁉」
俺の接近に気付けなかったワイバーンは情けない悲鳴と共に地面に叩きつけられる! 死んではいないだろうが、止めは下に居る妻達にお任せだ。
その勢いのまま魔物共をハエ叩きの要領で、次々と地面に叩き落とす。そこでようやく魔物共は俺の存在に気付き、目標を俺に変更し襲い掛かって来た!
「よーし、そのまま俺を追って来い!」
魔物の攻撃を掻い潜り、地表へとんぼ返りを決行する。大量の魔物を引き連れたままね。
「ようこそ地上へ。私達が精一杯のおもてなしをさせて頂きます!」
魔物を待ち構えていた妻達が一斉に攻撃を開始する。先鋒はマリーか。
「ようやく攻撃出来ますわね!」
「……魔法は……疲れる……」
「流石のアタイも空は飛べないからね」
「ウチのリングでも届かない高さだからねぇ」
「ですが、剣が届く位置に来たのであれば問題ありません」
「よーし、テンションあげあげでいくよ♪」
「う~ん……今後を見据えて~空を飛ぶ練習をした方が良いのかしら~?」
「……妾でも、その挑戦は無謀だと分かるわよ?」
前衛組は意気揚々と魔物を切り伏せていく。
「それじゃあ、おねぇさんは遠くの敵を狙いましょうかねぇ」
「では私は皆様の側面・背面の敵を中心に狙います!」
ソニアとアリスは引き続き魔法で攻撃する。前衛組が戦いやすいように。相も変わらずソニアの魔法は威力も制度も見事だ。しかし、心なしかいつもより気合が入っているような?
「拳が届く位置ならっ!」
「ボクの弓でも届かない高さはズルいぞ!」
臨時のパーティメンバーであるオリーブとユッカも元気に魔物を狩っていく。見ているだけというのはストレスが溜まるのだろう。その反動か。
高い位置というアドバンテージが無くなれば、文字通りの「烏合の衆」だ。殲滅するのにそれ程時間は掛からなかった。
「うむ。お主の嫁達は皆優秀じゃのう。ワシも楽が出来るというものじゃ」
かっかっか、と高笑いをしながら嫁達を褒める『賢者殿』。嫁達を手伝おうとせずにのんびりと寛いでいるが……まあ、あれだけの大魔法を放った直後だ、休んでいても文句は言えんか。
程なくして飛行魔物の群れは全滅した。だが先程の事もあるので、全員周囲を警戒し魔物の襲撃に備える。
「うわーーー⁉」
「な、何だ? あのバケモノは⁉」
「逃げろ逃げろーーっ!」
すると前線で戦っていた冒険者達が必死の形相でこちらに逃走して来たではないか。それにしても、バケモノだと? 俺は逃げて来た冒険者を捕まえてバケモノについて尋ねた。
「そのバケモノの特徴は?」
「ああ……色んな魔物がくっ付いたイカレタ見た目だった。ありゃあギルドで噂になってる『キマイラ』とかいうバケモンに違いねぇ」
ここでキマイラの登場か。あれ以来目撃情報が無かったから失念していた。それにしても、逃げて来たのは全員冒険者だ、
「兵士達は?」
「前線に残ってバケモンと戦ってるよ」
何だと?
「レオン殿! 父上達の援護に向かいましょう!」
ローリエに言われるまでもない。急いで現場に向かおう。




