試練の洞窟その14
ウィンさんの魔法によって作られた風がアオイの能力で消すことができない理由がわからないまま戦う事数十分。
いまだに俺とウィンさんは拮抗していた。
というのも、ウィンさんの暴風の領域は俺に傷をつける事が出来るが、その傷も全てブーストのリジェネ能力により直ぐに塞がる。
逆に俺の攻撃はウィンさんに届く前に感知され、ウィンさんが早めの回避行動に移るため攻撃が当たらないのだ。
たまにアオイが援護でウィンさんに向かって攻撃魔法を放つが、それも全て暴風の領域で防がれてしまう。
正に膠着状態と言った感じだろうか?
しかし、このままこの状況を続ければ勝つのは勿論俺達だ。
試合でも魔力を使ったとは言え、魔導書の中にはまだまだ大量の魔力が残っている。
なので、俺とアオイはまだまだ(魔力的な意味では)戦う事が出来るが、ウィンさんはそうじゃない。
魔力を貯蓄することができる訳ではないし、アオイと比べて魔力は高いが、俺に比べれば全然少ない。
それに、アオイの氷結の領域が大量の魔力を消耗するように、ウィンさんの暴風の領域もそれなりに魔力を消耗するはずだ。
実際、長期戦では分が悪いことをウィンさんも理解しているのか、その顔にも焦りの色が浮かび始めている。
「くっ!!」
今回放ってきた一撃も、回避するのは容易だったし、なんなら反撃を入れることも出来た。
「えっ!? ちょっ!? 待ちなさいよ! ······うっ!」
「何だ!?」
そんな中、いきなりウィンさんの動きが止まり、苦しみだした。
「ノエル······あれって···」
アオイの言葉に俺も頷く。
ウィンさんの苦しみ方が、ナナシに体を乗っ取られる前の状態にそっくりなのだ。
もしかしてウィンさんはナナシを克服したとかでは無くて、偶然にもナナシが意識を乗っ取って居なかっただけなのか!?
だとしたら·······
「うぅ······」
そんな話をしている内にウィンさんの呻き声が止まる。
「······ふっ!」
「ちっ!」
それと同時にアオイに向かって襲いかかってきたウィンさん改めナナシの攻撃を魔導書で弾く。
今回はずっと警戒していたため、アオイに怪我をさせることもなかった。
「流石に二回目ともなれば不意打ちなど通じぬか······久しぶりよのぉ。殺したかったぞ? ノエルよ」
普通そこは会いたかったとかなしておくべきでは無いだろうか? 等と突っ込んでも無駄なんだろうなぁ······
「しかし、そこのアオイとやらも面白い存在じゃな······恐らく先程我の魔力によって張られた暴風の領域を消すことができなかった事から察するに、その鏡に写した者の魔法を消す事ができるといった所かの? まぁ、我にとっては関係無いことじゃが」
成る程、そう言うことか。
確かにアオイのヤタガラスでは写した人間の魔力形質をコピーすることが出来るだけだ。
だから写した人間とは違った存在が使った魔法は勿論消すことが出来ない。
そして、今もナナシはウィンさんの体の中にいるため、ヤタガラスで姿を写したとしても、それはナナシの魔力形質では無く、ウィンさんの魔力形質を写しとることになる。
つまり、ここからナナシが使ってくる魔法はヤタガラスの能力では防ぐことが出来ないと言うことだ。
······中々に厄介である。
「まぁ、その面白いと思った存在も殺さなければならないのは辛いところではあるがのぉ······何せ汝らを殺せば我の完全復活までここに立ち入る事ができるものはいなくなるのじゃろ? あまり認めとう無いが、我が今の状態で出ていってもろくに何も出来ずに殺されてしまうのがオチじゃからのぉ。お主らを殺して誰にも邪魔をされぬ状態で完全に封印を解かせてもらうことにするとしよう」
「封印を解いて何をするつもりだ!」
俺の言葉にナナシがこちらをちらりと見る。
「決まっておろう? 復讐じゃ。忌々しくも我を封印したヤマトの血筋を······いや、それだけでは飽き足らぬ。人間という種全てを滅ぼしてくれるわ。そろそろお喋りにも飽いて来た所じゃし···始めるかのぉ!」
その言葉と共にナナシは俺に向かって襲いかかってきた。




