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杜の国の王〜この子を守るためならなんだって〜  作者: メロのん
第1章 安住の地を求めて
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第68話 不穏な気配

「すごいすごーい!うみだー!!」


「きれい…」


「これが海…大樹だけでなくこんな所があったとは…」


「「「「「クァーーーーー!!」」」」」


 はははっ、約束通りみんなで海に来たがゾンとルア、巨人族は海の存在に驚き、ヨタドリたちは海の存在に喜んでいる。それぞれ反応に差はあれど海という存在に感情を昂らせている。


 僕もこの光景を見るのは2度目だがそれでもかなり興奮している。快晴の今日、太陽の光が反射してキラキラと輝く水面。さらにはまるで自分の意思で動いているのかと思うような波の動き。海は僕たちにこの世の自然の広大さを体感させてくれる。


 今ばかりは海を自由に泳げるヨタドリたちが羨ましい。この広大な海をまるで鳥が大空を羽ばたくように自由に泳ぎ回っているその姿は確かに鳥類と言われても納得だ。


「いいなあー、僕も泳ぎたい!」


「ゾンの気持ちは分かるがさすがに今は許可できないな。魔物がいる危険性もあるし、それ以外にも危険が潜んでいる可能性もある。だがいつか僕たちも海を泳げるように慣れればいいな。」


「ウカノ、魔法でどうにかできる?」


「そうだなあ、可能ではあるはずだよ。魔法に不可能なことはないと言われているんだ。新しく魔法を創り出す必要はあるが出来ると思う。」


「なら私が海を泳ぐことができる魔法を作ってみせる!」


 珍しくルアがやる気になっているな。やはり子供には色んな経験をさせるべきだな。これをきっかけにルアは成長できるだろうし、もしかすると本当にヒトの身で水の中を自由に泳げる魔法を創り出してしまうかも知れない。思想が凝り固まった僕よりも子供の方が柔軟な発想を持っているしな。僕はできる限りサポートしてあげよう。


 ☆


 ウカノたちが海で楽しんでいる頃、ソレは孤独に苦しんでいた。ソレがいるのは森の一角。どういう訳かその領域だけ決して降り止まぬ雨が降り続いている。そしてその領域の中心にソレはいる。


 ソレは誰にも知られず生まれた。親がいるわけではない。ただ長い、ヒト1人の生が終わるよりも遥かに長い時間をかけてソレ孤独に生まれた。自我が芽生えた時には既に蝕まれていた。そして自我が芽生えたからこそ苦しんでいる。こんなことならいっそ自我など無ければ良かった。いや、そもそも生まれてこなければ良かったと思う。ソレにはどうする事もできない。ただ1つ出来ることは、ただただ耐えて苦しむだけだ。


 ソレは誰にも助けを求めることはない。なぜなら生まれてから孤独で自分以外の存在を知らないから。苦しみの感情しか知らないから。


 ソレがどんな末路を辿るのかは誰にも、自身ですら分かっていない。このまま孤独に苦しみながら生き絶えるのか、それとも果たして…

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