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立花さんと両想いになるのはすごく難しい  作者: アンリ
第五章 告白バレンタイン!(FA御礼)
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5.2 ……知らなかった

 バレンタイン前の週末ともなるとショッピングモールはけっこう混んでいて、お目当ての雑貨屋さんであれこれ頭を悩ませてラッピングを購入し終えた頃には、お菓子作りの疲労も相まって二人してぐったりしていた。


 どこかに座りたい、だけどまたお茶をする気にもなれないよねと話していたら、ちょうど目の前のベンチに座っていたカップルが立ち上がった。ラッキーとばかりに腰をおろす。


「ちょっと疲れたね」

「ね。ああもう、やだやだ。ここが日本じゃなかったら絶対にチョコなんて作らないのになあ」

「それ、さっきも家で言ってたよね。どういう意味?」

「あれ? 愛華は知らない?」


 首を振るとみっちゃんは丁寧に説明してくれた。いわく、バレンタインといえば日本以外では性別によらずプレゼントしたい側があげるものらしい。しかも、チョコを重要視するのも、意中の相手に告白するための行事とみなしているのも、日本独特の風習なんだとか。


「えー! 知らなかった!」

「でしょ? 私も最近知ったんだ。ほんと、ここが日本じゃなかったら小太郎に全部やらせるのに」


 ぶつぶつとみっちゃんが文句を言う。


「でも小太郎はこういう行事が好きだからさー。だったら喜ばせてあげたいし?」


 みっちゃんのツンツンしながらもこういう可愛いところ、高須くんはきっと分かってるんだろうなあ。


 ほのぼのした気持ちで話を聞いていたら、ふと気がついた。


「……あ、だからさっき卓也は怒ったんだ」

「ん? どういうこと?」

「さっき卓也怒ってたでしょ。あれ、私が日本ぽくないことをしたから怒ったのかもしれないって思って」

「どういう意味?」

「うんとね。私がチョコじゃなくてクッキーを作ったから怒ったんだよ、きっと」

「へ?」

「卓也ってちょっと変なところで古風なんだよね……」


「俺は長男だから頼っていいぞ」とか「男は女を護るものなんだ」とか言う卓也のことだから、バレンタインといえばチョコでなくてはならないと信じているのだろう、きっと。チョコじゃないお菓子は邪道だ、と。


「でもあのクッキー、あとでチョコをサンドするのになあ」

「……愛華、それ絶対に違うから。単にハートの形に本命がいるってピンときただけだから」


 卓也にメッセージを送ろうとスマホをいじりだした私の耳にはみっちゃんの言葉は聞こえていない。


 と、みっちゃんも鞄からスマホを取り出した。


「あ、ごめん愛華。小太郎からの電話とっていい?」

「いいよもちろん」

「ここ人が多いし静かなところで話してくるね」

「うん」


 みっちゃんはスマホを耳に当てつつ足早に去っていった。 


 一人になってさっそく卓也にメッセージを送った。あのクッキーはチョコをサンドするから邪道じゃないんだよ、と。するとすぐに返事がきた。


『誰にあげるつもりで作ったんだ?』


 直球で質問されて困った。

 従弟相手に恋バナなんてできるわけない。


 少し考えて『お世話になった人だよ』って送った。うん、嘘はついていない。たくさんお世話になったのは事実だし。


 と、喧騒の中で私の耳がはっきりとあの人の声をとらえた。


 まさか、と思って辺りを伺うと、なんと私の後ろにある大きなハートのオブジェのそのまた後ろによく知る同級生が四人もいた。野田くんと広田くん、それに菊池くんと山中くんだ。


「そっか。四人は仲がいいんだ」


 重なるハートのオブジェの隙間からこっそり四人の姿を盗み見ながら、ハロウィンパーティーでこの四人が盛り上がっていたことを思い出した。あの時、四人がちょっと喧嘩に近いような議論をしていたのが気になっていたんだけど、あれも仲がいいからだったんだね。本音で語り合うなんてなかなかできることじゃないもん。


 立っている四人からはオブジェの反対側に座る私は見えないようだ。そして今日も四人は白熱した会話を繰り広げていた。


「バレンタインなんて菓子メーカーの考えた馬鹿げた行事だ」


 ……うん?

 ちょっと待って、野田くん。

 今、なんて言った?


「野田の言うとおりだ。それに乗じて告白だなんて、絶対嬉しくないよ」


 ……あれ?

 広田くんまで?


「確かに二人の言う通りだ。俺もバレンタインで愛を量るような真似は元々好きじゃないし」


 ……あれれ?

 山中くんもそういうタイプなの?


「確かになあ。ほしくもない手作りチョコをもらっても迷惑だもんな」


 ……あれれれ?

 菊池くんまでそんなこと言うの?


「じゃあ全員の意見が一致したということで」


 広田くんが残る三人の表情を確認しながら言った。


「俺達全員バレンタインはスルーだ。抜け駆けはなし。いいな?」


 ……えええー!


 私が唖然としているうちに男の子達はうなずき合い、そしてどこへともなく去っていった。そして私のもとに戻ってきたみっちゃんは、呆けた私の顔の前でしばらく手を振っていた。


「おーい。愛華、大丈夫?」

「……大丈夫じゃない、かも」


 なんとかそれだけを返すので精一杯だった。


 *


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