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立花さんと両想いになるのはすごく難しい  作者: アンリ
第五章 告白バレンタイン!(FA御礼)
21/27

5.8 勇気のちハッピー:イラストあり

 野田くんと広田くんはほとんど同時にやってきた。その二人の前に腕を組んだみっちゃんがずいっと立った。


「さっきの質問に答えて」


 急いで来たのだろう、荒い息を整えるのに二人の口からなかなか言葉が出てこない。


「俺はそんなことは」


 言いかけた広田くんの言葉を遮って「俺はそう思っている」と野田くんが言った。


「バレンタインなんて今時馬鹿らしい行事だ」


 あらためて聞かされて胸がずきっと痛んだ――けど。


「でも告白すること自体は尊いことだし、俺がほしいと思っている心がこめられたものならなんでもうれしい。手作りでもチョコでも、なんでもうれしい」


 そこで改めて息を吐いて、野田くんが私をまっすぐに見つめてきた。


「好きだという感情がこもっているなら、きっかけも伝え方もなんでもいい」


 なぜだか分からないけれど、野田くんの言葉を聞いていたら胸につかえていたものが溶けていくような気がした。


 どうやら私はバレンタインという定義にこだわりすぎていたみたいだって……気づいた。


 そうだよ、どうして気づかなかったんだろう。私は野田くんが好き。すごく好き。一番好き。だからチョコクッキーを作ったの。好きっていう想いをたくさん込めて作ったの。だから食べてほしかった、それだけだったの。


 感動のあまり、この時の私はおかしくなったらしい。周りにみっちゃんや高須くん、広田くんがいるというのに、鞄の中から水色の包装紙でラッピングした箱を取り出していた。


「野田くん! これもらってくれる?」

 

 急な展開に野田くんが目を丸くした。他のみんなも驚いている。


「私、野田くんのことが好きです」

「……え? ちょっと待って。今俺、すごく混乱してるんだけど」


 野田くん……喜んでくれていない。迷惑なんだ、と即座に悟った。


 初めての恋があっけなく終わったことを知った瞬間、すごく泣きたくなった。でもぐっと我慢した。泣いたら野田くんに迷惑をかけちゃうから。こういう面倒なことが起こりやすいからバレンタインが嫌いなんだろうし。


「あはは。ごめんね。好きでもない人からの告白も手作りチョコも嫌だって言ってたのにね」


 無理やり笑顔を作ってみせる。


「でもどうしても……伝えたくて……」


 あ、涙が出ちゃった。ぽろっとこぼれた涙が頬をすべり落ちていった。


「……そういうことだったのか」


 広田くんがなぜか呆然とした表情でつぶやき、その肩に高須くんが手を置いた。


「な。あとでどんな勘違いの連続があったのか聞かせてもらってもいいか?」

「……話せば長くなるぞ」

「親友だろ? 全部吐き出せって」


 そしてみっちゃんが「二人きりにしてあげよ?」と高須くんと広田くんを連れて離れていった。でも私自身はそれどころではなかった。野田くんが私のプレゼントを受け取ってくれたから。


「ど……して?」

「それはこっちの台詞」


 ずっと険しい表情だった野田くんがくしゃっと顔をほころばせた。


「どうしてこんなにも複雑なことばかりが起こったのかは分からないけど」


 そんな私にもよく分からない前置きをしつつ、「俺も立花さんが好きだ」と野田くんが言った。


「……ほんと?」

「ほんと」

「ほんとに?」

「ほんとに。てか、立花さんは広田とつきあい出したって聞いてたんだけど違ったんだね」

「つきあってはいたよ?」


 真顔で答えた私に野田くんが変な顔になった。無糖のチョコを食べた時のような、そんな変な顔に。


「広田のこと、好きだったの?」

「過去形じゃなくて好きだよ?」

「あー……ごめん。質問を変える」


 わしわしっと野田くんが頭をかきむしって言った。


「恋愛という意味で広田のこと好きだった?」

「ななな、なんでそんなこと訊くの? ひどいよ、私は野田くんが好きだって言ったのに……!」


 信じてもらえていないことがショックで握りこぶしを作って訴えたら、野田くんはあっけにとられた顔になって、その後笑顔になった。


「やっぱりね。立花さんは俺だけに恋してるってことだよね。よく分かった」


 急に体がふわっと浮いた。


「きゃっ」


 野田くんが私を抱きしめ、持ち上げたのだ。

 そしてその場でくるくると回った。


「じゃあ俺達、今日から恋人ってことでいいよね。あ、恋人っていうのは恋する二人の特別な関係のことだから。立花さんにとっては俺だけ、俺にとっては立花さんだけの、この恋を育んでいく関係のことだから」


 やけに丁寧に饒舌に語る野田くんはすごく嬉しそうで、私は野田くんの首にとっさにしがみついた。

 

「うん! 私、野田くんとの恋を育みたい!」



 *


 立花さんと両想いになるのはすごく難しい。


 だけど立花さんが強く望めば――両想いになるのはすごく簡単だったりするのかもしれない。



挿絵(By みてみん)



 終わり

今回挿入した素敵なイラストも第四章に引き続き一本梅のの様が描いてくださいました。

そしてイラストの力でこの章はできました。

チョコを抱きしめる立花さんを見ていたら、これはいい加減両想いになってもいいのではないかと思ったのでした^^

のの様、このたびは本当にありがとうございましたm(_ _)m


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― 新着の感想 ―
[良い点] イラストの雰囲気にぴったり♪とても可愛らしいお話でした(*´∇`*) 立花さんの天然小悪魔っぷりが可愛らしく、振り回される男子ズに、ニマニマしながら読みました。 小太郎がいいツッコミ役で、…
[良い点] ついについに野田くんが報われた……!感無量です。 何か一瞬、広田くんがすごく不憫な気もしたんですが、広田くんもこれまで山ほどニアミスを経験してきていたはずなので、立花さんの習性をきっちり見…
[良い点] 野田くん、おめでとーーー!( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆ そして広田くん、ドンマイ!( ノД`)… 愚痴はたくさん聞いてあげるから! ついに両思いになりましたねー。 ハッピーエン…
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