第98話 最悪な運命
「待たせたな。我らの王と姫が直接会うそうだ。今から案内させてもらうがくれぐれもしつれいのないようにな。」
「分かった。」
それにしても王と姫か。この集落の規模もそうだが村というほど小さい規模ではないよな。
それにしてもさっきから周りの視線が集まって来るな。集まっているのは部外者である僕かと思ったが、どうやらそうではなくゾンとルアに集まっている。
ゾンとルアも怖気付くという感じはなく、単純な好奇心からか周りを見ながら進んでいる。
「ここだ。」
しばらく歩いて着いたのは大きな樹と樹の間に挟まれるように建てられている荘厳な雰囲気を醸し出している社だ。
「お待たせしました、客人をお連れしました。」
「入りなさい。」
「失礼します。」
扉を開いた案内して来た男は入らないのか、僕らに入るよう促す。そのままにはいると中は暗く視界が定まらないが中に4人いるのが分かる。きっと2人は王と姫だな、残る2人は…護衛か?まあ王と姫を知らない人間に無防備に会わせないか。
「客人よこの暗さですまない、この場は灯をつけるのがよろしくないのでな。とはいえこのままでは面と向かって話すことも難しかろう、多少私の魔法で灯りをつけさせてもらう。」
そういって小さな光球を発動する。いきなり周りを明るく照らすものではなく優しく、徐々に周りを照らしだす魔法。魔法を具現化してからさらに制御するのは緻密な魔力操作を必要とする。それを難なくこなすだけでも魔法の腕が窺える。魔法技術に長けたエルフ族だからなのか、それともこの声の主が特別優れているのか。
だんだんと視界が開けてくる。そうして目の前の人物たちをようやく視認する。
まだ顔がハッキリとは見えぬが目の前には椅子に座った2人の男女と、その後ろに佇む男女。声の主は目の前に座る男性だろう。後ろの男女2人からはこちらを警戒してるのが伝わってくるしやはり護衛か。ということはやはり目の前に座る2人が王と姫だな。
静寂に包まれた空間で光球の灯りが強くなるに比例して周りの景色が明瞭になる。そしてようやく王と姫の顔を視認する。
王はここまで案内して来た男たちより多少歳が高いように見える。ヒト族の年齢に照らし合わせると20代中盤から後半といったところか。すらっと伸びた鼻に顔の整ったパーツはやはり美青年であることを引き立たせる。姫もやはり整った柔和な顔立ちだ。
だがなにより目を惹くのは両者肩より伸ばした長髪だろう。王は白の、姫は黒の美しい長髪。それはまるでゾンと…ルアの……!?
まさか、こいつらがゾンとルアの……?
「「あぁ…」」
声にならないような声を出して固まる目の前の男女2人。その視線は僕の両脇にいるゾンとルアを確かに捉えている。
あぁ…どうやらなんとも最悪な運命を引き寄せてしまったようだ。




