フィデスさんとの会談
少々遅れまして申し訳ないです。今日中にもう一本······かけるかな?頑張ります!
「ふむ······? そんなことが? 少なくとも私はその様な話を聞いた覚えは無いな······」
冒険者ギルドに着いた俺たちは早速冒険者ギルドマスターであるフィデスさんの所に行き、事情を説明していた。
しかし、ギルドマスターであるフィデスさんは俺やアオイの冒険者資格剥奪についての話は聞いていないと言う。
「確かに私はその様な処分について聞いてはおらんが話を聞いた限り、可能性の指摘は可能だ」
「可能性の指摘?」
ノクスさんの言葉にフィデスさんが頷く。
「そもそも今回の大会は急遽行われる事になったこともあり、この話を持ってきた副ギルド長が仕切っておるのだ」
その言葉を聞くと同時に俺たちは皆ルールさんの方を見る。
皆に見つめられたルールさんは気まずそうに頷く。
「つまり、私が話を聞いていないのにノエル君達が冒険者ギルド員の資格を剥奪される可能性として一番高いのはこれだろう······というよりもむしろこれしか思い付かんわ」
「と言うことはその副ギルド長さんが俺達のギルド資格を剥奪したから結局俺たちは冒険者をやめなきゃいけないってことですか?」
俺の言葉にフィデスさんは苦笑いして首を横に振る。
「話を聞いた限りでは確かにやり過ぎな面もあったとは思うけど、ルールに明記してあった冒険者ギルド証を剥奪する条件は『相手を死に至らしめた場合』だ。第一言っちゃあれだけどその程度で冒険者資格の剥奪なんてしてたら今頃冒険者に登録している人間の数は半分になっているよ」
「ではつまり?」
「あぁ、冒険者ギルドマスターフィデスの名において宣言する。今回の一件に関してはノエル君とアオイ君の冒険者資格の剥奪は撤回させてもらうよ。ついでに勝手にルールをねじ曲げた副ギルド長君もここに呼び出してどういうつもりなのか確認しておこうか」
そう言うとフィデスさんは手元にあった鈴を鳴らした。
しばらくして扉がノックされる音がして、一人の男が入ってくる。
「お呼びでしょうか? ギルド長。むっ!? これは治療師ギルドのギルドマスター殿にルール君、そして······本日付で冒険者資格を剥奪されたノエル君とアオイさんではありませんか。ワザワザ自分から返しに来てくれたのですか? そんなことをしなくてもルール君に渡してもらえればよかったんですのに」
入ってきていきなりすごい勢いで話始めたよこの人。って言うか誰!?
「よく来てくれた。副ギルド長ジン君」
あっ、この人が副ギルド長か。
······さっきギルドマスターからギルド証の剥奪は無いって伝えられたからか俺のテンションがおかしいことになってるな。俺は思いの外冒険者をやめなきゃいけない可能性に神経質になっていたのかも知れないな。
「君を呼んだのは他でも無い。君が冒険者ギルドを退会させようとした若い冒険者の事について話を聞きたいと思ってね」
「ふむ、それはそちらにいらっしゃるノエル君とアオイ君の事でよろしいでしょうか?」
ジンさんの言葉にフィデスさんが頷く。
「何故と言われましてもヤマト家の要請ですね。そこの彼らがヤマト家の御息女をルールの外で瀕死の重体にまで追いやったとか? 更に審判の言うことを聞かないなどと反逆の意思すらも見せていたと聞いております。資格の剥奪には十分な理由だと思いますが?」
ジンさんの言葉に俺はぐうの音も出ない。別に反逆の意志があるわけでは無いが、審判の声が聞こえていた訳でないとしても、従わずにウィンさんを攻撃していた訳だし、審判の声が聞こえていなかったと言う証明もできないのだ。
「ふむ、ルール外で傷つけたと言う理由で二人が冒険者資格を剥奪されるのなら、不正をした可能性があるウィン・ヤマト殿とセバ・スチャン殿も冒険者資格を剥奪されるべきだと私は考えるが······その点どう思うかな? ジン君」
「不正ですか? 少なくとも私が試合を見ていた限りその様な事実は確認できませんでしたが······?」
その言葉と共にフィデスさんから何かが吹き出したのを感じた。
見たわけでも、何か音が聞こえたわけでもないのに、何かが出てきたのを感じたのだ。
「あ? 貴様とぼけるつもりか? それとも直に見てて気づかなかったのか? それならどっちにせよ副ギルド長なんてやめちまえ! てめぇ何かより入り立ての下っぱの方が全然使えらぁ!」
いきなりフィデスさんの言葉がかなり粗っぽくなった!?
「なっ、何のことでしょう?」
「マジでわかってねぇのか? そこにいるアオイはウィン・ヤマトの攻撃で致命傷を負ってると俺は報告を受けたんだが? それも試合が終わってから悠長に治療しても間に合うようなちんけな傷じゃなくてノエルが治療しなきゃ死んでたくらいの怪我だ!」
フィデスさんはかなり怒っているのか語気が荒くなっているのと同時に俺とアオイの事も呼び捨てになってるな······可愛そうに、その怒りを直接くらってるジンさんはかなり参ってるようだ。
俺たち? 俺たちは別に直接その怒りをもらっている訳じゃないからそこまで何か感じたりはしないかな。
「そっ、それは偶然にも故障していた物が混じっていたと報告を受けております」
「ほぉ? その後の試合には故障したものが一つも無かったのに一つの試合の、それも片方の陣営に二つもの故障した魔道具があったと言うのか? すごい偶然もあったものだな?」
あれ? 二つ? 少なくとも俺は致命傷を受けていないから本物を持っていたとしても発動していなかったのでは?
ジンさんもそう思ったのか、
「しかし、ノエル君は致命傷を受けていないはず······」
「アホタレ! いくら瞬時に回復するからと言って全身を切り刻まれる様な攻撃に反応しないわけがあるか!」
とフィデスさんに怒られてた。
あっ、つまり本当の魔道具でやってたら俺達負けてたかも?
「それに致命傷を負った選手がいるのに審判が止めなかっただぁ? 普通は不測の事態があった時点で無理矢理試合を止めるだろうが! なのにウィンの方はさっさと止めたくせにアオイの時は止めなかっただぁ? その審判明らかにおかしいだろうが!」
フィデスさんの言葉に唇を噛み締めるジンさん。
何か言葉を返そうと口を開こうとするが、その言葉は開かれた扉から入ってきた女性······ミズキさんに遮られた。
「ノクスさん! 大変です! ウィンが······ウィンが逃走しました!」
えっ!? 何々!? ウィンさんが逃走? 一体何があったんだ?