リヴァイ対オビ
リヴァイ達の死後、リヴァイ達の代わりとして
彼らはシエルの想像から生まれた。
彼らに感情はなかった。
リヴァイ達の代わりを演じるだけの、
人形だったのだ。
だが感情のない彼らでは埋め合わせられない
ものが少しずつ歪みを生み出す。
ほどなくしてシエルは言う。
「何かが違う。」と。
そしてその何かが確信へと変わる時、
彼らをシエルは遠ざけた。
「リヴァイ達の代わりなんていない。」
皮肉にもリヴァイ達の代わりという役割を奪われ、
捨てられることで自由を与えられ、
捨てられたという初めての感情から彼らは意思を持つようになる。
そしてその中の一人が、今リヴァイの
目の前に立ち、抱いた感情を言葉にする。
「…あんたらを超えたかった。
見返したかったんだ…シエルを。」
彼はその時がきた喜びと憎しみが
混ざりあい、複雑な笑みを浮かべる。
「…ボスにもらったんだ、名前を。
俺の名はオビ。
リヴァイ、あんたを倒すぜ。」
「…もうお前しかいない、頼んだぜ…オビ。」
オビは賊長の期待と自身の過去、その全てを背負う。
殺気、殺意それは紛れもないものだった。
それを感じたリヴァイの眼光もより鋭くなる。
「(仲間たちを失い、俺は今日まで過去を振り返る
ことしかしてこなかった。
いつ以来だろう…。
目の前にいる人間に、意識をむけるのは…。)」
リヴァイが息を吐いたその時、オビが踏み込み、
そして両者の剣が交わる。
オビは過去の人間を超えるため、
リヴァイは仲間を守れなかった後悔の念から、
互いに道は違えど、交わったその剣は、
与えられた日々をただ強くなるためだけに努力したものだった。
シエルの想像から生まれた彼らの潜在能力は、
限りなくリヴァイ達と同等のものである。
2人の剣技は見るものを震撼させた。
「(…こいつはマジでリヴァイだ。
強さももう疑わねえ…。
だが、オビもここまで強いとはな…。
この戦いは完全に互角だ。
加勢すれば勝てるが…。)」
戦況を見極めていた賊長だったが、剣を鞘に納め腹をくくる。
一瞬の隙が勝敗を分ける程拮抗した戦い。それ故に、入り込む余地があることを理解しつつ、オビに組織の明暗を託したのだ。
その様子を見ていた一人の男が大声を張り上げる。
「負けんなよ!!リヴァイ!!」
その声を聞いたリヴァイは一旦安全圏の間合いを
取り、声の先を見て口元を緩ませる。
「会う瞬間は、もっと劇的なものだと思ってたよ。」
賊長も一瞬驚くも、今度は疑わなかった。
「驚いたよ…生きてたんだな。
ラクスだよな。アンタ。」
「ふふ。あなたが割って入ろうとしたら止めてたよ。
オビ君があなたの期待も背負い戦う理由、
なんとなくわかったよ。」
「男と男の真剣勝負、邪魔するほど俺も
野暮じゃねえよ。
アンタこそ、割って入れば確実に勝負が
着くんじゃないか?」
「…いや、俺たちは目的を果たせばまた別々になる…。
進むしかないんだ…たとえ一人でも。
…なぁリヴァイ。」
ラクスの視線の先、剣が弾き飛ばされる。
弾き飛ばされたのは、オビ。
「すまないがオビ、俺はここで終わるわけには…
いかない…!!」
この勝負はリヴァイの勝利で幕を下ろした。