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僕の死んだ世界で  作者: 不死鳥の亡霊
剣聖襲来編
11/12

教団の予言書

メイスが孤児院に来たのは教団によって意図的に送り込まれたものだった。


メイスによると教団は異能者を探し各地を飛び回っており、活動の指針には予言書の存在があったと言う。


どこで手に入れたかもわからないその予言書にはシエルのことなどが確かに記載されており、起こると記されたことに関しては未来予知と言っても過言ではない的中率で起きたと言うのだ。


予言書にはリヴァイ達の孤児院に〃想像を現実にする力〃も持つ者が現れ、それを探るものとしてメイスを送るよう書かれていた。


…にも関わらず教団はリヴァイ達に敗れたのだ。予言書には起こることが結末まで書かれていなかった、内容が不足していたからだ。






「…教団の残党がまだいたとはな。」


リヴァイの言葉に、男は平静を装い返す。


「…リヴァイ君、死んだはずの貴方がなぜここに?」


「この世界の俺は死んだみたいだな。俺は、シエルを止めるために別の可能性の世界から来た。」


リヴァイの話は普通に考えれば信じ難いことではあるが、男は特に驚きもしない。


「…またしても予言書に記載のない貴方達が我々の邪魔をしようとしているわけですか。」


「…土壇場でメイスに裏切れることすら予測できなかったアンタらが、まだ予言書を信じて動いていたなんてお笑いだな。」


メイスの名前を聞き、平静を装っていた男も顔をしかめる。


「…メイス・グリフォード。思い出したくもない名前ですね。拾ってやった恩すら忘れ、一時の感情に流された愚かな男です。


…我々もあの時は正直負けたと思いました。予言書に踊らされたと。


ですがこの状況を見て確信しました。あの時の負けも仮定に過ぎなかったと。」


顔を歪め、話し始めた男だったが現状の話になるにつれ、表情は自信に満ち溢れたものに変わる。


「へっ、頭がお花畑なんだな。


今回も踊らされていないなんて根拠がどこにある?」


「シエルには信頼できる家族を手に入れる過程が必要だったのだ。手に入れ…それを失う。絶望を知る為に。


予言書に記された、世界の破壊と創生が目の前まで来ていることは明白なんですよ。


この世界は取るに足らないものだと、我々はシエルに伝え決断を後押しするだけでいい。」


「…それでこのタイミングでの暴動ってわけだ。」


「…ふふふ、元々領主に不満を持っていた民を先導するなど簡単なことでしたよ。」


リヴァイは宿屋の亭主との会話を思い出す。確かにここの人間は元々不満を持っていたのだと思う。しかし、リヴァイの疑問はそこではなかった。


「…本当にそれでいいのか?


俺はメイスの話は信じてる。だから予言書というのは確かにあるんだと思う。


…けど、その情報はどこか足りてない。仮にシエルの力のように、未来視ができる人間がいたとして、その書物を書いたとしよう。


…その書物がアンタらの為に書かれた保証なんてどこにもないんじゃないか?」


男は予言書を否定された形だが、それについてはまるで意に介さない。


「…手縄に継がれてるくせに、随分と威勢がよく吠えるものですね。


取るに足らない些細なことなど書かれないだけです。


予言書は神書なのですよ。」


そう、この教団の怖いところはほとんどの人間が予言書を心酔し、他方の言葉をまるで聞き入れない。交渉のしようがないところだ。


だからこそ、孤児院に送り込まれた人間が、予言書を心酔していなかったメイスだったこと、そのせいで裏切られたことが、当時からリヴァイ達には腑に落ちないところではあった。


「(…そのことをいくら話しても伝わらないのだろうけど。)」


リヴァイは手縄に意識を集中させる。


「…アンタこそ、手縄をしたくらいで威勢よく吠えるなよ。」


リヴァイがそう言うとつけられた手縄が突然ちぎれ、その手には光輝く剣が舞い降りる。


「なっ!?」


男は驚きを隠さず、リヴァイとの距離を取るが、手縄が切れると同時に剣は光を放つことをやめた。


「(…そりゃ、突然剣が出てきたら警戒してくるよな。


けどこの剣は俺の願いに反応してる。


…俺が人を斬ることを願っていないから、この剣もこれ以上は光りを放たない。)」


男はリヴァイの反撃がないことを感じ取るも、力量では勝てないことを察した。


「…ふふ、この場では私は勝てないようですね。けど暴動も止められません。


そして来たる死神に貴方もまた勝てない。」


「…死神?」


「私の名前はディオール。特異な力を持つのが自分たちだけとは思わないことです。」


「…」


ディオールはそう言い残すと準備していた逃走経路を用いてその場を後にした。


リヴァイも後は追わず、ここからは暴動を止めることを優先することにした。


「暴動を先導した人間が敵前逃亡したとなれば、話も変わる。


とにかくリーダーに合わないとな。」


建物を出ると、リーダーが一瞬でわかる状況だった。暴動の士気を高める為、声を上げる男がいる。ディオールとのやりとりもあり、猶予はさらになくなっている。


しかし、それを見越していたリヴァイの腹は決まっていた。





「ギール、メイス…。ここからはお前らの好きなやり方だぜ。


…小細工なしの中央突破だ。」


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