魔物襲来
それは僕たちの夕食の時間にやって来た。
最初に気づいたのはお父さんだった。
「ん? なんだか地響きのような音が聞こえないか?」
そのお父さんの言葉に僕もお母さんも耳をすませる。
確かに僅かだが何かが走っているような音が聞こえる。
「ちょっと様子を見てくる······「大量の魔物が襲ってきたぞ!! 皆逃げろ!」······なに!?」
様子を見に外に出ようとしたお父さんは外から聞こえて来た声に動きを止める。
慌てて家族揃って外に出るとそこには信じられない光景が広がっていた
燃える家、逃げ惑う知り合いのおじさんおばさんや近所の友達······そしてそれを追いかける異形の怪物
恐らくあれが魔物なのだろう。生まれてきて12年。初めて魔物を見た僕は恐怖に固まってしまった。
その固まってしまっている間にも村は悲鳴や魔物の咆哮が聞こえてくる。
そして不意に
「ノエル! 危ない!」
その言葉と共に突き飛ばされる。
声からお母さんの声だとわかるがなんで突き飛ばされたのかわからず声が聞こえた方を見る。
「······え?」
そこには僕を突き飛ばした体勢のままで魔物の爪によって串刺しにされているお母さんの姿があった。
どうやら僕を後ろから襲おうとしていた魔物に気づいて僕を庇って代わりに刺されたようだ
「ノエル! 逃げるぞ!」
未だに現実を受け入れる事ができない僕の手をお父さんが握って走り出す。
幸いにも追いかけてくる魔物は動きが鈍かったので、振り切って魔物のいる場所を避けて村の出口の方へと駆けていく。
村の中心部をチラリと見ると沢山あった家は焼けて、沢山の魔物が逃げ惑う人達に襲いかかり、その度に悲鳴が上がっていた
そこにあったのはまさに地獄絵図とも言える光景で······
どこか夢の中にいるみたいで······
しかし、そんな思いは直ぐに幻想だと思い知らされる事となる。
「ちくしょうが!!」
お父さんが村の入り口を見て毒づく。
お父さんの視線の先を見ると豚のような魔物がこちらに向かって走ってきていた。
しかも3匹も······
いくらお父さんが鍛えているとは言っても職業持ちではないお父さんでは一番弱いF級の魔物1匹でさえも苦戦するどころか基本的には勝てないのだ。
しかもお父さんは素手なのに対して魔物は手に武器を持っている。
結果は明らかなのだ。
お父さんもそれを悟っているのか
「うぉおおおおお!」
と大声を出して魔物の気を引きながら僕から離れた場所へと走っていく。
それに釣られるかのようにお父さんの方へと向かう魔物たち。
しかしそれは他の魔物をも引き寄せる事になってしまい······
あっという間に挽き肉になってしまったお父さんを見ても、何故か僕は動けなかった。
いや、本当ならばお父さんが時間を稼いでくれたのだから逃げなくてはいけなかったのだ。
しかし、僕の体は僕の意思とは反して動いてくれなかった。
そして先程のお父さんのように魔物に囲まれることとなる。
そんな中で僕は死を感じながら目を閉じて暗闇に意識を落とした。