第36話 好奇な視線
ゾンとルアが5歳になった。思えば今の拠点に来てから色々あった。最初は僕とテンだけが洞窟内に住んでいたが、図々しくも羊が棲みつきはじめた。その後には雪フクロウとゾンとルアが来た。この森に来てから僕の常識は通用していないが、その中でも予想外の出来事すぎた。それでも悪かったとは思わない。むしろ楽しく過ごせて良かったと思っている。
この拠点付近は探索しつくし安全地帯となった。だからこそゾンとルアが成長するまではこの拠点に居座っていた。だがここらが潮時だろう。2人は僕よりも圧倒的に魔法の才に恵まれており、多少の自衛は出来るようになった。環境の変化はより2人を成長させてくれるだろう。
探索に関しては空間魔法があるため、拠点としていい場所があったらそこに僕の空間魔法で皆をワープさせればいい。それでもここまで渋っていたのはあの不可視の存在が気がかりだったから。
なんらかの魔法で姿を隠しているのか、そこに存在していないのに気配をこちらに掴ませているのか何も分からなかったため慎重にならざるをえなかった。
テンは現在6尾となっておりかなりの力を宿している。前回は僕だけだったので逃げるしかなかったが、今回はテンがいるのであらゆる事態に対応できるはずだ。
☆
テンと共にあの場所付近までワープしてきた。慎重に歩みを進め、前回視線を感じた付近に来た頃……気配を感じる。
ただ前回よりも数が多い。この5年で数を増やしたか?それともテンがいるのが理由か?そして徐々にこちらに近づいてくる。やはり視線も気配も感じるのに姿は見えない。
「キュイー?」
テンも同じなのだろう。首を傾げて不思議そうにしている。しかしテンが警戒している様子はない。つまり相手にこちらを害する意思は感じていないのだろう。僕も相手の意思を読み取るのはかなり上手くなったのだが、姿の見えない相手の意思を読み取ることは難しい。
「キュー!」
そんな事を考えていたらテンがいきなり何かを追いかけるように駆けていく。テンが追う先には姿は見えないが気配は感じる。そしてそのテンを追いかけるように気配の集団が移動していく。
テンは……楽しんでいるのだろうか?それになんだか不可視の気配達も楽しんでいるように感じる。
「テン、この気配たちは僕たちを害する意思はないかい?」
「キュ!」
そうか、姿は見えなくてもこちらを害する意思がないのなら僕たちとしてはいいんだ。ただいまだにどうやって姿を隠しているか分からないけど。
それにしてもテンよ、いつまで追いかけっこしているんだ。一応ここら辺は安全とは限らないからね?




