夜想考
独りを実感させる静寂。
鼓動と刻の振動。振動の度に深まる傷。時通り響き渡る喧騒に、孤独が高揚する。研ぎ澄まさせる神経と感覚。微弱な無機質を耳が察知する。それすらもが孤独を強調する。
思い浮かんだ言葉の羅列。
ただよう雲に想いを馳せた。自分の亡骸を見つめて。それに寄り添うは記憶に居座る残像。喪失感が心と記憶を駆け巡る。残像の頬に手を伸ばす。震える指先。触れる寸前、崩れ落ちる残像。欠片は影に変わり、周りの闇と一体化した。亡骸の涙が心と身体を凍えさせた。
余韻の瞬き。
散る間際の花弁。揺らめく光の記憶。冷めた温もり。福音の静けさ。月を囲う雲。纏わりつく憂い。不穏と原型の匂いが充満した世界。この世界のあるがままの匂いが鼻孔を抜ける。
街と心の隙間。
月明かりが差し込む。朧げだった不安の輪郭が鮮明になる。誰にも平等に振る舞う宵闇は手加減を知らない。思考の辻褄が擦れ違いを繰り返す。酸素と栄養を喰い尽くす憂鬱と苦悶。千鳥足になる思考。安らぎが目を閉じる。
永遠にも感じる世界の再構築。
焦燥と不安の秒針が加速する。時間の針は息を潜めた。静まる刻。悲壮に囚われセピア色に染まる喜楽。冷たいアスファルトに煌めく暖かな光。光明の先に待つ睡魔。体温と不安の上昇。失落した夢想の世界。