正しい魔導書の使い方
前話を書いた後、沢山の読者の皆様から「武器が強すぎる」との意見を頂きましたので、前話をかなりいじらせて頂いております(10月29日AM4時30分前後)よって、変更前に読んでくださった皆様はお時間ありましたら是非とも前話から読んでくださるとありがたいです。
今回はご迷惑をおかけしました。
俺が魔導書ホワイトを手に入れてから5日が経ち、再びダンジョン実習の日がやって来た。
今回のお題はダンジョンから魔石、お宝、鉱石等々······なんでもいいから持ち帰ることだ。
ちなみに今回は前回のお題とは違って多少の妨害は許容されている。実際の冒険者になったときに見つけた財宝の奪い合いなどは、普通に有りうるからだ。
ただしあくまでもこれは実習のため、直接戦闘は禁止な上に、妨害するにしても相手に行きすぎた怪我を与える行為の禁止など様々なルールがある。
ちなみにその裁定は見回っている冒険者達によって行われるのでその基準はあやふやになるわけだが。
更にいくつ取ってきても構わないが評価されるものは一つだけだ。
前回の様に魔石を幾つもって帰ったからと言って評価が上がることはない
前回と変わらないのは取ってきたものがそのまま自分達のパーティーの物になるという点だ。
諸々のルール説明を受けてダンジョンに入る。
「さてと······何を持っていくか」
範囲は一階層の中での話なので正直そこまで価値が高いものなどないのだ。
多分F級のコボルトの魔石でも割と上等な物の部類に入るだろうし。
そんなことをパーティー内で話ながら歩いているとゴブリンに遭遇する。
「おっ、ゴブリンだ。誰がやる?」
最初に気づいたのはレッカだった。ゴブリンはまだこちらには気づいていない。
ゴブリンか······丁度良いかもしれないな。
「なぁ、俺にやらせてくれないか?」
俺はパーティーメンバーを順番に見回してから言う。
「そうは言うがノエル。お前は白魔法師だ······それに武器もない」
「武器なら今回はあるよ」
最初に反対してきたテツに魔導書を見せる。
「本?」
「本にゃ?」
レッカとニナは首を傾げていたがアオイはしばらく魔導書を見つめた後
「······魔導書?」
と呟いた。
俺はアオイが知ってることに驚いたが、とりあえずあっているので頷く。
「アオイ。魔導書ってなんなのにゃ?」
「魔導書とは魔法に関する書物のことを言う。中に魔法が封じられている物や魔法の発動を補助してくれる物なんかがある」
ニナの質問にアオイが答えるがニナはあまり理解できていなかったようで首を傾げている。
「ふむ、要するに魔物と戦うための武器にはなりうると言う認識で構わないか?」
やはり理解できていなかったテツの質問に頷くアオイ。
「ならやらせてみても良いんじゃないが?テツ。危なければ俺たちが助ければ良いわけだし」
「ふむ······それもそうだな。よし、ノエル。やってみろ」
テツの言葉に頷き、魔導書を手に持ってブーストを発動するとそのままゴブリンに向かって走り出す。
「え?」
誰かが呟いていたが無視して一直線に走ると、こちらに気づいて臨戦体制をとったゴブリンに向かって魔導書を投擲する。
「グエッ!」
という声を出してのけ反っているゴブリンの目の前まで到達すると「アポート」と唱えて手元に魔導書を召喚。
その後ブーストで強化された腕力でおもいっきり魔導書を振りかぶる。
バキッ
という音と共に首が変な方向に曲がったゴブリンが地面に倒れ伏す。
俺はそのゴブリンから学校から借りている解体用のナイフで魔石を取り出すと皆の元に戻る。
一時はこの解体用のナイフで戦ってみようと思ったこともあったのだが、流石に借り物で戦うのはおかしいと思ったし、このナイフ割と良いもののようで、紛失した場合パーティーでかなりの金額を請求される。
そんなものを壊れるリスクのある戦闘で使う気にはなれなかった。
皆の元に戻ると何故か皆から変な視線を向けられた。
「なぁ、本って殴るためのもんだっけ?」
「いや、俺の記憶が正しければ違うような気がする」
「その前に投げるものでもないにゃ!」
「プクク······魔導書を投げるって······プクク」
何故かアオイだけはツボにはまったらしくしばらく肩を震わせていたが······