学校ダンジョンの氾濫その4
「いいや、お前はもうここで終わりだ······」
立ち上がり、黒い炎を纏ったレオを再び銃撃するイグニスさんだったが、レオはびくともしない。
「······? どういうことだ?」
イグニスさんは首をかしげて二発、三発と銃撃していくが、やはりレオは何の反応も示さない······というよりはむしろ
「当たる前に銃弾が消滅してるって感じか······」
「ヒャハハハハ······大正解だぜ! 今の俺様はある方からお借りした『暴食の魔炎』って言う他者の魔力を喰らう事が出来る炎を纏っている! それにステータスだけならS級の魔物にも匹敵するぜ! あんたらがいくら単独でS級の魔物を倒せると言っても魔力攻撃無しで俺様を抑えるのは無理ってもんだろう! なぁ?」
「ちっ!」
イグニスさんが舌打ちする。確かに魔力が吸収されるとなると、魔力を弾丸として打ち出して攻撃するイグニスさんと、主な攻撃方法が魔法のシエラさんが攻撃できなくなる。
それに、レンさんも魔力を纏わせて切れ味を上げたり攻撃範囲を伸ばしたり出来なくなると言うことだ。
攻撃に全く阻害を受けないのはウェルさんだけだが、そのウェルさんも守りの面で魔力を利用しているため、確かに今回は深夜の狼のメンバーだと厳しいかも知れない。
だけど俺なら······
「俺にやらせて下さい」
「ダメに決まって······勝算はあるのか?」
「ダメに決まっているだろ!」と言いそうだったウェルさんだったが、俺の真剣な目を見て勝算があることを理解したらしい。俺は素直に頷く。
「ただし、俺もこの技を実践で使うのは初めてです。一応5分は大丈夫だと思いますが、俺が明らかに危ないと感じたら助けに入ってください」
「ふむ······それならば俺がやった方がリスクも少なそうだが······」
「俺も深夜の狼の皆に今の全力を見てもらいたいですから」
「そうか·······わかった! その時は任せろ! ノエル······お前の成長見せてもらおう!」
そう言って後ろに下がるウェルさん達。
俺はそれを確認すると、詠唱を始める。
「我が魔力よ、今こそ我に眠りし力を解放せよ! 全力行使!」
詠唱が終了した俺の体を白い魔力の光が包み込む。
「何をする気······ぐべっ!?」
俺の状態を見て首をかしげたレオの顎に俺が投擲した魔導書がぶつかる。
「アポート」
俺の呟きと同時に魔導書は手元に戻ってくる。そして、レオが体勢を建て直す前にその体を殴り付ける。
吹っ飛ぶレオを追い抜いて上空に蹴り上げ、ジャンプすると、上からレオに踵落としを決める。
更に魔力で足場を作って蹴ることでレオより早く地表に到達すると、地面に叩きつけられる瞬間を狙ってもう一度踵落としだ。
「ぐはっ! そんな······バカな······こんな事が······あるわけが······」
そう言って立ち上がろうとするレオに追撃をかけようとするが、それを牽制するかの様に放出された魔力によって、追撃は諦めざるをえなかった。
「貴様······何をした! S級レベルの視力を持つ今の俺でもその動きが見えないなど有り得ん!」
「悪いが説明するつもりは無い! ······思いの外限界も早く訪れて来てるからな······お前には眠って貰う!」
そう叫んでレオの後ろに回り込み、魔導書を振りかぶる。
それに気づいたのかもう一度レオが魔力を放出した。その魔力によって少しずつ傷つく俺の体。振り返ったレオはそんな俺を見て笑った。
「はっ! バカめ! 俺の魔炎によって食い尽くされろ! ······なっ!?」
しかし俺の傷ついた体は即座に回復し、そのまま俺によってレオの頭の上に振り下ろされる魔導書。
ゴチン!
「がぁ!」
短い悲鳴と共にレオは地面に倒れ付した。
「ふぅ······流石にもう限界だ······思ったより持続時間が短かったな······」
それと同時に俺も全力行使を解除してその場に座り込む。
「よくやった! ノエル······本当に強くなったな······後は俺達に任せてしばらく休むといい」
レオの身柄を確保しながら俺の頭をポンポンと叩いてくれるウェルさんに甘えて、疲労感が限界に達していた俺は少し休むことにした。
本日の投稿は以上です。
全力行使······何となくどんな能力かわかった人も多かったのでは無いでしょうか?
作者としましてはこの技をノエルの切り札にするつもりだったりそうではなかったり······
兎に角、白魔法師で最強へと考えたときの攻撃手段が過回復と全力行使の二つだけだったので、これからどうやってノエル君を強化していくか悩みどころだったりします······
まぁ、実は今のノエル君の全力行使は未完成なので、それをラスボスまでに完成させるかそれとも別の必殺技を考えるか······ゆっくりと、作者のペースでやっていきたいと思います。
これからも読者の皆さんに楽しんで頂ける様に、また、書いてる作者自身も楽しめるように頑張っていきますので応援よろしくお願いいたします!