冒険の合間の小噺
ローリエ視点
「どれも簡単な依頼ばかりですね」
今日は王都へと向かったレオン殿達や、家に残ったマリーさんとアリスと別行動です。
私達のグループは、庭で鍛錬をした後にギルドで依頼をこなそう、という事になりました。
先日行われた『闘技大会』でのレオン殿の雄姿を見て触発されたのです。あれを見て奮い立たない武人はいません。
とは言えこのカルディオスにはダンジョンがありません。今の私達には物足りない感じの依頼内容ですね。
「良い事ではありませんか。それだけこの町が平和という事でしょう?」
確かにプリムラの言う通りですね。平和である事は素晴らしいで、それに落胆するとは、民の命を預かる身として失格ですね。
「……森で……魔物を……狩る……」
と言うリラの意見を採用し、近場にある森での討伐依頼を受ける事にしました。
森での戦闘は連携を意識した物になりました。私達は基本的に集団で戦闘を行います。お互いの動きを把握するのは重要ですからね。
「およ? 前方に複数の人の気配があるね。同業者かな?」
索敵を担当しているキキョウから、そのような報告がありました。すると前方に四人組の冒険者の姿が確認出来ました。しかし、
「随分と頼りない奴等だねぇ……」
四人組の冒険者は頻繁に辺りを見回し、落ち着きのない雰囲気でした。それに見た目はとても若いですね。少年と言っていいでしょう。装備も、普段着に毛が生えた程度の防具、手作り感満載の武器。セフィラが呆れた声を出すのも頷けます。
「危なっかしいですわね」
少年達は見つけたゴブリン三匹と戦闘になりました。しかし四人がかりでも大苦戦、数分にも及ぶ激闘の末、やっとの思いで倒す事に成功しました。ですが全員疲労困憊の状態ですね。
「あの子達、放っておいていいのかしら~?」
エリカの心配はごもっともです。正直に言って後二、三戦すれば全滅するでしょう。さて、どうしましょうか?
そう私達が考えていたら、リラが無言で彼らに近付いていきました。それを見て私達も慌ててリラの後を追いました。どうするつもりなのでしょう?
「はぁはぁはぁ……あん? なんだよアンタ。俺達に何か用か?」
リーダーらしき男の子がリラに向かってそう言いました。精一杯の虚勢を張っているのでしょうが……ふふふ、男の子ですね。
「……もう無理……今すぐ……帰る……」
「な、何だと⁉ いきなり現れて、勝手な事言うなよ!」
「…………」
「うっ……」
「…………」
「うぅ……」
リラは、男の子の言葉に何も言い返さず、ジッと見つめるだけです。ですがリラから放たれる無言の圧力に、男の子は委縮してしまっていますね。
「あなた達に……ここは……まだ早い……」
「……」
リラの指摘に男の子達はただ立ち尽くすだけで、何も言い返しませんでした。自分達でもリラの言葉が正しいと理解しているのでしょう。
「ねえ……この人の言う通りだよ。もう帰ろうよぉ……」
四人組の内の一人が、涙ながらにリーダーの少年にそう訴えたのです。体も震えでいますね。
「馬鹿野郎! なに言ってんだ⁉ 俺達の冒険は始まったばっかりだろうが!」
しかし、リーダーの少年は頑なに撤退を拒否します。その気概は買いますが、実力が伴っていないですね。現に、
「「「ギャ! ギャ! ギャ!」」」
倒したゴブリンの血に誘われて、ゴブリンを始め様々な魔物が新たに集まって来ましたね。それと大声を出すのも駄目です。魔物に自分達の位置を教える様なものですね。
「ど、どうしよう……」
「こんな数……倒せっこないよぉ……」
「ボクたち……ここで死んじゃうの?……グスン」
「あ……諦めるんじゃねぇ!」
少年達はこの状況に絶望して泣き出してしまいました。リーダーの少年は気丈に振舞っていますが、恐怖で足が震えていますね。
「……そこから……動かない……」
「ワタクシ達が守ってさしあげますわ」
「このまま放っておくのもあれだしね♪」
「ウチ達がいて運が良かったね」
皆さんが武器を構え、魔物と対峙します。勿論、私も。
「では……行きますっ!」
集まった魔物を全滅させ、少年達を伴ってギルドへと帰還しました。
「この馬鹿野郎共がっ! あれ程森には入るなと言っただろう!」
報告を聞くや否や、ギルド長のライアン殿の雷が落ちました。どうやらこの子達は、比較的安全な草原で狩りをする約束だったようです。しかし早くランクを上げたいが為に、森での狩りに切り替えたそうです。言い出しっぺは、やはりリーダーの少年だったみたいですね。
「色々と迷惑をかけたね。今回は助かったよ」
ライアン殿に礼を言われ、私達はギルドを出て、家に帰る事にしました。後で聞きましたが、あの少年達はたっぷりと説教された上に、二十日の雑用を命じられたそうです。
今回は運良く私達がいたから助かりましたが、次はありませんからね。しっかりと反省して下さい。




