5.3 よーし!:小太郎視点
愛しの美玖ちゃんとの電話を終え、甘い余韻に浸っていたら野田から電話がきた。
「もしもし? どうした?」
「あのさ。悪いけどチョコ作りは中止にさせてくれ」
「え? なんで?」
そう、実は今日は野田と広田が家にやってきて、うちの専属パティシエのピエールにチョコ作りを教えてもらうことになっていたのだ。
「なんでだよ。四人そろって立花さんにチョコを渡して告白することになってたじゃないか」
そう、明日月曜、バレンタイン当日に告白バトルの最終決戦をすることになっていたのだ。ただし、ヒロインである立花さんには秘密で。
「それはやめになった」
「は?」
「実はさっき偶然菊池と山中と会ったんだ」
野田いわく、明日の確認をあらためてしたところ、話の流れで「よく考えたら立花さんにとっては迷惑かもしれない」という結論に至ったそうだ。まあ、確かにそうかもね。男四人が作った不出来なチョコを渡されて一斉に告白されても……嬉しいとは限らないかも。
「でもさ。元々はクリスマスイブに告白することになってたんだぞ?」
ハロウィンパーティー以来、四人の男達はお互いをけん制しあっていた。その結果、「ならば正々堂々、公正に決着をつけようじゃないか」と誰ともなく言い出し、「ではクリスマスイブに」と決まったらしい。それが実現しなかったのはヒロインである立花さんがインフルエンザにかかってしまって、告白どころではなくなったから。
で、バレンタインに仕切り直しをしようということになっていたのだけど。
「なんだか俺達、気がついたら男同士で張り合ってばかりいたなって思ってさ」
電話口の野田の声は晴れやかだ。
「本当は立花さんに向き合うべきなのに、ちょっと違ってたなって」
「……確かになあ」
おっしゃるとおりです。
「だからバレンタインはスルーする。ていうか、もう告白で競うのはやめるよ。冷静になった」
「そっか。分かった。じゃあピエールには生徒は僕一人で我慢してもらうよ」
「すまない」
「いいって。僕がたくさん作って美玖ちゃんにあげるよ」
話していたらうきうきしてきた。そうだ、どうして今まで僕は自分で作ろうと思わなかったんだろう。僕が作ったチョコがあのかわいらしい美玖ちゃんの唇に触れるだなんて……ああ、想像するだけでドキドキしてくる。
この甘い愛を甘くないチョコで表現したら、きっと美玖ちゃんは喜んでくれるだろう。美玖ちゃんは甘いものはあんまり好きじゃないから。
よーし、僕が美玖ちゃんのために最高のチョコを作ってあげる!
待ってて、美玖ちゃん!
*




