再生の兆し
それから二十日後。建物が完成したとの連絡があり、全員でその建物を見に行く事にした。
初めに訪れたのは教会。町の中心部に近い場所に建てられていた。うむ、立派な教会ではないか。
「おお……この町に再び教会が……」
俺達が教会に着いた時には、既に多くの町民が教会の前に集まっていた。その中に居たお年寄りが、その様な事を呟きながら熱心に祈っていた。
「昔は……この町にも……教会が……あった……」
少し前にリラから聞いていたのだが、かつてはこの町にも教会があったそうだが、十年前に起こった『大氾濫』の際に破壊され、そのまま放置されていたそうだ。日々を生きるのに精一杯で教会を立て直す余裕など無かっただろうしな、仕方のない事だ。
本来の目的からすれば教会は建てなくても良かったのだが、その話を聞いていたので、ついでとばかりに建てようと思ったのだよ。この世界の人々は教会を心の拠り所にしているし、あって困る物でもないからな。
中に入ると、王都に会った教会にも劣らない素晴らしい内装と広さのある造りだ。うむ、見事な仕上がり具合だ。
次は孤児院だ。教会の近くに建てられた木造二階建ての建物だ。一部屋に二~三人暮らせる設計にしてある。年長者に年少組の世話をしてもらう為の相部屋だ。ここも問題ないな。
最後に町の外れに建てられた工場に向かう。中は広々としていて、作業机と椅子が備え付けられている。その数は五十台。その机の上にジャックから買い付けたミシンを設置していく。これで準備は整った。後はここに子供達を連れてくるだけだ。
俺はソニアとシオンの二人を連れ、王都に向かった。まずは指導員として招くユニスに会いに行く。
「はい。準備は出来ていますよ」
そしてユニスを加えて孤児院へと赴く。
「子供達の事を宜しくお願いしますね」
「はい。お任せ下さい」
シスターに挨拶をして、カルディオスの町へと帰還する。その際に子供達もシスターに別れの挨拶をするが、中には泣き出す子が何人もいたよ。
何とかシスターが子供達を宥めてくれた。泣く子共を見ていると、何故か俺が悪い事をしている様な気がしてしまうな。
カルディオスの町に帰って来て、手始めに子供達に町の中を案内する。子供達はギルドを見て大はしゃぎ。教会を見て大はしゃぎ。工場を見て大はしゃぎ。孤児院を見て大はしゃぎと、元気一杯に町中を歩き回った。
何と言うか……学校行事を引率する教師の様な気分を味わったよ。俺達を見る町民の目が優しかったのが救いだった。
「では、後は私にお任せ下さい」
この後は、年長組は工場でユニスの指導を受ける。そして年少組は教会でシオンが面倒を見るという事に決まった。
「最初は幾ら失敗しても構わない。自分達のペースで上達してくれればそれで良いさ」
緊張で顔が強張っている子供達にそう声を掛け、俺達は家に戻る事にした。
ちなみにユニスはしばらくこの町に滞在するそうだ。既に宿は取ってある、勿論『そよ風亭』だ。宿代は俺が負担させてもらった。元は俺の我儘だからな。
家に帰る前にギルドに寄り、仕事斡旋の案内を出してもらった。内容は当然、工場での服の製作だ。ギルドで受付をしていたハンナ曰く、
「この条件なら人が殺到しそうですね」
との事。なにせ給金を弾んだのからな、そうでなくては困るさ。定員は二十名を予定している。
夕飯の時間になる。シオンは子供達と夕飯を食べるそうだ。ああ、子供達には給料の前払いとして金を渡してある。その金で屋台から飯を買っても良し、食材を買って来て自炊するも良し、子供達の自由意思に任せた。どうやら今日は食材を買って自分達で料理するようだ。
この計画が波に乗るのは早くても数年後だ。気長に頑張るとしようかね。
シオンの生活は、朝に教会に行き子供達の面倒を見る。そして夜になったら家に戻って来るというルーティンになるそうだ。そして数日に一度の感覚で休みを設けて、俺達家族と一緒に過ごす時間を作るそうだ。シオンが休んだ日は、近所の皆様が協力して子供達の面倒を見てくれる事になった。町の人達の協力に感謝だ。
シオンが子供達の世話をしている間に、俺達はしっかりと金を稼がねばならないな。この事業が軌道に乗るまでは赤字を垂れ流す事になるだろうしな。
その様な訳で明日はダンジョンにでも行こうかと思っていたのだが、先日桔梗から聞いた『交易都市』の事を思い出した。
そこで催されている「オークション」に興味がある。売らずに取って置いた等級の高い魔石を出品してみるのも面白いか?
以前に王都ギルドで聞いた魔石の買い占めの調査も出来る事だし一石二鳥の策だな。よし、それでいこう。
夜になりシオンが帰宅し、皆で風呂に入りその後、寝室でたっぷりと愛し合いゆっくりと眠りについた。




