学校ダンジョンの氾濫その2
今回はあの人達が······
「さてと······どうするか······取り敢えず行け! 一番!」
レオの言葉と共に魔物四体の内一体がこちらへと駆けて来る。見た目はミノタウロスの上半身と馬の下半身が合体したような感じだ。手にハルバートを持っている。
「ブルゴォオオオオ!」
俺はブーストをかけて魔導書を投げることで牽制しようとするが、やはりというか何と言うか止まってはくれない。
一応ブースト状態の投擲はE級程度の敵なら足止めくらいにはなるのだが、それを全く気にせずに走ってきている感じからこの敵の実力は最低D-級だろう。
今の俺の実力はブースト込みで冒険者で言う所のD級上位、魔物で言うところのD級だ。
一応過回復等もあるから、実質的には一部の敵を除けばランク関係無しに倒せるが、相手がB級を越えるならば触れることすら出来ずに倒されるだろう。
「ブルゴォオオオオ!」
「考えていても仕方ないか······過回復!!」
取り敢えず相手がこっちに突っ込んできてくれるなら過回復で倒すだけだ!
「──ブルァ!? ブルゴォオオオオ!」
「──なんだと!?」
しかし、相手は俺の過回復の範囲手前で止まると手で持ったハルバートを投擲した。
俺はアポートを唱えて魔導書を手元に引き寄せるが、ハルバートの到達速度はかなり早く、それが限界だった。
辛うじて魔導書をハルバートの刃の部分に当てる事が出来たが、投擲されたハルバートは思いの外重く、俺は吹き飛ばされる。
「がはっ!」
木にぶつかって一瞬意識が飛びかけたが何とか踏み留まった。その瞬間に俺の視界に影が入る。
慌ててその場から飛び退くと、先程まで俺がいた場所には襲ってきた魔物の蹄が刺さっていた。
一瞬でも飛び退くのが遅ければ俺は地面と一緒にバラバラになっていただろう。
俺は少しでも距離を稼ごうと、過回復を展開する。
ゴリゴリと魔力が減っていくが、魔導書にもそれなりの魔力を貯蔵してある。まだしばらくは持つだろう。
魔物もハルバートを拾い上げると俺の過回復の範囲ギリギリに立ち、構える。
「クハハハハ! どうだ! 俺様があの方から譲っていただいた魔物は! コイツらは全員A-級の力を持っている! てめぇじゃコイツらは倒せねぇよ!」
ここでレオからの残念なお知らせだ。
もし、レオの言うとおりコイツらがA-級なら──動きの早さや一撃一撃の威力から考えても十中八九俺よりは格上だが──俺一人では勝てない。
恐らく切り札を使えば一匹や二匹なら倒すことは可能だろうが、その後俺は動けなくなってなぶり殺されて終わりだ。
そう考えると撤退しか無いのだが······
俺は一瞬迷ってしまった。
そして、その一瞬が俺から撤退のチャンスを奪った。
「はっ! もっと遊んでやっても良いんだが······そろそろお仕事の時間だ。二~四番! お前らも行け!」
そのレオの言葉と共に俺の四方が囲まれる。
真っ正面にはさっきから俺を攻撃している魔物がハルバートを構えて、俺の右手には二つの顔を持った巨大な犬が口の中に炎を纏って、俺の左手には棍棒を持った巨大なゴリラが棍棒を振り上げて、後方では猿の尻尾に蛇がついた魔物が周囲に氷の礫を浮かべている。
このままじゃ、確実に死ぬ······こうなったら一か八か温存していた切り札を使って一点突破を······
そう思った瞬間に俺の周囲を囲んでいた魔物達が大きく後方に跳ぶ。そして、何かを警戒するかのように身構えた。
次の瞬間、先程まで魔物達が立っていた所に炎を纏った弾丸が着弾する。
「さーてと······何とか間に合ったみたいだな。流石に距離ありすぎて察知されたが······」
「まぁ、良いんじゃないですか? ノエル君が無事だったんですからー」
その声に俺は弾かれた様に後ろを振り返る。そこには銃を構えたイグニスさんとレンさん、それに······
「戦闘中に後ろを振り向くのは厳禁ですよ······不意を突かれますから」
「ギャン!」
後ろを振り向いた俺を狙っていた、双頭の大型犬を杖の一振りで吹き飛ばすシエラさん。そして······
「ふむ、オルトロスに鵺にブラッドミノタウロスにエンシェントアースエイプか······全員A-級······ノエルが幾ら強くなったと言っても流石にまだ無理だろう。ここは俺達に任せると良い······頑張ったな」
俺の隣を通って魔物達の前に出る時に俺の頭を軽く叩いて行くウェルさん。
深夜の狼のメンバーが俺の代わりにA-級の魔物の前に立ちはだかった。
良いところで終わってしまいましたが、本日の投稿はここまでです。
次回投稿は明後日か月曜日になると思います!
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