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東門の戦い

 リラ視点

「……思ったよりも……少ない?」

 東門に到着した。周りには兵士と冒険者がいたが、兵士の数が少ない気がする。冒険者はそれなりの数いるけれど。

「恐らく、西門の方に兵を多く配置して、こちらは冒険者を多く配置したのでしょう。東門の方が襲撃の報告が遅かったので、こういった配置になってしまったのでしょうね」

 プリムラがそう説明してくれた。成程、言われてみれば納得だ。

「おうおう、随分と沢山の魔物がやって来てるさね」

 遠くから押し寄せる魔物の群れを見て、セフィラがそんな呑気な事を言った。

「う~ん……でもさ、見た感じ大した事無い奴ばっかだね?」

「油断禁物よ~。どんなに弱くても、数が集まれば脅威になるのよ~?」

 敵の強さを軽んじて軽口を叩くキキョウとそれを嗜めるエリカ。うん、油断は絶対に駄目。

「皆さん、援護はお任せ下さい」

 うん。アリスが後ろに居るから、私達は自由に戦える。

「しかし……こりゃあアタイ達が前に出ないとダメそうだね」

 周りの兵士や冒険者は迫って来る魔物の群れを見て腰が引けてしまっていた。セフィラの言う通り、私達が頑張らないと駄目そう。

「……じゃあ……行くよ……」

 城門に取りつかれると面倒だから、こちらから仕掛けていく。

 東門の周りは木々に覆われた森林地帯だ。出現する魔物も森の中で見る奴が多い。気を付けるのは「アサシンタイガー」くらいかな?

「あなた達を城門に近付けさせはしませんわ!」

 真っ先に突っ込んだのはプリムラだ。こういう時のプリムラはとっても強い。

「おっ? 大物発見。アイツはアタイが頂くよ!」

 あ、アサシンタイガーにセフィラが襲い掛かった。うん、一撃で潰しちゃった。

「数が多いと確かにめんどーだね」

「そうね~。それに今回は後ろも気にしなければいけないしね~」

 周りの魔物を手当たり次第に切り刻むキキョウとエリカ。楽しそう。

「……後ろは……私と……アリスに……任せて……」

「はい。城門には取りつかせません」

 レオンから任されたリーダーの役目は、しっかりと果たす。だから今は後ろで様子を見る。

「……押されてる……?」

「そうですね。少しずつ前線が下がっています」

 パーティの皆は頑張っているけど、兵士と冒険者の動きが鈍い。このままでは……。

「我が国の兵士と冒険者が不甲斐なくて済まぬ。その分、私が働く事で許して欲しい」

「……誰?」

 いつの間にか、隣に知らない獣人の男が立っていた。何者だろう?

「うむ、私はこの国の王で名をモーガンと言う。よろしく頼む、冒険者のお嬢さん」

「……王様?」

 どうやらこの人は王様らしい。じゃあ、

「ここにいる……兵士と冒険者……どうにかして……」

 偉い人が来たので、丸投げした。

「うむ。確かにこれは酷いな。では少しばかり前に出るとしよう」

 そう言って王様は魔物の群れに突撃していった。

「恐れるなっ! お前達が敗走すれば力なき民が命を落とすのだぞ! 欠片でも勇気が残っているのなら、私に続けっ!」

「獣王陛下に続け! 遅れを取るな!」

「「「おおーーーーっ‼」

 王様に続く形で兵士と冒険者が前線に向かって行った。これで何とかなるかな?

「ほうこーく。魔物の数が大分減って来たよ、リラっち」

 前線に居たキキョウが、私の傍に来てそう報告してくれた。うん、ここが勝負所かな?

「ふむ……何かするつもりだな?」

 また、いつの間にか隣に立っている王様。でも、丁度良い。

「……私が合図したら……全員退避させて……」

「了解した。いつでも良いぞ」

「……ん」

 私は魔力を高めながら少し前の事を考えていた。

 初めてレオンと手合わせした時、レオンに『吹雪』の魔法を使ったが全く効果が無くて、あっさりと負けてしまった。その後レオンに何が駄目だったのかを聞いたら、

『吹雪を起こす魔法、それ自体は凄く良い魔法だと思う。だが、それだけでは駄目だ。吹雪に慣れた者や「眼」以外を使って周囲を感知する事が出来る者なら目くらましにすらならん。実際、俺がそうだったようにな。だからそこに何か一つ、リラの「独自性」が加われば一気に化けるだろうさ』

 と言われた。独自性……それを家族の皆で何度も話し合った。そして完成したのが、

「……今!」

「よし。全員、直ちに下がれ! 強烈な魔法が来るぞ!」

 その王様の大声を聞いて、味方全員がこちらに下がってきた。家族の皆も勿論一緒に。

「……『氷雪刃』!」

 私が魔法を唱えると、辺り一面が猛吹雪になった。ここまでは同じ。

 そして吹雪が魔物の群れを包み込んだ瞬間に、舞い散る雪を『刃』に変形させる!

 刃となった雪が魔物を無慈悲に切り刻む。うん、これが私の答え。ただこの魔法を完成させるまで物凄く大変だった。

 一度展開した魔法を、別の形に変えられるまでに何度も失敗した。その度にレオンやソニアが優しく教えてくれた。嬉しかった、きっとこれが『家族』なんだろう。

『氷雪刃』による吹雪が収まると、目の前には体を切り裂かれ凍結した魔物の死体があちこちに散乱していた。ついでに周りの木もボロボロになってしまった。これがこの魔法の弱点。周りに何も無く広い場所じゃないと危険で使えない。ただ今回は緊急という事で許して欲しい。

「木が……ボロボロに……なった……ごめんなさい……」

 だけど、これは私がやった事。謝らないと。

「うむ。見事な魔法だった。周りの被害については気に病む必要は無い。人の命に比べれば大した事はない」

 王様が許してくれた。良かった。

「ガオォォォォォアッ!」 

 ほっと一息付いたのも束の間。森の奥から大きな獣の咆哮が轟いた。遂にボスの登場だ。

「あれは……『キングタイガー』か? 彼奴の縄張りは森の奥深くな筈だ。こんな人里に近い場所に現れるとは……」

 キングタイガー……聞いた事ある。アサシンタイガーが成長して大きくなった特殊個体だったと思う。

 基本的に森の奥まで行かなければ出会わない、普通の人には害の無い魔物だった筈。

 それが目の前にいる。アイツのせいで多くの人が命の危険に晒された。残念だけど倒さなきゃいけない。

「それで、どうするのかね? 彼奴は手強いぞ?」

「……大丈夫……私の……家族がいる……」

 正直に言って私はもう疲れて動けない。だからアイツは皆に任せる事にする。

「家族か。それはキングタイガーの前に陣取っている者達の事かね?」

「……そう……頼れる……家族……」


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