ノエル&アオイVs.ウィン・ヤマト&セバ・スチャン3
「チィッ! 周囲を寒くするだけかと思ったら······意外と固い!」
それはそうだ。只でさえ氷と言うものはそれなりの強度を元から持っている。それを私の魔力で更に補強しているのだ。
今の私はそんじょそこらの茶魔法師よりも防御力が高くなっているはずだ。
現に家を飛び出す前の私をズタズタに切り裂いていたウィンの鎌は、私の体に触れる前に私の周囲の氷に防がれている。
その際に少し傷をつけてはいるが、その傷も、新たに補充される氷によって補強されるため、ウィンの鎌が私に届くことは無かった。
その事実を確認すると同時に、体の震えは止まっていたし、ウィンへの恐怖も薄れていた。
「······アイス・ニードル」
流石に守っているだけでは勝てないのでウィンが切りかかってくるタイミングで、私も攻撃に転ずる。
私の周囲を覆っている氷から無数のトゲが生えてウィンに襲いかかる。
「──ッ! チィッ!」
ウィンは舌打ちを一つすると、風の魔法を使って自らを後ろに吹き飛ばすことで、氷の針による串刺しを防ぐ。
「······発射」
ウィンが体勢を整える前に生えていた氷のトゲをウィンに向けて射出する。
「ぐっ!」
慌てて回避しようとするウィンだったが完全に体勢を整えていた訳では無かったため、一歩目で出遅れた。
そのお陰で何本かのトゲがウィンに当たる。
「なっ!? 何よこれ!?」
ウィンに当たったトゲは、その場所を中心に少しずつ凍らせていく。
慌ててウィンは火属性魔法を使ってその氷を溶かした。
「お返しよ! あんたの氷は水属性······なら地属性には弱いでしょ! アース・バレット!」
ウィンの魔法により、無数の土塊が飛んでくるが全て私の氷の表面に傷をつける程度でしか無かった。
「······アイス・ランス」
お返しとばかりに氷の槍をウィンに向かって放つ。
「そんなの当たるわけ······キャッ!」
ウィンはかわそうとするが、かわした先が、先程ウィンに当たらなかったアイス・ニードルによって凍らされていたため、体勢を崩す。
アイス・ランスはかわされたが、追撃で放ったアイス・バレットがウィンに着弾した。
「くっ! このぉ!」
再び火属性魔法で氷を溶かして襲いかかって来るウィンだったが、やはりウィンの魔法は私の氷によって阻まれる。
しかし······何だろうか? さっきからずっと思っているのだが······
「······ウィン······あなた弱くなった? ううん、違う······最後に戦ってから強くなっていない?」
私の言葉にウィンがこちらを睨み付ける。
「ふざけるな! 私が弱くなっただと? そんな訳があるか! これは何かの間違いだ! 私相手に何もできなかったあんたが私より強いだなんて······そんなの認めるか!」
そう叫ぶとウィンは懐から何かを取り出して服用する。
「───ッ!?」
それを服用した途端に、ウィンから感じる圧が明らかに増大した。
「ふん!」
いきなりウィンから風の刃が飛ばされる。
「──っ! アイスシールド!」
直感的に危機を察して、自分と風の刃の間に五枚の氷の盾を展開する。
飛んできた風の刃は氷の盾を5枚とも粉砕し、私の周囲を覆っている氷を砕いて、首の薄皮を少し切り裂くと消滅した。
首の傷も直ぐに周囲の温度によって凍りつき、出血が止まる。
しかし、先程まで私の氷を突破できていなかったはずのウィンの風がいきなり威力を増した理由が全くわからない。
「·······え?」
私はその理由を探るためにウィンの方を見るが、そこには
「グガガガガ······ウガァァァァア!」
頭を抱えて発狂しているウィンがいた。
そして、そのウィンが叫ぶ度に四方八方に風の刃が放たれる。
「······ウィン······様!?」
「なんだこりゃ!?」
その内の一つが運悪くセバ・スチャンさんに当たるが、その風の刃は、セバ・スチャンさんの胸元から放たれる光の壁によって防がれた後、セバ・スチャンさんが消える。
飛んでくる風の刃を防ぎながら周囲を見回すと、訓練所の入り口で観客や審判を守るための結界を叩きながら何かを叫んでいるセバ・スチャンさんを見つけたので、恐らく致命傷を負った際の身代わり機能が働いたのだろう。
「アオイ! 何があったんだ!? ······ってさぶっ!!」
ウィンが飛ばしている無数の刃をかわしながらノエルがこちらに近づいてくる。
その際に私の氷結の領域に入ったため、一気に温度を奪われているのだ。
私は慌てて氷結の領域を解除する。
実はこの氷結の領域だが、かなり防御力も高いし、制圧力も高いのだが、かなり魔力を食ってしまうのだ。
更に動けないため、ウィンから飛んでくる風の刃を防ぐためには更に余分の魔力を使うはめになる。
それならば、ノエルがこちらに来た以上解除して普通に回避した方がましと言った物だ。
「何か飲んだ瞬間ウィンがあんな風になった」
「なるほどわからん! でもこれは少しまずいことになったな!」
「まずいこと?」
最悪あの風の刃に当たってもあの風の刃でも壊せない光る壁が守ってくれて、尚且つ結界の外に飛ばされるだけなのだ。言い方は悪いが、セバ・スチャンさんが身をもって証明してくれている。
負けるのは悔しいが、それでも、私がウィンと戦えるくらいには強くなったと言う証明はできた。
これからも頑張っていけばいずれ追い抜くことも出来るだろう。
「あぁ、実は······」
しかし、ノエルが語ってくれた話はそんな事情など関係無しに「まずい」と言える物だった。
今年の投稿はこれでラストとなります!
次は年明けでの投稿となります。
まだ、書き始めて少ししか経っていない作品ですが、来年もよろしくお願いいたします!
それでは良いお年を!