第105話 誤解
僕だって争いたい訳ではない。いまだに張り詰めた空気の中、相手方の言う通り僕たちも座る。
僕を真ん中にゾンとルアが両左右に、相手が不穏な動きをしたらすぐに動けるように準備をしておく。
「さて、本題の前にまずは自己紹介としようではないか。私はこの国のエルフ族を束ねるホーン、横にいるのが妻のエリンだ。そして後ろにいるのが私たちの護衛であるサハンとマーシャだ。先ほどはサハンが失礼した。次に…貴殿たちのことを教えてもらえるかな?」
「僕はウカノ、ご覧の通りヒト族だ。そして横にいるのが…」
「僕はゾン!」
「私はルア。」
「あ、あのっ!ゾ、ゾン君とル、ルアちゃんは今いくつなの…?」
そう聞くエリンは自身の胸の鼓動が高まるのを感じた。もし自身の子が今まで生きる事が出来ていたのなら今は11歳。見た目や本能で半ば自身の子だと確信しているが確かな確信を欲する。
自分の子であって欲しいと思う反面、見捨てる事しかできなかった私を恨んでいるのではと言う恐怖もある。それでも、どうしても聞かずにはいられなかったのだ。
そうして出てきた答えは…
「僕とルアは11歳だよー!」
「や、やっぱり……あ、ああああああああぁぁぁぁ!」
聞きたかった、欲しかった答えに自分の感情の栓が制御出来なくなる。溢れる涙が目の前の視界を遮るけれど、それでも目の前にいる2人の存在が確かなのだと目に焼き付ける。
「お姉さんどうしたの?大丈夫?」
「うん大丈夫よ、ただ感情が少しコントロール出来なくなっちゃっただけなの。ゾン君は優しい子に育ったのね。」
私のことを気にかけてくれる優しいゾン君に嬉しく思いつつも、お姉さんと呼ばれた事に胸がチクリと痛む。
でもそれもそうだよな…私にはお母さんと呼ばれる資格なんて無いのだから……
☆
どういう事かとウカノは混乱していた。ゾンとルアの親にとって今の2人が生きている事は想定外なはずで、不都合なはずだ。
それなのに目の前の女がゾンとルアへ向ける視線は憎しみや嫌悪の負の視線ではなく、まるで何よりも大切なものへと向ける愛情の籠った視線ではないか。
まるで…親が子へと向けるような……




