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深夜の狼再び

「久しぶりだなノエル」


「ウェルさん!」


 孤児院で一人ぼっちになってしまった次の日、ウェルさんを含めた深夜の狼のメンバーが孤児院に遊びに来ていた。


「久しぶりだな! ノエル!」


「お久しぶりですノエル君」


「イグニスさんとレンさんも元気そうで何よりです」


 この二人は相変わらず仕草がそっくりだ。


 そして


「お久しぶりですね······ノエルさん」


 何故かぐったりとしているシエラさん。


 心なしか髪にも艶がない。


「シエラさんは············あまり元気そうには見えませんね······」


 その言葉にシエラさんが苦笑する。


「どこかのバカ二人が面倒をかけてくれますからね······」


 そう言ってイグニスさんたちを睨むシエラさん。


 しかし二人とも慣れているのかそんな視線は知らんぷりだ。


「そーいやノエル! 適性職業は何にしたんだ? 赤だよな!! 赤魔法師!」


「何言ってんですか兄さん! 緑に決まってるじゃないですか!」


 イグニスさんとレンさんの言葉に僕は固まってしまった。


「すみません。僕は赤にも緑にも適性が無かったんです」


「なっ! なん······だと!?」


「そんな······!」


 イグニスさんとレンさんが絶望したかのように項垂れる。


「ふむ、ならば茶か青だったと言うことかな?」


「それならば良かったです。基本を教えるにしてもあの二人では心配でしたから」


 ウェルさんとシエラさんが微笑んでいるがその二人の言葉にも首を振る。


「すみません。僕には赤と緑どころか茶や青にまで適性が無かったんです······僕の適性は白魔法師だけでした」


 なんだかウェルさんに当てられて白魔法師だと知られるよりは自分から言った方がいいと思って結局自分から伝えた。


「ふむ、白魔法師か······」


 ウェルさんが顎に手を当てて考え事を始める。


 やはり冒険者には向かないから諦めて医者か薬師になれと言われるのだろうか?


 そう思って身を固くする僕だったが、次にウェルさんの口から出てきたのは意外な言葉だった。


「誰が教えるのがいいんだろうな?」


 話を聞いてみるとウェルさん達は僕の適性職業が決まれば、その職業と同じ人が僕を鍛えるということにしていたらしい。


 しかし、僕の適性職業は白魔法師だ。


 深夜の狼の中には白魔法師はいない。


 というか少なくとも深夜の狼の知る限りでは冒険者に白魔法師はいないらしい。


 だから誰も教える事ができないのだ。


「ならばとりあえずどの職業でもできることから教えていけばいいか」


 どうやら結論に達したらしく僕の方に向き直る。


「それではノエル。今から君に魔力の使い方を教える」


「えっと······あの······僕は白魔法師ですけどいいんですか?」


 思わず口から出てしまった言葉にウェルさんは


「確かに冒険者にはまだ白魔法師はいない。でも白魔法師が冒険者になってはいけないルールなんてないだろ?」


 そう笑いながら言ってくれた。


 その言葉が嬉しくて僕は


「よろしくお願いします」


 と深夜の狼の皆さんに師事することになった。

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