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立花さんと両想いになるのはすごく難しい  作者: アンリ
第三章 告白バトル!
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3.3 急げ!:小太郎視点

 僕は高須小太郎。

 そして今日は待ちに待った文化祭当日だ。すがすがしい晴天はまさに秋晴れである。


 僕の隣には愛しのマイハニー、美玖ちゃんがいる。美玖ちゃんとは中学三年の時に塾で知り合って付き合い始めた。別の中学の子と、しかもこんなかわいい子と付き合えて、今は同じ高校に通っていて。ああ、僕ってなんて幸せな男なんだろう。


「小太郎。ジュース飲みたい」


 ああ、僕だけに甘えてくれる美玖ちゃんのことが世界で一番大好きだよ。


「オレンジジュース。今すぐ」

「オッケー。十秒で戻るよ」


 走りながら自然と二人の親友のことを思い出した。こんないい天気なのに、あいつらかわいそうだな、と。


 野田と広田は今日の文化祭で立花さんのことを誘ったらしいのだが、どちらも断られてしまったのだそうだ。二人は夏休み直前の事件以来お互いを避けている。どうやら二人の一世一代の告白はゲームと勘違いされてしまったらしい。そんな二人が今回思いきった行動に出たのだが……結果は惨敗ときた。


 せめて明日は二人と遊んでやるかな。


 そうだ、失恋パーティーを開こう。いっぱい食べて遊んで、笑って騒いで。泣いて。そしたらまた三人は元の仲良し三人組に戻れるはずだ。うん、そうしよう。それがいい。夏休みの間はお互いの予定が合わなくて全然遊んでいないし、こういう時は僕が企画しないとね。


 自動販売機に向かう道すがら、学外の人と幾人かすれ違った。まだ朝の十時だが気の早い人がちらほらと遊びに来ているのだ。


 早く戻らないと美玖ちゃんが他の男にナンパされるかもしれない。


 思いつくと急に不安に襲われた。そう、たとえばあそこにいるイケメンなんて非常に危険だ。男が見てもかっこいい男なんて、僕の知る限り野田と広田くらいしかいないが、あの男もなかなかのレベルである。ワイルド系なその男には正統派イケメンな我が朋友二人にはない魅力もある。


 って、あれ?


「あの男の隣にいるのって……立花さんじゃないか?」


 今日も今日とて立花さんは清楚な一輪の花のようだった。あ、僕はヒマワリみたいな美玖ちゃんが世界で一番大好きなんだけど、立花さんは一般的に見ればなんとも愛らしい女子なのだ。


 そんな立花さんが――。

 男子を一切寄せ付けない雰囲気を常に作っている立花さんが――。


「あっれー? 愛華ったら今日は卓也くんと一緒なんだ」

「わわっ。美玖ちゃん!」


 いつの間にいたのだろう、僕の肩の上からひょいと顔をだし、美玖ちゃんが二人を眺めている。


 そう、何の運命のいたずらか、美玖ちゃんは立花さんの親友だったりする。保育園時代からのつきあいなんだとか。


「小太郎、もう十秒過ぎてる」

「あ、ごめん。って、それより美玖ちゃん! あの男だれ?」


 美玖ちゃんには野田と広田のことは簡単に言ってある。入学式で二人そろって立花さんに一目ぼれしたこと、友情のために立花さんに近寄らない&告白しないという不可侵条約を結んでいることを。でも今年の夏休み前にその条約が反故にされたことや、二人揃って告白に失敗していることまではさすがに言ってない。こう見えて最低ラインくらいはわきまえているのだ。


 美玖ちゃんは僕の手からジュースの缶を取りプルタブを開けながら答えてくれた。


「あー、あれは従弟の卓也くん。ちょっと強面だしガタイもいいけど、ああ見えて中学三年生なんだよ。愛華んところとは家族ぐるみで仲がいいんだよね」

「従弟で年下……なんとも微妙な立ち位置だね」

「おー、さすが私の小太郎! そうなんだよね。従弟だからいつも一緒にいるんだけど、なかなか好きって言えなくてこじらせてるのよ。小太郎の友達二人並にかわいそうでしょ?」

「……って! じゃ、あの男……!」

「卓也くんだって」

「そ、そう! その卓也くんだけどさ、もしかして立花さんが好きなの?!」

「そだよー。だって愛華、かわいいじゃん」


 あっけらかんと言い放った美玖ちゃんはごくごくとジュースを飲んでいく。だが僕の方はそれどころではなかった。これは一大ニュースだ。緊急事態だ。緊急速報の発動だ。


 左右のポケットからスマホを二台取り出す。実は僕はあの有名な高須コンツェルンの御曹司で、将来ビジネス界を背負う男となるために株価チェック用のスマホを私用とは別に常に所持しているのだ。


 でも今は非常事態、公私の区別なんて言ってられる状況ではないから、それぞれ片手にスマホを持ち同時に操作していく。


「おー。小太郎、相変わらず操作はやーい」

「ごめん、美玖ちゃん。ちょっと待っててね」


 謝りながら、右に野田、左に広田の電話番号を出し、同時に通話ボタンを押した。すぐさま両耳にあてると、


「……もしもし?」

「……なんだよ」


 二人が覇気のない声で応じた。

 ああ、やっぱりこいつらそろいもそろってどこかでサボってやがる。


「何をやってるんだ! 今は落ち込んでる場合じゃないぞ!」


 僕は大声でまくしたてた。


「お前ら、急いでA棟一階に来い! 早くしないと立花さんが他の男に手折られてしまうぞ!」



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