事情聴取
テツとレッカとニナは実習の翌日には目を覚ましていたようだ。
後遺症や障害等も無く、普通に授業に参加してた。
唯一の変化と言えばアオイから、あのミノタウロスを倒したのが俺だと聞いて
「すげぇな! あのミノタウロスを倒しちまうなんて!! 正直白魔法師だからって使えねぇと思ってたんだけどな······これからもよろしく頼むぜ!」
「ニナ達を助けてくれてありがとうにゃー! ニナももっと強くなって今度はニナが敵を倒すにゃー!」
「俺達もノエルに負けないように精進することにする······そうだ! 今度模擬戦でもしないか?」
「私の特訓にも付き合って」
とパーティーの皆との仲が少しだけ良くなった事だ。
今日はレスト先生からレオ達のパーティーによって落とし穴に突き落とされた件について話がしたいと座学終わりに残ってほしいと言われており、俺達とレオのパーティーは教室に残っていた。
「それでは皆さん揃いましたので話し合いを始めましょうか。まずは時系列順に起こったことの確認から」
一応今回は司会として中立のレスト先生が話を進める形となる。
「まず、例の宝箱なのですが······先に見つけたのはテツ君達第10パーティーで間違いないですね?」
その問いに両者が頷く。
「そして、第10パーティーが宝箱を発見した所を偶然にレオ君達第3パーティーが見つけた。その後第3パーティーではレオ君の『隙を見て宝箱を先に開けよう』という意見と、それ以外の皆さんの『先に見つけたのは第10パーティーなんだから諦めて別の物を探そう』という意見で別れた······第3パーティーの皆さんはそれで間違いないですか?」
レスト先生の言葉に頷く第3パーティーの皆。
えっ!? じゃあどうして俺達は襲われたんだ!? 明らかに襲わないっていう意見の方が多いじゃないか。
思わずそれを口に出しかけたが、それより先にレスト先生が聞いてくれたので口に出す事はなかった。
「しかしながらあなた方第3パーティーは結局宝箱の中身を手にいれていますね? どういう経緯で手にいれたのですか? また、第10パーティーの皆さんも矛盾点などがあれば後で聞きますので、よく聞いておいて下さい」
レスト先生の言葉に頷いて、レオのパーティーの女の子が語り出した。
「最初にレオが『先に宝箱を開ける』と言った時は私たちは反対しました。まず、一本道でそこまで道が広くなかったので、横から突破は難しかったですし、それ以外の方法になると攻撃することになり、ルールで違反となります。なので宝箱を先に開けるというのは殆ど不可能に近いですし、失敗した時のリスクが大きすぎたからです」
そりゃあそうだ。あの通路では横に並べたとしても二人だ。俺達も先頭をニナにして残りは二人ずつで歩いていたし。
その後はレオが引き継ぎ語る。
「しかし、俺としてはダンジョン1階層で宝箱が出るなんて幸運見逃すのは惜しいと思ってな······コイツらに宝箱の中身がマジックアイテムだったときの価値や、それ以外の場合でも中々良いものが入ってると力説して尚且つ第10班が隙を見せなければ実行しないって約束してようやく乗り気になった」
なるほど、そして俺達は罠に気づいて止まったニナに注目するという大きな隙をつかれて突き飛ばされた訳だ。
「なるほど······そして宝箱の中のマジックアイテムを取って戻ってきたと。それでは私が心当たりを聞いたときに報告しなかったのは?」
レスト先生が今度はレオ以外の者を差して問う。
「まず、俺達は罠に嵌まったとは言っても落とし穴だし、直ぐに一階層に戻ってくることはできると考えていたので直接的な原因ではないと思ったのと、俺達が言うべきか悩んでいる間にレオが先に先生に『心当たりが無い』と答えちゃったので······それにその後レオが言った『どうせ宝箱の代わりを探して頑張ってるだけだろ』っていう言葉に納得しちゃったのもあるんです······まさかボス部屋に落ちているだなんて考えもしなかったので」
「ふむ······」
レスト先生が頷く。
「それでは第10パーティーは落とし穴に落ちた後何があったか説明して下さい」
レスト先生の言葉にテツがこちらを見る。
どうやら俺に説明しろと言いたいようだ。
俺はテツに向かって頷くと
「俺達は落とし穴に落ちた後、皆特に大きな怪我は無かったのでそのまま一階層に戻ろうかと思っていたのですが······そこがボス部屋だと気づき、苦労の末ボスであったミノタウロスの変異種を倒しました」
俺は変異種を強調するように話す。
「はっ! 変異種だなんてあり得ねぇだろ! それが本当ならお前等は······「レオ君。今は第10パーティーの説明中です。口を謹むように」······」
先生の言葉により、レオが強制的に黙らせられる。
「あなた方第10パーティーがボス部屋に落ちたことは、問題の場所の場所からほぼ確定で大丈夫なんですが······流石にボスの変異種と言うのは私でも信じられません······なので、魔石を見せてもらえますか?」
レスト先生の言葉に俺とアオイを除いたメンバーが不思議そうな顔をするが、俺とアオイは冒険者のおじさんから話を聞いていたため、直ぐに理解し、俺が魔石を先生に渡す。
「黒い······魔石だと!?」
「成る程······通常魔石はその魔物が持つ属性の色となるが、変異種の魔石はどの様な属性を持っていようとも黒となる······しかもこの大きさだと実力的には最低でもD級の力はあったと推定されますね······つまり、本当にボスの変異種を倒したと言うことですか」
レスト先生が俺に魔石を返してそう呟く。
しかし、レオは納得できないのか
「しかし! もしかしたら誰かから買い取ったのかもしれませんよ? D級の魔石なら金貨1枚あれば買えるはず······」
「通常の魔石ならそうでしょうが、変異種の魔石は滅多に出回らない上に秘められたエネルギー量も通常の魔石よりも多く、最低でも金貨50枚は固いです。それもただ、魔石買い取り所で売った場合の値段なので、他の人から買うなら金貨70枚は考えないといけないですね······レオ君はそんな大金をノエル君が言い訳の為だけに用意したとお考えですか?」
「······」
先生の言葉にレオは黙る。
「さてと······確かに第3パーティーのした事は褒められるべきでは無いにしてもルール的には問題ありません。······正直に言って気分は悪いですが、元からそこに罠があると確信しての行動だという証拠が有るわけでもないですし······あるとしたら冒険者として、他の冒険者の危機を上の者に知らせなかった事です。しかし、その行動によって第10パーティーが深刻な生命の危機に陥ったのも事実······よって、第3パーティーは今回の実習で手に入れた収益の内3割を第10パーティーに支払い、謝罪を行う事とします」
先生の言葉に第3パーティーは項垂れるが、仕方ないとばかりに受け入れていた······1人を残して
「何でだよ!! 冒険者を目指すなら死ぬ覚悟ぐらい出来ているはずだ! それに冒険者同士での争いも日常茶飯事のはず! なのに俺等がどうして損害を受けなきゃいけないんだ! おかしいだろうが! 先生もさっき俺等の行動はルール的には問題ねえって言ってただろ? ······それにコイツ等は別に誰かが死んだわけでもねぇ! 無事に帰ってきたんだから問題ねぇだろ!」
レオだった。それを見てるパーティーメンバーも驚いたかのようにレオの方を見ている。
「レオ君······それは本気で言ってるんですか?」
レスト先生が声を低くして聞くが、レオはそれに気づかない。
「当然だろ! 俺等が落とし穴があるってわかってて落としたならともかく、俺等がやったのはただ押しただけだ! そんなことで今回の収益の3割を支払えだと!? あり得ね······「もういいです」······え?」
レスト先生が悲しそうにレオの方を見る。
「冒険者とは魔物と戦うだけでは無く、人を助けることも仕事に入ります。そして、自分の命を含めた人の命が左右される仕事です······」
レスト先生の腕がゆっくりと上がっていく
「そんな仕事に就こうとしている者が自分のしたことに対する責任を取れないと言うだなんて言語道断だと考えます。これだけは言いたくありませんでしたが仕方がありません······」
そして、その指がレオを差した。
「冒険者養成学校講師、レストがここに宣言する! 彼の者 レオ 冒険者の資格無しと判断し、彼から冒険者の資格を剥奪する」
その言葉に教室がシーンと静まったのは言うまでもない。
後1話くらい今日中に更新できたらいいな······
頑張ります!