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久しぶりの「嫁」召喚

 レオン視点

 俺はギルドにある本を読み、北の国について調べていた。

 本によると、北の国は「サンテキア王国」という名前で、自然豊かで風光明媚ふうこうめいびな場所が多い国だそうだ。それと獣人が多いとの事だが、他の種族もそれなりの数住んでいる。

 大きな特徴として、年に一度「闘技大会」を開いてその年で一番強い者を決めよう、というのがある。勿論、国外の人間も参加可能だ。

 これは獣人が強い者を尊ぶという考えがある為だ。開催日当日は周辺諸国から沢山の人が訪れ、お祭りの様な賑わいを見せるそうだ。例年通りならそろそろ開催される頃合いだな。

 その他には、胡椒を始めとするスパイスが充実しているそうだ。その所為か、北の国の料理は辛い物が多いのだとか。

 そして長い間、戦争をしていないという記録が存在している。

 ここまで調べてみて、彼の国は今更戦争などしない、というのが俺の結論だ。

「後は……実際に現地に行ってみるしかないかな?」

 十分に情報は得られたな。では、帰るとしよう。愛しの妻が待つ我が家に。




 家に帰ると、丁度二階から降りてくるマリーとアリスとエリカと鉢合わせた。手には布巾を持っている。という事は、

「三人は家の掃除をしていたのか?」

「はい。丁度良いと思いまして」

「そうか。ありがとうマリー、アリス、エリカ」

 感謝の言葉を述べると、マリー達は嬉しそうに微笑んだ。しっかりと感謝を言葉にするのは大切な事だよな。

 夕飯の時間まで、俺はまったりとした時間を過ごした。たまにはこういう時間も良いな。

 そして夕飯の準備が始まる前に、先送りにしていた一件を話し合う。

「そろそろ『召喚権』を使おうと思うのだが、どうだろう?」

 少し前に付与されたモノだ。近頃忙しくて後回しになってしまったが、いい加減どうするか決めるべきだろう。

「旦那様が使い時だと思った時に使うのが宜しいかと」

 マリーがそう言うと、妻達全員が頷いた。それに心なしか喜んでいるような……確かにその通りだが……何故皆さん喜んでいるのかな?

「戦力の増強は必要不可欠ですわ。現状の戦力で十分とは言い難いですしね」

 プリムラの言い分はごもっともだ。敵との戦力差がギリギリの戦いというのは博打を打つのと何も変わらんからな。

「……それと……わたし達も……もっと力を……つける」

 今いる妻達のパワーアップも重要だな。リラはいい所に目をつけるよ。

「そうよねぇ。おねぇさん的にも、もう少し頑張りたいわねぇ」

「現状アタイ達は負け続けてるもんだしね」

 ん? 何か話の内容がおかしくなってないか?

「はい。レオン様に満足してもらうには、まだまだ人数が足りませんね」

「悔しいですが、アリスの言う通りですね。自分が不甲斐ないばかりに……」

 アリスとローリエの話で、大体の事は分かった。まさか……?

「あーし達さ、気が付いたら全員気絶してるもんね」

「レオンちゃんの腰振りに~、あっという間にヤラれちゃうものね~」

 まさか夜の夫婦生活の事を言っているとは……。いや、まあ、ちゃんと魔物との戦闘についても考えてくれている筈だしな……考えているよな? いて欲しいなぁ。

「……コホン。気を取り直して『召喚』を始めようと思う。ガーベラ」

『了解しました。』

 ガーベラをノートパソコンに変態させ。入力フォームを起動する。

 さて、今回はこれといった条件はないな。ならばいっその事、

 :年齢――若い、但し成人に限る

 :職業――不問

 :容姿――端麗

 :スタイル――抜群

 :その他、備考――不問

「これでいいな」

 今回の『召喚』は敢えてランダム要素を強めにした。何故だか分からないが「こうした方が良い」という予感がするのだ。

「では『神域』へ移動しようか。ガーベラ頼む」

『了解。『神域』への転送を開始します。』




 相も変わらずの無駄に光る演出を経て、神域へとやって来た。毎回眩しくて嫌になる。サングラスでもあれば便利なのだが。

(この光は物理的な光じゃないんで、サングラスなんかしても無駄だよ~)

 コイツ……。いちいち一言多いんだよ。

 俺は『神域』内に置きっぱなしとなっているテーブルに着き、ガーベラをテーブルの上に置いた。

「それでは『召喚』を開始する」

 そう宣言して俺は「召喚」ボタンをクリックした。この瞬間は何度体験してもワクワクが止まんよ。

『検索中……検索中……』

 いつもより時間がかかっているな。やはりもう少し条件を設定するべきだったか?

『……ヒットしました。『召喚』を開始します』

 どうやら無事に見つけられたみたいだな。次回からは条件に関して、もう少し練った方がいいな。

 これまたのなじみとなった召喚演出を経て、一人の女性が目の前に現れた。

「あれ? ここはどこ? ウチは確か街道を歩いてた筈なんだけど……?」

 現れた女性は、健康的に焼けた小麦色の肌。黒髪が肩口で切り揃えられ、頭や腕、足と全身に装飾品を身に着け、ビキニの水着の様な服(?)を着ている。そしてそのビキニから、今にも零れ落ちてしまいそうな程の大きさを誇る爆乳。

 それらの特徴から、彼女は「踊り子」だろう。珍しいな。

「驚かせて申し訳ありません。私の名はレオン、貴女を此処に呼び寄せた者です」

「はあ……えっと、ウチの名前はカトレア。それで? ウチに何か用なの?」

 少し動揺しているみたいだが、思ったよりも冷静だな。とはいえ警戒はされているみたいだ。まあ、当然だな。

「少々込み入った話なので、是非座ってお聞きください……マリーお茶の準備を頼む」

かしこまりました」

 以前に出したティーセットを使いマリーが紅茶を入れてくれる。この空間は時間が停止しているので、紅茶は温かいままだ。当然鮮度も落ちていない。便利だよな、何とか魔法で再現出来ないものかな?

「どうぞお飲みください。ああ、別に怪しいモノは入っていませんよ」

 彼女の警戒心を解く為に、最初に俺が紅茶を口に含む。うむ、美味いな。

「……」

 その様子を見て、恐る恐る彼女もカップに口を付ける。

「あっ、美味しい……」

 彼女が紅茶の味に驚き、そして微かに笑顔を見せてくれた。流石はマリーの淹れてくれた紅茶だ。これで緊張も警戒も少しは解けてくれたかな?

「では、改めてお話させて頂きます。実は……」

 俺は彼女にこれまでの経緯を全て語った。自称『神』の依頼。それを遂行する為に、異世界に来た事。それにこの世界で起こった事件についても話しておいた。

 俺が話している間、彼女は俺の顔をじっと見ていた。とても力強い瞳だ。その瞳で何を見ている?

「……という訳です。どうでしょう? 共にこちらの世界に来て頂けませんか?」

 説明を終えると、彼女は二、三回と軽く頷いた。ふむ、感触は悪くなさそうだが……どうだ?

「大変だったんだね。でもさ、ウチが居て何か手伝えることがあるの?」

「はい、それは大丈夫でしょう。少なくともカトレアさんは武術の心得があるようですしね」

「えっ? 分かるの?」

「ふふふ、毎日妻達を見ていて、分かるようになりましたよ」

 俺の嫁さん達は武闘派揃いだからな。普段からその立ち振る舞いを見ていれば、それ位は分かるようになるというものだ。

「仲が良いんだね。じゃあさ、そんなに強い奥さんがいっぱいいるんだから、もう奥さんは要らないんじゃない?」

「残念ですが、これでもまだ足りないと思っています。妻はこれからも増えていくでしょう」

 俺の目的である『神』の依頼達成。その難易度から考えても、現状の数では足りないだろうな。最終的な人数は分からんがね。

 無論、最終的には各国に協力を仰ぐつもりだが、それまでは信頼出来る仲間と共に活動する必要がある。つまり「夫婦」というのは非常に分かりやすい「信頼の形」でもあるのだよ。

「そうなんだ……ひょっとして貴方、どこかの国の王様だったりするの? こんなに奥さんがいる人、他にいないでしょ?」

「違いますよ。これは妻達と互いに心を通わせた結果ですね」

 彼女の疑問に俺は苦笑しながら答えるしか無かった。傍から見れば、王侯貴族の結婚と近い所はあるからな。愛し合うのが目的か、子孫を残すのが目的かの違いだな。

「確かに、後ろにいる奥さん達を見ても、皆幸せそうだもんね。きっと貴方の奥さんになれば、ウチも幸せになれるんだろうね」

 そう言って俺に柔和な笑顔を向けるカトレア。それはつまり、

「じゃあ最後に大切な事を聞いていい?」

「どうぞ、何でも聞いて下さい」

「ご飯は沢山食べられるよね?」

 ……ごはん? ああ、飯の事かな?

「勿論、毎日お腹いっぱいに食べられますよ?」

「本当っ? お代わりも?」

「好きなだけ食べてもらって構いません」

「好きなだけっ? 何回もお代わりしていいの?」

「幾らでもどうぞ」

「うんっ! 分かった! ウチ、貴方のお嫁さんになるね」

 そんなあっさりと……い、いや喜ばしい事ではないか。決め手が「飯」というのが以外ではあるけれど。

「ウチね、小さな旅芸人の一座で踊りを担当してたんだけど、そんなに稼ぎが有った訳じゃないからお腹いっぱい食べるのが難しくて……ね」

 そうだったのか……それは辛かっただろう……ああいや、それよりも聞かなければいけない事があったな。

「そ、それでは、カトレアさんはどの様な方法で戦闘を行うのですか? 見た所、武器等は見当たりませんが?」

 事前に彼女の戦闘能力を把握しておきたい。

「ウチは「これ」を使うんだ」

 そう言って彼女は身に着けていた『腕輪』に魔力を込めた。すると腕輪は次第に大きくなり、真ん中に穴が開いた金属製の円盤の形になった。外側には「刃」が付いているな。これは「円月輪」というやつか? 非常に珍しい武器だ。

「これを……こうするんだよっ!」

 カトレアが気合を入れて円月輪を遠くへ投擲した。円月輪は空中で自在に動き回り、最後はカトレアの手元に戻ってきた。これは彼女が自分で操っているのか?

「っと、こんな感じかな? どうだった?」

「ええ、素晴らしい技量ですね。頼りにしていますよ」

 俺としては文句の付け所が見当たらないな。セフィラが何も言わないという事は、戦闘に関しては問題無いだろう。

 そして順番に妻達と挨拶を交わしていく。皆笑顔でカトレアを迎えてくれているな。

「カトレア。これから俺達は夫婦だ。お互いを支え合い共に幸せになろう」

「うん。え~っと……こういう時は確か……『末永く宜しくお願いします』……だっけ?」

「ああ、それで合っているよ」

 俺はカトレアを優しく抱き寄せて、口付けを交わした。カトレアは一瞬「ビクン」と体を震わせたが、直ぐに俺の腰に手を回し情熱的な抱擁を返して、長い時間俺の唇の感触を楽しんでいた。

「よろしくね、ご主人君」

「うむ。では戻るとするか。ガーベラ、頼む」

『了解です。転送を開始します。』

 おや? 今回は非常に平和的に終了したな。今後もこうだと助かるのだが……難しいだろうなぁ。


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