試練の洞窟その13
「ノエル、一旦下がって」
その言葉と共にアオイが前に出る。
俺はアオイの言葉を受けて一旦その場から離れた。
それを確認したアオイの体から冷気が迸り、一気に凍りつく。試合でウィンさんを封殺したという氷結の領域の構えだ。
「確かそれには試合で辛酸をなめさせられましたからね······今度こそ叩き切りますわ!」
その言葉と共に振りかぶられる大鎌。
そう言えばさっきウィンさんは何て言ってたっけ?
『切断力強化の能力でどんなに固いものでも豆腐のように切れるデスサイズを弾くって······なんなのよそれ!?』
先程ウィンさんが言っていた言葉だ。
幸いにも魔導書は『不懐』の属性を持っていたため切られる事は無かったが、アオイの氷はただ魔力で固めた頑丈なだけの氷だ。不懐属性等がついている訳でも無い。
俺は嫌な予感がして体を突き刺す冷気も気にせずにアオイの元へと走る。
しかし、その頃にはもうウィンさんはアオイの前で大鎌を振りかぶっていて······
「······なっ!?」
「少し届かなかった······」
その言葉通りに、楽々とアオイの氷を切り裂いた。
ウィンさんの予想を越えてアオイの張った氷が厚かったようで、なんとかアオイが両断されるなんて事はなかったみたいだけど······
「でも、次で切れば問題ないよ···ね!」
そう言ってウィンさんが再び鎌を振り上げるが、アオイは氷結の領域を張っている関係上その場を動くことは出来ず、回避できないのだ。
「やらせない」
しかし、アオイもただやられるままでは無く、反撃と牽制のために魔法を放つ。
「無駄無駄無駄無駄ァ!」
しかし、その魔法も全てウィンさんの暴風の領域によって阻まれた。
暴風の領域も少し強化されているのだろうか?
そして、そのまま動けないアオイに向かって鎌を振り下ろそうとするが、そうはさせない。
ウィンさんが無駄に叫んでた一瞬でなんとかウィンさんとアオイの間に割り込む事に成功した俺はウィンさんの鎌を魔導書で受け止める。
その際に暴風の領域にて無数の切り傷が出来るが、直ぐに氷結の領域の効果で傷口が凍らされる事により傷口からの出血は無い。
「アオイ! 今の内に!」
俺の言葉にアオイが氷結の領域を解除して後ろへ下がる。
同時に暴風の領域から受けた新たに受けた傷が開き始めるので、俺は同時にブーストに使っている魔力を多くして、ウィンさんと切り結ぶ。
それによって自身にかかっているリジェネ能力を強化することができるのだ。
しかし、流石にそのままではじり貧なので一度攻撃を力任せに弾き飛ばして距離を取る。
「全く······暴風の領域で傷を負っているはずですのに瞬時に回復するなんて······あなたは化物ですか?」
化物と呼ばれるのは心外だ······と返そうと思ったのだが
・傷を負っても瞬時に回復。
・殆ど素手(魔導書は持っているが)で魔物や、武器を持った相手と近接戦闘を行う。
うん、割かしこの二つだけでも化物っぽいな。
少なくともアーシャ村に住んでいた頃にはこんなことになるなんて予想もしてなかったけどな。
しかしながら問題はアオイがウィンさんの魔法を防げていないところだ。
一体どんなからくりなんだろうか?