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車椅子の男02




「――王子様。アンタ魔法をかじってるって言ったよな」


 それは念押しの確認だった。

 思わずそう問うてしまうほどに、彼の言葉は衝撃的だった。


「王子様はやめてくれ。シリウスでいい。質問の意図はわかるよ」

「じゃあシリウスと呼ばせてもらうが、本当に?」

「うん。()()()()()()()()()()


 ドラゴン。

 そう呼ばれる存在は大きく分けて二種類いる。

 古龍と亜竜だ。

 しかし、魔法使いの世界で単純にドラゴンと言った場合、前者のことを指す。


 ――すなわち、古龍。

 エンシェントドラゴン。

 大地の始まりからそこにいたと言われる、最古の生命種。

 人語を解し、自在に姿を変え、自然を操る最強の生命種。

 彼らは女神との繋がりが失せた頃からそのほとんどが姿を消した。


「魔竜の誤認ってことはないのか?」


 ドラゴンとしては格落ちの亜竜も、長く生きると強靭な肉体と知性を得て人の手に負えない怪物と化す。

 それが魔竜だ。

 現在稀に報告される古龍の遭遇情報は、九分九厘魔竜の誤認だと言われている。

 だが、それも否定された。


「ない。ひどく特殊な状況だったからね」

「……気になることが三つあるんだが、質問してもいいか?」

「どうぞ」

「どこで遭ったのか、どうして足を食われたのか、どうして足を食われただけですんだのか――ああ、もう一つあった。今どこにいるのか、だ」


 古龍たちはどこへ消えたのか。

 人間並みの知能を持ち、話も通じるとされる古龍になぜ襲われたのか。

 なぜ、古龍に襲われながら足程度ですんだのか。

 そして、その後どこに行ったのか。

 最低限このくらいは聞いておきたい。

 旅の目的と直結はしないが、古龍と女神の関係については先駆者たちがさんざん触れていることだからな。何かヒントになるかもしれない。


「順番に答えていこうか。場所については、ここだよ」

「ここ?」

「ここ」


 シリウスは下を指差す。

 それに導かれるままに床を見るが、もちろんそういうことではないだろう。


「……女神の神殿か?」

「よく知っているね。母上に聞いたのかな」

「聞いたが、それ以前から予想はしてたぜ。アルカイドとドゥーベにあったからな。そしたら思うだろ、七大古王国の地下には当時の神殿が残ってるってな」

「なるほどね。でも一つ訂正しておこう。どうやら勘違いをしているようだから」

「勘違い?」


 意味がわからず首をかしげた俺に、シリウスは言った。


「七大古王国の地下に神殿があるというのは正しくない。神殿が先にあって、その場所を押さえて国を拓いたのが七大古王国だった。神殿を造ったのは先史文明なのさ。その歴史は僕らの国よりもずっと古い」

「え――」


 思わず絶句した。

 それはもう神話レベルの昔話じゃないか。

 アルカイド。

 ミザール。

 アリオト。

 メグレズ。

 フェクダ。

 メラク。

 ドゥーベ。

 七大古王国(セプテントリオン)の歴史はそのまま現存する人間の歴史に等しい。

 それ以前の情報はほとんどが散逸し、断片的にしか残っていない。


「次にどうして僕が襲われたのかだけど、これは全面的に僕が悪い。今言ったように王城地下にある神殿は大昔の遺跡でね。発掘したら学術的に貴重なものや、今では作れない魔道具なんかがボロボロ出てきた。それで楽しくなってしまって――少しばかり掘りすぎた」

「龍の巣に当たったのか?」

「いいや。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「――は?」


 おっと。

 今完全にぽかーんと口を開けてしまった。

 いやでもしょうがないだろう。

 なんで古龍が発掘されるんだよ。

 なんで古龍が拘束されてんだよ。

 しかもなんでそれに襲われたんだよ。


「はは。いや、そうなるよね。僕も石像だと思っていたドラゴンが動き出したときは今の君と似たような顔をしたよ」


 だろうなあ。

 俺の経験上、石像が動いてもまったく動じないのはキサラギとリーリウスくらいのもんだ。アイツらマジで何でも「知ってた」って顔で対処するからな……。


「でも、結局すぐにまた石に戻ったから、この通り生きながらえたわけだ。これが三つ目の答え。それで最後の答えだけど――」

「――まだ、この地下にいるわけか」

「正解」

「嘘だろ……」

「ところがどっこい、嘘じゃない。現実なんだよね」


 王様に頼んで神殿を使わせてもらうつもりだったのだが。

 場合によっては古龍とガチバトルしなきゃいけないハメになるのか。

 この国を飛ばして別の古王国に行くのも全然ありになってきた。もちろん、そこの神殿が生きているかどうかはわからないから、最悪また戻ってくることになるが、ここの神殿も生きているとは限らないし。


「こりゃ計画を一から練り直す必要があるかもな……」

「計画?」


 聞かれて、俺は自分の目的を話す。

 古い女神の神殿を探していること。

 そこから女神にアクセスし、祝福を解いてもらうことを目的としていること。


「なるほどね。それでクラウスが父上との謁見をセッティングしてくれるのを待っていると」

「ま、そういうこったな」

「わかった。そういうことなら僕も協力しよう。なんとか明日時間を取ってもらうように動いてみるよ」

「そっちの条件は?」

「別にないよ」

「いやいや。何も要求されないのが一番怖いんだ。適当でいいから条件をつけてくれ」

「じゃあ古龍を倒してくれればいいよ。そうだね、できれば生け捕りがいいなあ」

「あー……お前さんがあの王妃様の息子だってこと、今思い出したよ」


 親子揃ってとんでもないお願いをしてきやがる。


「いや、そこまで無茶でもないと思うよ。あの古龍の状態なら」

「そりゃ現物を見てみないとなんとも言えないが……」


 本当に一瞬しか動けないなら遠くからひたすら魔法を撃つなんて手段もある。

 幸い今の俺はベヘモット一体と血塊石一個分の魔力を余らせてるしな。


「魔導師様だって、次に来たときこの国が滅んでたら後味悪くないかな? 神殿も壊れているかもしれないよ?」

「情と利益両方いっぺんに訴えかけるのはやめろ! お前本当にあのクラウスの兄か!?」

「はは。よく言われるよ。できた弟を持つと大変だなあ」


 ううむ。

 まあ、乗りかかった船ではあるし、言っていることは逐一もっともだ。


「まあ、状況を確認するくらいはしてもいいか……」

「さすが魔導師様。器も大きいね」

「うるせえやい」

「あれ、そういえば魔導師様の名前をまだ聞いてなかったね」

「そういえば言ってなかったな。クロウだ。好きに呼んでいいぜ」

「え、クロウって――【大魔導師】クロウ!?」



 お、ここんところで一番大きなリアクション。

 少しだけ溜飲が下がったぜ。




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