最善
「俺と組むってことでいいんだな。」
オビはリヴァイに確認を取る。
「あぁ。」
「いいのか?俺は賊だ。真っ当な生き方なんてしていない。」
「…さっきの戦い、お前以外からは殺気を感じなかった。二度とこの場に近づかせない為の本気の脅しってところか。
そもそも部外者だったお前を受け入れてくれている。ただの賊じゃないことくらいはわかる。そうだろ?」
「…けっ。俺の殺気を受け取ってもらえたならそれで十分だ。」
「オビ、俺からも質問いいか。
メイスの書いた印に斬り傷を入れたのはお前か?」
「…確かに切り刻んでやりてぇけど、俺はそんな陰湿なことはしねぇ!」
「…まあそうだろうな。
(だとするとこの傷を付けたのも射手なのか…?)」
リヴァイが少し考えていると、族長が思い出したように口を開いた。
「…関係ないかもしれないが、数日前にここから追い返した奴がいて、そいつ去り際に
"その時が来たと感じたら、その相手にカストルと伝えろ"
と言っていた。言われた時は何のことかさっぱりだったが、何となく今がその時な気がする…。」
リヴァイとラクスは顔を合わせる。
「カストル…ここからそう遠くはない城下町だな。」
族長の話を聞き、リヴァイが好奇心のある顔つきになる。ラクスはため息をついてから状況を整理して提案をする。
「他の奴らと合流してシエルのところに行くのが現状の理想だ。目的地へのルートは主に二つ。カストルはそのうちの一つだけど、他の全員が同じルートに行ったとも限らない。どちらにしろ俺たちは二手に別れる必要がある。リヴァイはカストルに行きたいんだろ?なら俺がもう一つのルートを潰す。そんで20日後にシエルに会う前に最後の街で合流だ。」
「…了解、別行動だな。
オビはどっちについてく?」
ラクスの提案にリヴァイは乗り、オビに振る。
「負けっぱなしでいる気はねぇぞ」
オビは即答でリヴァイを指差す。
「了解。
んじゃ20日後だ。遅れるなよラクス。」
「その言葉はそっくりそのまま返すぜ。
…あっ。リヴァイ。」
「なんだよ?」
「もしも…」
方針を決め、確認しとくことをした後、3人は教会の入り口まで進み、そこからリヴァイ・オビとラクスは別々の道へと歩き出した。
直感で即答したオビだったが、10分ほど経った頃にふと疑問を抱きリヴァイに尋ねた。
「…ラクスと別行動でよかったのか?」
リヴァイは今更聞くのかと言わんばかりに呆れた顔でオビを見たが、質問には真剣に答えた。
「…新しい出会いだ。さっきはオビにそう言ったけどやっぱり思うことはあるよ。あんなやりとりでも懐かしくて、こいつも本当にラクスなんだって嬉しくて堪らない気持ちになる。
だからこそ、俺たちは最善を尽くさなくちゃいけない。…今度こそ守るために。」
静かだがリヴァイが発する言葉の熱量をオビは確かに感じ取った。
リヴァイを超えるという自身への誓い。その意味合いが、少しずつ変わっていくことに本人が気づくのは、まだ先の話である。
「…リヴァイ、最短でカストルに到着するぞ。」
オビは力強く言った。