試練の洞窟その2
更新遅くなってすいません。
次回更新は明日の予定です!
「そう言えば聞いてなかったけど試練の内容ってどんなものなんだ?」
試練の洞窟に入った俺はアオイに問いかける。
「······試練は人によって違うらしいけど、数だけは皆揃っていて、各々3つの試練を受けたらしい。私は何時も一つ目の試練で失敗していたから二つ目と三つ目の試練はわからないけど、前と変わってないのなら一つ目の試練ではウィンと戦うことになると思う。勿論本物じゃなくて試練の洞窟が作り出した幻だったけど······」
アオイから説明を受けながら歩いていると大広間に出る。
「ここで戦ってくださいと言わんばかりの場所だな」
「ん······前回もこの辺りで始まっていたと思う」
やはりその予想は当たっていたようで、目の前に青色の欠片のが集まり始める。
それはやがて人の形になり······大鎌を手にしたウィンさんの姿になる。
「ふん!」
取り敢えず試しとばかりに魔導書を投擲してみたが聞いていた通り魔導書はウィンさんの体をすり抜ける。
すり抜ける際に攻撃が当たっていた場所だけ青欠片が砕けるような感じになったので、思いの外スプラッターな事にはなってしまったが······勿論砕けた青い欠片は直ぐに元に戻っている。
アオイ(と気のせいか青い欠片で出来たウィンさん)に呆れた様な目で見られるが、仕方がないと思う。
カクニン ダイジ。
まぁ、これで俺の攻撃がこの試練では意味がないこともわかったし、補助に徹するとしよう。
「ブースト、リジェネ」
まずはこんなものだろう。後はアオイの様子を見て魔法をかければいい。
アオイも魔力を使用して周囲の温度を下げる······が、俺への影響を気にしてか試合で使っていた氷結の領域までは使っていない。
それと同時に青い欠片でできたウィンさん······あー、もうめんどくさいし欠片さんで良いや。欠片さんが鎌をふるって風の刃を飛ばしながら突進してくる。
試合のウィンさんと同じ様な動きだ。
対してアオイはそれを完全に見切って回避する。
アオイが回避した風の刃がこっちにも来たので慌てて回避しようとしたが、よく考えたらダメージは受けないって聞いてるし、少し試してみるか。
俺は敢えて少しだけ掠める様に風の刃を受けてみる。
しかし、ウィンさんが攻撃を受けた時の様に少し青い欠片が舞っただけで、俺にはダメージは入らない。
······少なくとも俺の体は青い欠片で出来ているわけではないはずなのだが。
そこからはアオイがウィンさんを攻撃するのを見ながら、回復魔法などで補助するだけの簡単な作業だ。
一回欠片さんが飛ばした風の刃が俺の体を真っ二つに両断したときは、痛みは感じないのに体の中を何かが入ってくるという謎の感覚を味わうことができた。
······まぁ、それを味わってからは進んで攻撃を受けようだなんて思えなくなったが。
そこからしばらくして、危険らしい危険も無く欠片さんの体が輝いたかと思うと、再び青い欠片に戻り、爆散した。
「私······」
「おめでとう」
恐らく前まで突破出来ていなかった試練を突破することが出来たという実感が感じられないのだろうと思った俺は、賛辞の言葉を送っておく。
「ううん。ノエルのお陰」
「いいや、アオイの実力だよ」
なんせ、俺が最初のバフをかける以外にしたことと言えば、バフが切れかけた時にかけ直すことと、たまにアオイに対してマナヒールをかけていたくらいなのだ。だからそこまで自分の功績が大きかったなどと言うつもりは無い。
「······ノエルは自分のしていることの凄さが全く解ってない」
アオイからしてみれば、バフを継続してかけ続ける等と言うのはとても難しいこと······いや、あり得ないと言っても過言では無いことなのだ。
バフの継続する時間は、魔法をかけるときに使った魔力によって大体決まってくるものだが、勿論それすらも数字などで管理されている訳では無いので、一回一回にそれなりのブレは発生する。勿論効果もだ。
更に、効果が切れるより前に新しくバフをかけると重ねがけが発生し、先にかけた方のバフが切れたりすることで、いきなり体の感覚が狂うために戦闘中に大きな隙を生むことになる。
それならまだ切れてからかけ直した方がマシだと言うものだ。
それなのにノエルのバフは途切れるどころか一瞬さえも効果の重複などが発生せずに私に付与されていた。
それだけでは無く、私の魔力が心許なくなってきたと思ったら、次の瞬間にはマナヒールで満タンまで魔力がチャージされる。
そのお陰でストレスを感じたり、力加減を考えたりする必要が無かったため、とても楽に戦えたのだ。
しかし、ノエルが見ているところはそんな所では無い事は理解していた。
ノエルが前に話してくれた、恩人であり憧れの『深夜の狼』と一緒に冒険できるくらいに強くなりたいという目標があるからこの程度で満足できていないのだろう。
それを考えると少し心が痛くなったが、アオイにはそれが何故かわからなかった。