第111話 親子
ウカノたちが出ていき、残された4人は誰もが話す事なく気まずい雰囲気に包まれていた。サハンとエリンは2人への申し訳なさから、ゾンとルアは産みの親という驚愕の事実から互いに話題を切り出せないでいた。
そんななか初めに話題を切り出したのは意外にもサハンだった。
「本当にすまなかった!私はこの国の王として2人が死ぬと分かっていながら2人を見捨てる選択肢を取ってしまった。自分の子供を見捨てるような者が国の民たちを守るなど笑わせてくれるが、あの頃の私にはそうするしかないと思っていた。こんなもので赦されるとは思ってない。恨むなら私を好きなだけ恨んでくれ!」
その場から立ち上がりゾンとルアへ真っ直ぐに頭を下げるサハン。一国の王が他者に簡単に頭を下げるなど到底起こりうることではない。だがサハンとて今まで恨んでいた、王としてではなく2人の父親として選択できなかった自分を。たがら今は王としての立場ではなく、2人の父親として頭を下げる…たとえ2人に父親として認められなくても。
「私からも謝らせて下さい。本当にごめんなさい。この11年間、何も出来なかった自分をずっと恨み続けてきました。私たちが諦めた2人の未来、成長した姿を見れて嬉しく思います。こんなやつが何をと思うかも知れませんが、私たちは本当に2人の幸せを嬉しく思っています。」
サハンに続きエリンもゾンとルアへ頭を下げる。
元々困惑していた所に謝られ更に困惑する2人。そのせいでサハンとエリンが頭を下げ続けたまま沈黙が再び生まれる。普段は人見知りもせず元気に喋るゾンも何を言い出せばいいか分からず困惑しているなか、ルアが2人に対して話しかける。
「頭を上げて2人とも。私も2人の言い分は分かるから大丈夫。ウカノがある時言ってたの。『自然の中では時々育児放棄される事がある。理由は親が子育ての仕方に戸惑うなんて事もあるけど中には仕方ないケースもある。それは子供が何か障害を持って産まれてきた場合。育児をしても長く生きられない、それに育児をする事で自分や他の子供が危険に晒されるリスクが上がる。悲しいけれどもそんなケースもあるんだよ。』って。それがたまたま私たちだっただけ。でも私たちはその中でも幸運だった。だって本来は死ぬ運命だったのに雪フクロウに出逢って、ウカノに出逢ったから。だからそんなに自分を責めないで。」
「で、でも…」
「そうだよー、そんなに苦しまないでねー!それにねー、2人が僕たちを愛してくれてるって知って嬉しかったんだよー!だってねー、ウカノも最初に言ってたけど何も根拠がない迷信に踊らされて僕たちは捨てられたと思ってたからー!」
「そ、そんな迷信なんかで自分の子供を見捨てたりなんかしないわ!」
「そう、だからどうしようもない理由だったって、本来は愛されてたんだって知って嬉しかったよ。」
「私たちを…恨まないのか?」
「恨む訳ないでしょー!僕たちを何度と思ってるのー!僕たちは今を生きてるんだよー?過去のことなんていつまでも引きずってちゃダメだよー?」
「あ、ありがとう……!」
11年間罪を背負い続けた。それはこの先も、死ぬまで背負い続けるはずだったもの。それがこの一言で2人は確かに救われた気がした。




