チープ美術館の絵画
1 鉄の花。
まんなかに大きな灰色の花が咲いている。それは艶やかで光っていた。触れば冷たそうな感触がするだろう、花びらの丸いところと尖ったところが、硬そうに開いている。
一生枯れることのない花。だけど壊れるだろう。
部屋に飾れば一生側に置いて見ることができる。でも、死を知らない花は、わたしになにを与えてくれるのだろう。
2 おひさまカレンダー。
丸いものを縦に切ったような太陽。オレンジとブルーが混ざらずに、太陽のまんなかから分けられている。その後ろには空があった。黄色の空。
日にちのない毎日。明日というものがこの世界にはないのかな?
いつまでもあるものではない。いつまでも見れるものでもない。では、いまのうちに目に焼きつけておこう。
3 いしのうえにもさんねんペース
いびつな石がたくさん積み上げられている。天まで届きそうなほど高く積み上げられていた。向こう側に青い空と木が立っている。その木は風に揺れていた。
ていねいに積み上げていれば倒れなのかな?
これなら崩れないと思って積み上げていく。それでも崩れるときがある。だが、早く積み上げて崩すよりは楽しいのだろう。
4 空の涙
紫色の空が曇っている。まぶたを閉じたようにふさがれていた。その隙間から、線のようなしずくが落ちている。傘が地面に逆さに転がっていた。
傘がしずくを弾かずに受け止めている? 空が泣いているから。
あふれるしずくをどこに流そうか、受け止めたしずくはどこへ流れていくのだろう。
それは、地面を麗して行く。
5 白い羽
真っ白なキャンバス。真っ白な鳥の羽。白い線で鳥の羽をたくさん描いていた。
下に羽がたまっていて、絨毯のようになっている。
ん? 間違えて、何も描いてないものを飾ったのかな?
色がない。羽に色をつければ見えるだろう。背景と同じ色で羽を描いても何も見えない。
そこに羽があるのに気づかない。みんな同じに見えてしまう。もし色が個性なら……。
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