王都到着
2日間更新が滞って申し訳無いです。
仕事が忙しすぎてぶっ倒れておりました。
「そんなに長い間離れていたわけでも無いのに、凄く久しぶりに感じるよ………」
「ん」
王都の門を潜り、辺りを見回す。
当たり前と言っては当たり前なのだが、特に変わったところは見当たらない。強いていうのであればS級冒険者である深夜の狼はやはり知名度が高いのか注目を集めているし、そんな彼らと一緒にいる俺達も注目を集めているようだ。
「さてと、可能であればこのままヤマト家へと向かいたいところではあるが………。アオイ君、問題はないかな?」
「………可能であればミズキ姉さんに繋ぎをお願いしたほうがいいと思います。私は家出当然で家を出てから一度もお父様にお会いしていないので」
「ふむ。ミズキさんは普段どちらに?」
ミズキさんはアオイのお姉ちゃんで治癒師ギルドの所属だ。だから治癒師ギルドへ行けば会えるはずなのだが………。
「ヤッホー! アオイちゃん! 久し振りー!」
噂をすれば影とばかりに呼ばれた本人がアオイへと抱きつく。
「ミズキ姉さん………?」
「うんうん。最近会いに来てくれないからお姉ちゃん寂しかったんだよ!」
「話を聞いている感じだと、彼女がミズキ殿なのか?」
「ええ。彼女がアオイのお姉さん。ミズキ•ヤマトさんです」
ミズキさんがアオイに頬ずりしながらどれだけ会いたかったのかをマシンガンのように語っている隣でウェルさんが俺に聞いてくる。
「な、なんていうかこれは………」
「想像していた人物像とは少し違う人物が出てきましたね………」
流石のイグニスさんとレンさんも少し引いている。
しばらくしてある程度満足したのか、ようやくアオイを開放したミズキさんがこちらへと向き直る。
「久し振りだね。ノエル君! それと………え!? 深夜の狼!?」
今更その存在に気づいたのか、ミズキさんが目を見開く。
「初めまして、ミズキ•ヤマト殿。お察しの通り深夜の狼のウェルと申します」
「ヤ、ヤマト家の長女ミズキ•ヤマトと申します………。お会いできて光栄です!」
いつもホワホワしていて自分の世界を持っているようなミズキさんがあんなに畏まっているのを見るのは初めてだから少し驚いた。それはアオイもそうだったのか、さっきまで死んだような目をしていたアオイがグリンという音が聞こえそうな速度でミズキさんの方を見る。
そんな俺達の視線にも気づかず、ミズキさんはウェルさんと話し続けている。ウェルさんは大人の余裕なのか、ミズキさんのマシンガントークをサラリと捌いている。
「あ、そう言えばさっき私に用事があるみたいな話をしていたみたいだけど、どうしたの?」
あ、ミズキさんの意識がこちらに向いた瞬間、ホッとしたような顔になった。やっぱりウェルさんでもあのテンションは少ししんどかったのか。
「ん、ちょっとお父様に聞きたいことがあって、その繋ぎをミズキ姉さんに頼みたかった」
アオイの言葉にミズキさんの顔が一転する。
「………アオイちゃん。その言葉の意味をわかって言ってるんだよね?」
「ん」
ミズキさんの言葉に頷いたアオイだったが、何か問題でもあるのだろうか?
「わかった。そのつもりなら一度アオイちゃんの今の力を見せてもらうわ。私が無理だって思ったらこの話は無し。いいね?」
ミズキさんの言葉に再度頷くアオイ。
なんで父親に話を聞くだけで力試しなんて話が出てくるんだ?
「お父様は強い者を好む人。それが故に力が無い者の話を聞くことはない。お父様に話をしようと思ったらまずは最低限力を認められないといけない。私がミズキ姉さんに繋ぎを頼もうとしたのもそれが理由。私は今まで力を示したことがなかったからミズキ姉さんの口添えが無ければ恐らく話すら聞いてもらえない」
「なっ………!」
絶句した俺を安心させるようにアオイは頷く。
「大丈夫。今の私ならお父様に勝てないまでも力を示すことはできるはず。幸いにもお父様は赤魔法師。相性はいい」
「とりあえず冒険者ギルドの貸し訓練室に行こっか。治癒師ギルドの訓練室だと狭いから」
そう言って歩き出すミズキさんの後ろについて行く。
「それじゃあ準備はいい?」
「ん」
冒険者ギルドの訓練所の真ん中で向かい合うミズキさんとアオイ。
突如としてミズキさんの周りに無数の動物が出現する。ミズキさんの青魔法だ。
「これがお父様から認められた私の魔法、百水獣。これからアオイちゃんに向かって百の獣が襲い掛かる事になる。この魔法に対して対応できるなら最低限お父様から認められるくらいの力はあると考えるわ」
ミズキさんの言葉が終わると同時に水でできた動物たちがアオイに向かって殺到する。
「へぇ。虎にライオンに豹に鷲………。それに、全部形だけじゃなくて動きまでその形通りにしてる。凄まじい魔力コントロールね」
S級の青魔法師であるシエラさんがそこまで言うレベルの魔法って事か!
「ん―――魔法展開。氷結の領域改め氷結の世界」
アオイの魔法展開と同時にアオイへと殺到していた動物たちが凍りつき、動きを止める。そして、砕け散り、氷の粒へと姿を変えた。
「な、なんだ!? この魔法は!」
思わず叫んでしまった。
俺は少なくともアオイのこんな魔法は知らない。俺の知っている氷結の領域ではあそこまで急激な変化は起きなかったはずだ。少なくとも砕け散るなんてことは無かった。
「ん。初めて試したけど想像以上」
「くっ! まだだよ!」
砕け散った自分の魔法に一瞬放心していたミズキさんだったが、すぐに我に返り、再びアオイに向けて水の動物を放つ。
「無駄」
今度は動物が形になると同時に凍りついた。
「領域内の形あるものを全て凍りつかせる。これが私の新しい魔法。氷結の世界」
「そんな魔法………維持するのにどれだけの魔力が………!」
周りに無数の氷柱が切っ先を自分に向けて浮いているのを確認してミズキさんはため息を一つつくと両手を上げる。
「はぁ、降参降参! まさか手も足も出ないだなんて思わなかった。これなら父さんも認めてくれるはずよ。っていうかアオイちゃん強くなりすぎじゃない!?」
自分の周りに浮いている氷柱が全て消えた事を確認したミズキさんがアオイに声をかける。
「ん。たしかに強くはなったけど、ミズキ姉さんが手も足も出なかったのは魔法の相性もある。使ってみてわかったけど意外とこの魔法も穴が多い」
そうなんだろうか? 見ている俺からはすごい魔法に見えたんだけど…………?
「氷結の領域に比べて維持する魔法力は低くなってるから魔力消費はかなり抑えられているんだけど、その分攻撃力と防御力は氷結の領域より劣ってる。後、緑魔法師相手には致命的に弱いし、茶魔法師相手にもそこまで強くは無い」
「どうして緑魔法師と茶魔法師?」
「ん、緑魔法師に関してはそもそも空気の流れなんてものは目に見えないし、どれだけ熱を奪っても固体にはできない、固体にはできない以上破壊することもできない。茶魔法師はそもそもまっすぐに攻撃してこないから、攻撃への対応が難しい」
「?」
氷結の世界は領域内の全てを凍りつかせる魔法って言ってなかったっけ? 固体にするとか破壊するってそもそも何なんだろ?
俺の理解していない顔を見たのか、アオイが補足説明を入れてくれる。
「氷結の領域と氷結の世界の差はイメージの差。氷結の領域が凍らせるということをイメージして発動している魔法に対して氷結の世界は熱を奪い続ける事をイメージしている。その分氷結の領域に比べて相手が凍るまでの時間は長くなったけど、魔力消費は格段に下がった」
なるほど………?
「氷結の世界に関しては完全に凍りついた物体に対して衝撃を与えて破壊するっていう魔法もくっついてるけど、純粋な魔力消費という点では氷結の世界の方がかなり少ない」
「つまり、ミズキさんの動物を砕いたのは………?」
「ん、魔力の衝撃。魔力をただ形にしてぶつけたもの」
なるほど、ようやく理解が追いついてきた。
「で、さっきの話に戻るけど、氷結の領域では私自身をとてつもなく硬い氷で守っていた事もあって緑魔法師や茶魔法師相手でも有利に立ち回れていたけど、今回の氷結の世界ではそういった守りがない分緑魔法師や茶魔法師相手には戦いにくくなってる」
確かに、茶魔法師の石礫の魔法とか一々全部叩き落としてられな………あれ?
「それならもしかしてミズキさんがウォーターボールとか、ウォーターランスみたいな数で押し切るタイプの戦い方をしてたら………?」
俺の言葉にアオイが頷く。
「ん、魔法の相性っていうのはそういうこと。無数の動物の動きを模倣した魔法は確かに脅威ではあるけど、動きさえ止めれるなら後は大きな的でしか無い。破壊するのは容易だったし、そもそも動きを模倣させすぎて固めてしまえば動きが止まるというのはこの魔法からしたらやりやすくて仕方がなかった。もし動きを止めてもそのままの形で突っ込んでくるとかならかなり厳しかったかもしれない」
「プッ」
凍りついた虎や鷲、猿なんかが固まった状態で飛び回っているのを想像して少し笑えてしまった。
本日分で現在かけているストックが全てなくなってしまいました。
今後は、
きりの良いところまでチビチビ書き続ける→投稿の流れで週3〜4回更新できたらいいなと考えております。
(書く時間等によってもしかしたら更新頻度は下がるかもですが、その場合は告知します)
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