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求める理由

2月とか言っておいて相当期間が空きました………。申し訳ないです。


『今の君には僕の力を扱わせるわけにはいかない』


 魔導書ホワイトの口から出た拒絶の言葉に俺は固まってしまう。


「なん…………で?」


『魔王を倒す。なるほど、それは大切なことなのだろう。現に君にとっての今の最優先事項に位置するのは間違いなくそれだ』


「………?」


 それが今の俺にとっての一番だというのであればどうして力を貸してもらえないんだ?


『だが、それは君が心の底から望んだ事なのかい?』


「それはどういう………?」


『君は魔王を倒す為に冒険者を志し、勇者の力を手に入れ、ここまで来たのかい?』


「それは………!」


『そう、違うはずだ。君が勇者の力を手に入れたのはアオイを勇者の手から守るためだったし、魔王を倒すというのも、自分のせいで勇者が死んでしまい、自分が魔王を倒さないと他に倒せる人がいないから倒そうとしているのであって、君自身、他に魔王を倒せる人がいるなら魔王を倒そうだなんて考えることもなかったはずだ。』


 魔導書の言葉に反論できない………。


『そんな状態で君に僕の力を与え、魔王を倒したとして………断言しよう。自分の芯を見失っている君では、いずれ大きな絶望が襲った際に第二の魔王へと変貌することになるだろう。だから』


 魔導書ホワイトが手を前にかざす。

 それと同時に、視界が白く染まってゆく。


『君が自身を見つめ直し、その答えを見つけた時にまた会おう。』


 その魔導書ホワイトの言葉と同時に俺の意識は闇の中へと落ちるのだった。





「はっ!?」


 意識が闇の中へと落ちると同時に目を開ける。

 俺がいたのは、元の試練の洞窟の中だった。それと同時に、あの白い世界へ行くことができなくなっていることを感じ取ってしまった。

 恐らく、魔導書の言っていた『答え』が俺の中で見つからない限り、もう一度行くことはできないのだろう。


「おっ、戻ってきたか。どうだったよ?」


 俺が精神世界から戻ってきたのを察して声をかけてくれたボルケーノさんに頭を下げる。


「すいません。俺は魔導書ホワイトの魔武器開放はできませんでした………」


「………そうか。魔武器達の出してくる試練によってはいくら強くても達成できない事もある。まずは無事生きて帰ってこれた事を喜ぶと良い」


 ボルケーノさんの言葉に頷く。

 魔王を確実に倒せるであろう力が惜しくないといえば嘘になる。だが、手に入らない力に固執し続ける訳にはいかないのだ。力が手に入らないのであれば、手に入らないことを前提とした行動をしなくてはいけない。

 

「ボルケーノさん。お願いがあります」


「ん?」


「俺を鍛えてください」


 ボルケーノさんは俺の言葉に少し驚いたように目を見開いた後、口角を上げて了承してくれたのだった。





「くっ!」


 拳の形をした炎が無数に飛んでくる。

 俺はそれを魔法で上昇した身体能力と魔導書で叩き落とす………不意に生命感知が背後に生命の存在を知覚する。


「くらえぃ!」


 炎の推進力を使って俺の背後に高速移動したボルケーノさんが拳を振るう。

 前にはまだ破壊しきれていない炎、背後にはボルケーノさん。最低限自分に当たる分だけしか叩き落としていなかったから横にも上にも逃げ場は無い………ならば!


「はぁ!」


 俺はボルケーノさんの拳に対して上から魔導書で叩くと同時に地面を蹴り、その力を持ってボルケーノさんの上を飛び越える。


「それは悪手だぞ!」


「ごふっ」


 その直後にボルケーノさんの蹴りを叩き込まれた。体が空中にいた為、わかっていても回避できなかったのだ。一発叩き込まれただけで骨が数本やられてしまったのを感じる。


「ヒール!」


 魔力を少し強めに込めて、骨折を治す。と、同時に追撃に来ているボルケーノさんを魔導書で迎え撃つ。

 さっきみたいに距離を取られて遠距離の炎で攻撃されたら今の俺には対処ができない。そもそも、ボルケーノさんが手足と炎で攻撃できるのに対して、こちらは手足と魔導書でしか攻撃できない。そもそもとして手数で圧倒的に負けている。だからここは近接戦闘をメインで行い、ボルケーノさんの手数を少しでも減らすことに重点を置くべきだろう。


「おおおおぉ!」


 全力行使フルドライブを使用してボルケーノさんの方へと全力でかけるのだった。




「はぁ、はっ、はっ」


「まぁ、今日はこんなところだろう」


 そう言って、ボルケーノさんはスタスタと帰っていく。

 やはりS級冒険者というのは凄まじい。前回の模擬戦で一発叩き込めたことから、それなりに善戦できると踏んでいたのだが、今日は一発も入れることができなかった。

 というよりも、前回は拳と身体能力のみで戦っており、炎を飛ばしたりだとか、炎の噴射をこちらにぶつけてきたりだとか、そういう攻撃を一切使用していなかったからこそ渡り合えていたのだ。そういった攻撃が増えるだけで、駆け引きの幅が広がり、俺では対処できなくなってしまった。


「ノエル、大丈夫?」


「………アオイ? いつの間に」


 大の字で倒れている俺をアオイが覗き込む。


「ん。ちょっと前に試練が終わって出てきたらお父様とノエルが戦ってたからしばらく様子見してた」


「そっか。ところで試練はどうだったんだ?」


「ん。よくわからないけど、私に関しては試練はいらないとかで、普通に魔武器開放を使わせてくれるって。時間がかかったのは使い方を教えてもらっていたから」


 そう言ったアオイをよくよく観察すると、アオイの魔武器である鏡が2枚に増えている。

 魔武器開放をすると見た目が変わることもあるのか。


「能力に関しては、言葉での説明が難しいからまた今度見せる」


「楽しみにしてるよ」


 アオイが魔武器開放を習得できたことは喜ばしいのだが、俺が魔武器開放を習得できなかった事もあり、あんまり喜ぶことができなかった。


「ノエルは?」


 アオイがこちらを見て問いかける。


「俺は………ダメだったよ」


「………ん」


 俺の言葉を聞いたアオイが手を握ってくれる。俺はポツポツと魔武器開放の試練であったことを話して行った。


「ノエルの………望み?」


「うん。魔導書の言う通り俺は自分が何のために力を求めているのか、何のために戦っているのかっていうのが心の底で理解できていないんだ」


「成る程………。難題。私は最初ヤマト家の人間に認められるために強くなろうとした。でも、今はノエルと一緒にいる為に強くなりたいと思ってる」


「アオイ………」


「でも、多分ノエルの望みっていうのは私とは違うと思う。これに関しては勘でしか無いけど………」


 その後、テツが試練から戻ってくるまで二人で話したが、結局俺が力を求める理由を見つけることはできなかった。



久々に筆を執ったということもあり、以前と同じように書けるかはわかりませんが、頑張って書いていきたいと思いますので、もしよろしければ応援よろしくお願いします。

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