ノエルvsサヴァ
本日このお話を更新する前にもう一話更新しております。
よろしければご確認ください。
アオイとエリーゼの試合が終わった後、アオイにヒールをかける。
「よろしければエリーゼさんにもヒールをかけましょうか? こう見えても白魔法師なので回復には自信があります」
本来ならば次の模擬戦に併せて手の内は明かさないほうがいいのかもしれないが、これは敵として戦うのではなく、信用してもらうために戦うのだ。別に絶対に勝てないといけないと言うわけでもない。
「……ふむ。それは願ってもないことだが、お主大丈夫か?」
「ええ。白魔法師は魔力が多いので魔力量には問題ありませんよ」
そう言いながらエリーゼさんにヒールをかける。
とは言ってもそこまでダメージを受けているわけでは無かったので、傷はすぐに完治したし魔力の消耗もそう多くはない。
「……いや、そういう意味で言ったのでは無いのだ。今から模擬戦となるわけだが、白魔法師であるお主が戦うというのは問題ないのか?」
「あぁ……」
三の村の村長の言いたいことがようやく理解できた。白魔法師である俺が戦えるのかを心配してくれているのだ。
最近俺の事を戦えない白魔法師扱いする人なんていなかったから、なんだか懐かしい気がする。
「大丈夫です。それで、俺の相手はどなたがされますか?」
「ふむ……それでは…「俺にやらせろ!」…む?」
三の村の村長さんの言葉を遮り、一人の青年が前に進み出る。見たところ熊の獣人だろうか?
「お主は確か…」
「ニの村のサヴァだ。攻撃魔法を使えねぇ分際で俺ら獣人と戦えるなんて言われちゃ黙ってらんねぇ。コイツは俺が叩き潰してやる」
「まぁ、良いわ。しかし、殺すのは禁止じゃがわかっておるだろうな?」
「おうよ!」
どうやら、俺がサヴァと戦うのは確定なようだ。それにしても、まさか怒り出すとは……もしかして白魔法師って公表するの間違っていたのかな? いや、でも後々バレるって事考えると公開していてもよかった……のか?
まぁ、考えていても仕方ない。
「では、試合開始じゃ」
「おぉおおらぁあ!」
試合開始と同時にサヴァが突っ込んでくる。それに対して俺は慌てず、二重身体強化を行いサヴァにカウンターとして魔導書をぶん投げる。
「がっ!?」
「は?」
見事にヒットしたが、三の村の村長から変な声が漏れる。
しかし、それを気にしている場合ではない。魔導書が当たった事で突進が止まったサヴァとの距離を一気に詰め、魔導書で顎を撃ち抜く。そのまま体を回転させ、鳩尾に肘打ちを決める。
「ぐふっ……テメェ! 調子乗ってんじゃねぇぞぉ! 魔獣化ぁ!」
サヴァが魔獣化を行い四つん這いになる。
「今度はさっきの三倍はぇえぞ! 追いつけるか!」
両手と両足で地面を蹴り、一瞬で後ろを取られた。
「おせぇ!」
「全力行使」
全力行使で更に身体能力を上げることで余裕を持って攻撃を回避する。
「隙だらけだよ!」
大ぶりの攻撃を外したことにより、流れた体に蹴りを叩き込む。
そのまま追撃しようとして感じた熱に一旦後ろに下がる。
「はぁ、はぁっ、はぁ。やるじゃねぇかテメェ。俺にこの火熊を使わせるたぁなぁ。だが、こうなりゃテメーはもう終わりだ。魔法が使えねぇテメェでは火に包まれた俺に攻撃することは……ふべっ!?」
火を体に纏う事で俺の攻撃を防いだつもりになったんだろうけど、俺の魔導書は不壊属性を持っているから火で焼くことはできないのだ。あまりに話が長すぎたから思わず投げてしまった。
「てめぇ! さっきから気になってたけど本を投げねんじゃねぇよ! しかもなんでこの本俺の炎で焼けねぇんだよ!? っていうかいつの間に回収しやがった!?」
「え? だって魔導書だし?」
「魔導書は断じて投げるものじゃねぇだろ!?」
「えっ!?」
「なんでそこで不思議そうな顔をしてんだよ!?」
ふむ。取り敢えず理解ができなかったのでもう一回投擲。
「チッ! そんな馬鹿正直にあたってやるかよ」
そんなことはわかっている。だからこれはただの牽制だ。回避された魔導書を回収して殴りつける。
近づいた瞬間に熱が体を焼くが次の瞬間には体に纏った癒やしの力が体を癒やす。
「ぐぉっ!?」
殴り飛ばしたサヴァに追撃をかけようとしてサヴァと俺の間に三の村の村長が立っていることに気づく。
「これまでじゃ。お主の強さと非常識さは十分にわかった。これ以上やっても変わらんじゃろ」
三の村の村長の言葉に俺は全力行使を解除する。
「お主もいいな?」
「ちっ……魔獣化まで使っておいてあそこまで一方的にやられちゃあな……。認めてやるよ」
サヴァもこれ以上やるとは言い出さず素直に魔獣化を解いた。
「さて、皆の衆。こうして模擬戦が終わったが皆から見て彼らはどうだった? ワシとしては彼らは十分な力を示したと考えるが」
「一の村としては問題ない。人間を信じるかどうかはともかくとして、ハウエルの攻撃を耐え続けたそのメンタルは認めるに値する」
「ニの村も認めよう。荒くれ者ではあるが、サヴァは十分な実力を持っていた。そのサヴァを圧倒する力の持ち主なら戦力として申し分ない」
「我々四の村は仲間であるニナを信じている。そのニナが連れてきた仲間ならば我々の仲間だ」
「我々五の村としても問題はありませんな」
こうして俺達は獣人達に認められた。
次回軽く時間を飛ばします。
テンポよく書いていきますよー!