王都・強襲
晴天に恵まれたある日、この日が休みであったシオンも含めた家族全員で王都へやって来ていた。王都で買い物デートという奴だな。ついでにジャックにも用事があったので丁度良かった。
買い物をしつつジャックの店にも寄り用事を済ませ、そろそろ帰宅しようかと考えていたその時だった、
カーンッ! カーンッ! カーンッ!
耳をつんざく鐘の音が王都中に響き渡る。かつてカルディオスの町でも耳にしたこの鐘の音は……まさか⁉
「レオン様! この鐘の音は魔物の襲撃を知らせるものです!」
「はい。十年前の事を教訓にして国中の町に設置された物です。それが鳴ったという事は……」
アリスとローリエがいち早く鐘の音に反応した。やはり魔物の襲撃か。しかし、何故王都に? 王都の周囲は魔物の数が少ない。魔物が自然と王都を襲う可能性は極めて低いと言わざるを得ない。
「この襲撃は、何者かによる差し金の可能性が高い」
十中八九、例の「先代魔王の信奉者」だろうがな。
俺のこの台詞で、妻達の顔つきが緊迫したものに変わる。全員、戦闘モードに移行したようだな。
鐘の音を聞いた町の人々が思い思いの場所に避難していく。自宅、店の中、城に向かっている人もいるな。
「シオンは城へ避難していてくれ。戦闘が終わったら迎えに行くよ」
「はい…です。皆様、御武運を…です」
戦闘要員ではないシオンに城へ向かうように指示する。残念だが彼女は足手纏いになってしまうからな。本人もそれは理解しているのだろう、悔しそうな顔をしながらも素直に頷き、城へと走って行った。
さて、ここから近い馴染の店は……ユニスの店か。俺達は急いでユニスの店に向かった。何の為に? 勿論、着替える為だよ。俺達の今の格好は例の制服だ。戦闘用の防具に着替えないと話にもならない。
ユニスに事情を説明し、店内を使わせてもらう。急いで着替えを済ませ、ユニスに礼を言い再び町中へと飛び出した。
「先程の音は西門の鐘です。西門に向かいましょう」
そうローリエが教えてくれた。音によって方角が分かるようにしてあるのは凄いな。お陰でスムーズに現場に向かえるよ。
西門に到着すると、既に大勢の兵士と冒険者が集合していた。その中に見知った顔を発見、声を掛けてみるか。
「こんにちはオリーブさん、ユッカさん。王都が襲われるのは珍しいのですか?」
「こんにちは、レオンさん。そうですね、王都で襲撃に会うのは初めてです」
「やっほー、レオンくん。キミも大変な時に居合わせたね」
平時と変わらない態度でそう返す二人。元気そうで何よりだ。それにしても、二人共落ち着いているな。慣れているのかな?
二人とその様な会話をしていると、兵士の一団の中から一人の男が前に進み出て来た。あれは……ノーバス伯爵だ。
「王都の危機に集まってくれた諸君、まずは礼を述べさせてくれ。これ程の勇士がこの国に居る事を、私は誇りに思う。今回の防衛に際し、国から十分な褒賞を約束しよう。諸君等の力を存分に示して欲しい!」
「「「うおおーーーーっ!」」」
ノーバス伯爵の訓示を受けて、周囲の兵士と冒険者が雄叫びを上げる。士気は上々、これなら大丈夫だな。
「魔物が来たぞっ!」
斥候役として前に出ていた冒険者が大声を上げながら戻って来た。
「うん? 数が少ないな……それに質も低そうだ」
遠目に見える魔物の群れを見た感想だ。油断は禁物だが……。
兵士が右側に、冒険者が左側に陣取る。迎撃の準備は万端。そして遂に戦闘が開始される。




