判断
[どこで間違えたのか…
間違いなら正解はあったのか…
仲間との死を受け入れるのが正解だったのか…
戻れない位置で俯瞰してもただ虚しいだけ…
今はもう決めた終わりに…
ただ…
進むしかない…]
早朝、亭主の出発を確認したリヴァイは、中央の広場へと先回りで向かう。
街は早朝にも関わらず不穏な熱を帯びている。
オビは宿の部屋から見えるその熱を確認し、中央広場とは逆方向にある城へと向かうことにした。
「領主がこの状況を知っているんだとしたら、こそこそ隠れてるってのは、やっぱり筋が通らねえよな。」
昨晩照らし合わせた情報を元に、リヴァイとオビはそれぞれの考えで動くこととなった。
「…昨日は適当にオッケーしちまったけど、オビのやつ本気で城に潜るつもりか?」
酒が入り、正気とは思えない単独行動を了解してしまったことを、道中でリヴァイは反省していた。
が、中央広場に集まる人だかりを見て、自身も正気ではないことを確認する。
「これを1人で止めようとしてるのか…。
(…ラクスがいたらきっと待ったがかかるな。ミラならもっと良い判断をする。
ギールとメイスは中心部に構わず突っ込みそうだけど…。)」
リヴァイは深呼吸をして冷静になる。
「(シエルの一件から数日足らず、暴動を起こすにしても足並みが揃うのが早過ぎる。シエルの件だけが原因とは思えない。だとしたら…。)」
昨晩考えた可能性。それを確かめる為に、リヴァイはリスクを承知で集団の輪に入り込んだ。
リヴァイの思惑通り、後方に監視役は配置されているが、紛れ込んでもすぐに気づかれはしなかった。
「(統率してるのは自警団ってところだろうけど、全員の顔を把握しきれてはいない。民間人がかなりの比率だ。
このままリーダーに会えちゃえばそれが1番楽なんだけどな。)」
リヴァイがそんなことを考えていた矢先、後ろから肩を叩かれる。
「おい、お前。見ない顔だな。」
「(…進めた方か。さぁ…どう出てくるか…。)
…アンタらのリーダーと会って話がしたい。
…俺は一般人だが、この暴動を止めたいと思ってる。」
リヴァイがそう言った瞬間、周囲は騒然となった。それでもリヴァイが抜剣の素振りを見せなかったところ、相手方も抜剣はせずリヴァイを取り押さえにきた。
「(一般人に危害を加える気はない…か。)」
リヴァイは相手の出方を確認して抵抗せず取り押さえられた。自警団は上の判断を仰ぐ為、リヴァイに手縄をし、集会所から少し離れた人気のない建屋に連れて行く。
「おや、どうされました?」
建屋からは眼鏡をかけた、神父のような男が出てきた。
リヴァイはその男自体は知らなかったが、その男を見て概ねの検討がついた。逆に男の方はリヴァイ見知ったような顔で見ている。
「…なるほどなるほど。…ご苦労でしたね。
あとは私に任せて君は集会の警備を続けてください。」
「はい!」
自警団はリヴァイを引き渡しその場を離れ、場にはリヴァイと神父のような男の2人だけになった。
「…正直驚きましたよ、リヴァイ君。」
「…教団の残党がまだいたとはな。」
その男が属する教団はメイスをかつて孤児院に送り込んできた。シエルを奪う為に。