ボルケーノVSテツ
大変おまたせして申し訳ございません!
本日更新です!
「間に合え!」
全力行使を使用し、今まさに炎の拳を叩きつけられんとしているアオイを突き飛ばす。
「ぐっ!!」
流石にアオイを助けて俺も避け切る程の時間は無く、アオイに叩きつけられんとしていた拳が俺の脇腹に突き刺さる。
激痛が走ったが、覚悟していたこともあって、意識を失う事はなかった。
「ヒール」
受けたダメージもヒール一発で回復させる。回復させながらも周囲の状況の確認を行う。
アオイは………? 特に怪我は見当たらない。が、何故かこちらを呆然として見ている? ボルケーノさんは………
「っ!?」
思わずその場を飛び退く。
「今の一瞬で俺の拳からアオイを助けるスピード、俺の拳を受けても即座に戦闘に復帰できるレベルまで回復できる………か。面白いではないか!」
今度は俺がロックオンされてしまったのか、あの獲物を狙っているかのような笑みが俺に向けられている。
「………っと、その前に今はアオイの試験中だったな。相性の優位があるとは言え、S級である俺の火力を防ぎきる防壁を準備でき、格上との戦闘でも隙をついて攻撃することができる冷静さもある。魔力が途中で尽きてしまったのは減点対象ではあるが、十分ではあるだろう」
「ん」
アオイ自身も魔力が途中で尽きたことに関しては思うところがあったのか、大人しく頷く。
「特に最初の水蒸気による目隠しを利用した攻撃は良かったぞ。あれには私も不意を突かれた! まさかあの水蒸気が私の攻撃によって発生したものではなく、アオイ自身が発生させたものだとは想像もしなかったわ!」
ボルケーノさんの言葉でアオイが何をしたのかようやく理解できた。以前の俺との模擬戦みたいに水蒸気から魔法を発動させたのだ。
「更にその後も水蒸気に意識を向けさせておいて、今度は何も無い地面から攻撃を仕掛けるなど、多彩な攻め方が尚良かった! 私ではなく並の冒険者………それこそB級程度の者であれば理由もわからず串刺しになっていよう」
おぉ。思いの外高評価?
「だが、結局格上相手への決定打が足りないことに変わりは無い。魔武器開放でそこが補われるかはわからんが、やっておいて損は無いだろう」
「………ということは?」
「うむ。アオイになら魔武器開放の仕方を教えても問題なかろう。ちなみに魔武器持ちはアオイのみか?」
「あそこにいるノエルとテツも魔武器を持ってる。可能なら二人にも魔武器開放を教えてほしい」
「ふむ………。そうか………!」
ん? ボルケーノさんが再びこちらを見て獲物を見つけたような笑みを浮かべている?
「ではその二人も私と仕合おうではないか! 特にノエルと言ったか?」
「は、はい?」
「先程のアオイを救った動きは見事だった。楽しみにしているぞ?」
………完全にロックオンされたようだ。とりあえずただの試合なんだし、死ぬことはないよね?
アオイの方を向くとスッと視線をそらされた。えっ!? 試合って模擬戦のことだよね!? 間違っても相手が死ぬまでやるものじゃないよね!?
ん? でもそういえばさっきの試合でも俺がアオイを庇ってなかったら、無防備なアオイにボルケーノさんの攻撃が当たってたって考えると、なるほど、確かに流れ攻撃で死んでしまうこともあるのか………?
「ノエル………」
やめてアオイ! これから死ぬ人を見送るような目で俺を見ないで! っていうか合掌しない! さっきまで必死だったはずなのに余裕だね!?
「そうだな………。まずはテツと言ったな? 君から行こうか!」
「承知した」
一旦俺とアオイは端っこに避け、テツに居場所を譲る。
「アオイの仲間なのだ。期待しているぞ!」
「その期待に添えるよう全力を尽くします」
テツの言葉にボルケーノさんが笑みを浮かべる。
「そのいきや良し! では試合開始だ!」
宣言と同時にボルケーノさんが拳に炎を灯す。
動き出すと同時に、
「グラビティ!」
「ぬっ!?」
テツのグラビティにより体制を崩し、地面に叩きつけられる。
「炎を推進力とすることで高速移動を行う移動方法。視認は困難ではあるが、拳の炎を推進力としているのであれば体制は常に万全では無い。超重力の中でその推進力を使用でき………!?」
言葉の途中でテツがその場を飛び退く。その直後にテツがいた場所にボルケーノさんの拳が叩きつけられた。
「ふむ。素晴らしい重力だ。確かに何時ものような高速機動は難しいだろう。だが、まっすぐに突っ込むだけであれば炎の出力を上げることで問題なくできるな」
「それなりに自身があった戦法の為自身があったのだが、簡単に破られた………流石はS級というべきか。」
だが、テツの魔法も全く効果が無かった訳では無い。ボルケーノさんの強みはその高速かつ軌道の読みにくい動きで相手を翻弄しつつ、圧倒的火力を持つ拳を叩き込むことだ。
それがテツの魔法で発生している重力の為、真っ直ぐにしか高速移動ができなくなってしまった。これにより、ボルケーノさんの攻撃の方向を限定し、上手くさばくことができている。
盾でいなす方向を調整することでボルケーノさんの体制を上手く崩し、メイスで攻撃を行ってはいるが、ボルケーノさんに見事に当たらない。
テツの攻撃の直前に炎の推進力でその場を離れているのだ。
「なるほど、わかったぞ」
「ぬ!?」
ボルケーノさんが呟くと同時にアオイとの戦闘以上の速度でその姿が消える。
「テツ! 後ろだ」
「アース………」
「遅い」
魔法の発動も間に合わずにテツが吹き飛ばされる。
「くっ! 何が………!?」
体制を立て直したテツが絶句する。いや、この光景には俺も絶句してしまった。何故なら………、
「浮いている………だと!?」
拳だけではなく、足にも炎を纏い空中に浮いているボルケーノさんの姿があったからだ。
「重力により動きが悪くなるのは地面に足をつけているからだ。地面から足さえ離してしまえば多少体制を崩したところで動きは止まらん。後は炎の噴射で………」
ボルケーノさんの姿が消えて、テツの横に移動する。
「移動してやればいい」
「ぐっ!」
テツはなんとか反応して盾で防ぐが吹き飛ばされてしまう。
「どうした? これで終わりということはあるまい?」
ボルケーノさんの言葉に体制を立て直したテツが盾を構える事で応える。
「では行くぞ………!?」
再びボルケーノさんが急加速するが、なんだ………? 勢いをコントロールできてない?
「これは………!」
「そう、重力を解除した。重力の有無で推進力は変わる。ならば動き出した瞬間に重力を消してしまえば予想よりも大きな動きになってしまうのは自明の理。そして………!」
今度はテツがボルケーノさんに向かって急加速する。ボルケーノさんは再び炎の推進力で避けようとするが、
「チッ!」
今度は再度テツが重力を展開し、動きを抑制する。
その一瞬、一歩でテツのメイスがボルケーノさんを捉えた。
今度はボルケーノさんが吹き飛ぶ。
「重力による重さを加えた一撃だ。それなりのダメージは入ったはず………!?」
「なるほど、攻撃力もそこそこあり、魔法の応用力も高い。だが」
再びボルケーノさんの姿が消える。
「グラビ………ぐっ!」
「テツ!?」
炎の推進力による超スピードで移動したボルケーノさんの拳に吹き飛ばされる。しかも今度は盾で守れていない!! もろに入ってる!!
「まだまだ魔法を上手く使いこなせていない。発動までのラグがあるな? そのラグがなくなれば更に良い戦士となるだろう」
「ぬぅ………まだ………!」
纏っている服が焼け焦げているし、一部火傷もしている!! これ以上は流石に………!
「テツ! これ以上は!!」
「止めるなノエル! 私はこのパーティーの茶魔法師だ! 皆の盾だ! この程度で諦める訳にはいかん!」
「っ………!?」
そう言って立ち上がるテツ。
それを見て嬉しそうに構えるボルケーノさん。
その二人の上から水が降り注ぐ。
「「っ!?」」
突然の横槍に二人ともが驚いた顔をする。
そして水をぶちまけた張本人はというと
「テツ。これは模擬戦。命をかけてまでやる必要は無い。お父様もテツの実力はわかったはず。これ以上は不要。違う?」
「「………」」
アオイの言葉に二人とも黙り込む。
「ノエル。テツの治療を」
「あっ、うん」
アオイの言葉に俺はテツの治療を行いに走るのだった。
自分の中でテツのキャラが上手く定まっていないのか、テツのキャラがぶれているような………?
あまりテツのキャラが際立つタイマンとか書いてなかったからそのツケでしょうか………?
なんとか改善しないとですね………。
っていうかボルケーノさん一応S級でもタイマン最強格の設定なのにテツとアオイ相手に苦戦してるのどうなんよ………。とは個人的に思うのですが、主人公達もかなり強くなってきてるので鎧袖一触にされるのもなぁって言う作者の思いのせいで目茶苦茶弱く見えてます。
一応勝ってはいるし、一応アオイからの連戦なのに疲れを見せていないという描写なので問題ないとは信じたいのですが、次のノエル戦どうするか悩みですね………。