使者
次回投稿は······明後日(の予定)です!
俺は怒りの章のページをそのままノクスさんに見せる。
「······具体的な事は何もかかれていないが一応原因らしきものはわかったね。あの時の君は文字通り怒りに呑まれていたんだろう······心当たりはあるかい?」
「はい、アオイが胸を貫かれた時の光景が母が死んだ時の光景にダブって見えたんです。俺は二度とあんなことが起こらないように強くなろうとしていたはずなのに、また同じことが起こってしまった······その事が······防げなかった自分の無力さが許せなかったんです」
俺の言葉にノクスさんが呆れたような顔でこちらを見る。
「どうしたんですか?」
「まぁ······君の言葉で何となくその『怒りの章』とやらが、君の怒りに呼応して発動するってことはわかったんだが······その前に一ついいか?」
何を言いたいのかわからないが取り敢えず頷く。
「ノエル、君は神様にでもなったつもりなのかい? 確かに君はその年ではあんまり考えられないくらいには強い。だけどまだ君自身は10代の子どもなんだ。そんな君が出来ることなんてたかが知れている。少しずつ出来るようになればいいんだ。人間は決して万能ではないんだよ」
「······それは······そうですが······」
俺は何とも言えない気持ちになり俯く。
「それにだ。力が足りない内はミズキ君や俺だって助けられる······まぁ、今回助けられなかった俺が言っても説得力は無いかもしれないけどね」
最後に苦笑と共に付け加えられた言葉に俺もつられて苦笑する。
しかし、ノクスさんやミズキさんに助けられる日は思いの外早く来ることになった。
「失礼。ノエル殿がいるのはここでよろしかったかな?」
突如治療師ギルドに現れた冒険者ギルドの使者と名乗る男が発した次の言葉によってだ。
「大会規定に基づきC級冒険者ノエルの冒険者資格を剥奪する」