状況を打破する一手、それは……?
何か策は無いか……魔物を槍で貫きながらそんな事を考えていたその時だった。
「何をやっているっ! それでも栄えあるサンテキア王国の兵士かっ!」
城門の上から敵の密集地に何者かが飛び降りて来た! 誰だ? こんな無謀な事をする奴は?
「おお! 王子殿下だっ!」
「ラキウス王子様!」
飛び降りてきたのは、身軽な装備を身に纏った若い犬の獣人だった。それよりもだ、今あの兵士達は何と言った? 王子だと?
「はぁっ‼」
いきなり戦場に乱入して来た王子(仮)が見事な格闘術を用いて魔物を屠っていく。そして敵を蹴散らしながら俺の方に近付いて来た。
「待たせたな皆の者っ! 加勢に来たぞ!」
ふむ、近くに来た王子(仮)を観察してみると、精悍な顔立ちに筋肉質な身体つき。それと先程から見せている格闘術、中々に頼もしい青年ではないか。
「この様な体勢で申し訳ありません、王子殿下。私はレオンと申します。そして不躾ではありますが、殿下にお願いが御座います」
「おう。何だ? レオンとやら」
「後方にいる兵士の方々を指揮して、前線を押し上げて頂きたいのです」
この国の人間ではない俺には不可能な仕事だ。カトレアの舞いと王子が来た事により兵士の士気が上がっている今がチャンスなのだ。この機を逃してはならない。
「……そうだな。他国の人間に最前線を任せるのは、この国の王子として忸怩たる思いだが……分かった。俺は後ろに下がろう」
「感謝します。それと、頼りにしていますよ?」
この難局を打破するには貴方達の力が必須なのだ。
「うむ。任せておけ。それと、お前も無茶はするなよ?」
そう言って王子は兵士の指揮を取る為に、後ろへ下がっていった。
「では……一気に攻めるとするか!」
俺が更に殲滅速度を上げると、マリーとローリエも俺に合わせるように速度を上げる。
「勇敢なる我が国の兵士と冒険者よ! この国の危機にただ黙って見ているのがお前達の役割か? 我らが祖国を守るのは我らの役割な筈だ! 客人に後れを取るな! 今こそその武勇を存分に示せっ!」
「「「うおぉぉぉぉぉっ‼」」」
王子の激を受け、兵士達が前へ前へと突き進んでいく。見事な統率力ではないか。これならこの群れの『主』を倒しに行けるか。
前回、カルディオスで起こった『大氾濫』も「サイクロプス」という『主』が存在した。ならば今回も同じ様な存在がいる筈だ。そいつを見つけ出して倒せれば、この群れも烏合の衆となり壊滅出来る。
突然だが、この西門周辺は見渡しの良い平原が広がっている。そして遠くに険しい山々を望む事が出来る。何が言いたいかと言うと、そんな平原で『主』の様な特殊な魔物を見逃す筈が無い。そう思って遠くまで見渡しても、影も形も見えないなんて……。
ひょっとして『主』なんていないのか? そう思い始めた時だった。周囲に耳障りな虫の羽音が鳴り響いたのは。
ソニア視点
前線が上がるのに合わせて、私とカトレアもそれに合わせて前に進んで行く。勿論、魔法で魔物を倒しながらね。それにしても、旦那君が随分と張り切っているみたいね。こちらに向かってくる魔物の数が大分減ったわ。
「見事な魔法の腕だ。是非とも俺の部下に……いや、妻に迎えたいな」
私達の近くで兵士さんの指揮を執っていた王子様がそんな事を言って来たわ。
「ふふふ、嬉しいお誘いだけどぉ、私達はあそこで戦っている素敵な旦那様の奥さんなのぉ」
「そうか……それは残念だ。それとレオンとか言ったな、あの者も凄まじい強さだな。世界は広い、これ程の実力者が沢山いるのだから」
旦那様を褒められるのは嬉しいわね。気分が良くなってきたので魔法を放つペースを上げた時、
「なぁに? この嫌な感じの音は?」
ブゥン、ブゥンという虫の羽音かしら? 時間が経つにつれどんどん大きくなってきたわ。
「あれは……『クイーン・フロストビー』か⁉ アイツがこんな場所まで出て来るなんて!」
音のする方向――空を見上げた王子様がその魔物を見て驚いているわね。
「珍しい魔物なのぉ?」
「ああ。アイツは北西の山の山頂に「巣」を作るのだが……今まで一度たりとも、山頂から下りて来た事がないのだ。恐らく今回の出来事、アイツの仕業に違いない」
どうやら今回の首謀者が現れたようね。う~ん……旦那君ならきっとアイツを倒そうとするわよね? なら私達も援護に行かなきゃ駄目よね?
「カトレア、旦那君の所まで駆け抜けるわよぉ」
「ふぇ? そ、ソニア⁉ 待ってよ~」
周りの魔物は魔法で突風を発生させて吹き飛ばす。このまま一直線に旦那君を目指すわ。
「……随分と勇ましい女性達だな」
後ろで王子様が何かを言っていたが、それよりも旦那君の元に行くのが優先ね。待っててね? 旦那君!




