戦い終わって
先日は体調不良で投稿できませんでした。誠に申し訳ないです。
「アオイ、重くないか?」
「ん······大丈夫」
気絶したウィンさんを背負っているアオイに声をかけながら、元来た道を戻る。
最初は俺がウィンさんを背負うつもりだったのだが、どうしてもと言うアオイに押しきられる形でアオイが背負うことになった。
俺はそのアオイを補助する形だ。
まぁ補助するとは言っても、試練以外では魔物も何も出ないこの洞窟ではなんの意味も無いのだが。
「無事だったか!」
洞窟から出てきた俺達を迎えてくれたのはアオイとウィンさんの兄であるフラムさんだ。
フラムさんは俺とアオイの状態を確認して頷いた後、アオイの背中に背負われたウィンさんに気がついたのか、表情が厳しくなり、体が強ばる。
「兄様、大丈夫。もうウィンの中に取りついてた奴はいない」
アオイがフラムさんにそう言うと、フラムさんはアオイの方を見て、ホッとため息をついた。
「なら大丈夫かな?」
その言葉を聞いたアオイが逆に驚いていた。
「信じるのですか!?」
「信じるも何も、アオイが嘘を言うデメリットはあっても、メリットが何一つ無いからね」
それを聞いた俺は成る程と頷いてしまった。
「ただ、ウィンの身柄はこちらに引き渡して貰うよ。事件の背後関係も確認しておきたいし、流石にあれだけの事をしておいてお咎め無しって言うのは流石に有り得ないからね」
フラムさんの言葉にアオイが頷く。
それを確認したフラムさんは顎で周りにいる人たちに指示を出して、アオイの背中のウィンさんを回収させた。
「心配しなくても悪いようにはしない。僕にとってもウィンは妹なんだ。進んで害したいとは思わないさ。それよりも早く行った方がいい。今はいないけどそろそろ······遅かったか」
何が遅かったなのか聞きたかったが、その答えはすぐにわかった。
「おっ!? アオイが戻ってきてんじゃねーか! それに、そこの奴等に担がれてんのはウィンか? ならアオイはウィンに勝ったって事だよな? よし、一つ立ち会え!」
恐らくさっきまでどこかへと行っていたのだろう。アオイのもう一人のお兄さんであるライノさんが戻ってきたのだ。
成る程、確かにこうなることが予想できていたのなら早く行けとも言われるだろう。
俺とアオイはしきりに立ち会いを要求してくるライノさんを「今日は疲れているから」「そういうのはお互いが万全の時にした方が良い」と、説き伏せて、ライノさんとの立ち会いを回避することに成功したが、ヤマト家への入場証(これがあれば何時でもヤマト家の敷地内に入ることが出来るようになるもの)まで渡され、今度立ち会いに行くことになってしまった。
「兄様が······ごめんなさい」
「いや、大丈夫だよ」
ライノさんとフラムさんに別れを告げた後でアオイがこっそりと謝って来るが、俺としてもそこまで気にしていなかったので謝られる必要など無い。
その後でミズキさんや、ノクスさん達にも無事にウィンを助け出したことを話した。
ミズキさんは報酬としてヤマト家に何時でも入れるようになる入場証を渡そうとして来たが、先程ライノさんに渡された事を話すと、一瞬動きが固まり、いきなり「もう! これは私が渡すはずだったのに! ライ兄のバカ!」と空中に向かって怒り始めた。
こんなミズキさんは初めて見たので少しだけ新鮮な気がした。
流石に依頼した側として意味のある報酬が何もないと言うのは問題があるので、ヤマト家の倉庫の中から防具を幾つか見繕ってくれるそうだ。
とは言っても勝手に渡すわけにはいかないので、一旦父と話をすると言っていたが、父も恐らく納得してくれるだろうとの事だった。
それからしばらくして防具を受け取り(兼ライノさんとの模擬戦)にヤマト家に赴いたのだが、想像以上にライノさんは化け物だった。
アオイのヤタガラスによって魔法を封じ込められた状態で、アオイが氷結の領域を展開しきる前に身体能力だけでアオイの首もとに武器を突きつけたのだ。
「確かに攻撃魔法を消されるのは厳しいが、どうやらブースト等の体内で作用する魔法は消すことはできないようだな。ガハハ」
との事だった。俺もアオイも気づいてはいなかったが、どうやらアオイの魔力操作も体から放出された魔力のみに限定されているようだ。
次に俺も戦ってみたのだが、全力行使を使用した攻撃さえも、全て通じずに効果時間(現在は10分)を過ぎてしまい、ギブアップ。
「俺の目でも捉えるのがやっとと言う身体能力は凄まじいが、戦い方が真っ直ぐすぎるし、対人間の戦闘経験値が足りなさすぎだ。これなら動きが見えてなくとも勘だけで捉えることも出来る」
というきつめの言葉をもらってしまった。
しかし、その後
「しかし、お前らは中々だ! 特にアオイ! お前がここまで伸びるとは思ってなかった。昔落ちこぼれと言ったが······あれは訂正しよう。お前はまだまだ強くなれるな。ガハハ」
「兄様······」
突然の言葉に言葉にアオイが涙ぐむのが見えた。
しかし、その涙も次の瞬間に引っ込むことになったのだが······
「よし、それではもっと強くなれるようにノエル共々俺が模擬戦を通して戦いかたを教えてやろうではないか!」
「へ?」
その言葉を聞いた俺とアオイの目が点になった。
そこからしばらくの間、俺は全力行使の後遺症の筋肉痛から離れることができなくなった事をここに記しておこう。
今回で第4章は終了です。
次回に第4章に新規で出てきたキャラクターの設定を乗せて、第5章の大体の話の流れを考えて(今まではあまり意識せずに書いていたため、話がグチャグチャになっていたので、それの反省を込めて)第5章を書いていきたいと思います。
尚、第5章の第1話はもう考えているのですが······
これからも応援ヨロシクお願いいたします!